独居老人・老老夫婦増加✖貧困層増加=退院調整困難・在宅生活困難 

独居老人・老老夫婦は年々、着実に増加している(図1)。そのため、急性期病院・回復期リハビリテーション病院・老人保健施設から、自宅へ戻ることが困難なケースは年々増加している。

毎月15万円~20万円程度の費用を負担できる人は、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームに退院することができる。しかし、費用を負担できない人はやむなく自宅に帰らざるえない状況になっている。増加する独居老人と老老夫婦の世帯の中には、一定率で低所得者層が存在する。また、今後、高齢者の貧困層は激増すると予想されている。

現在、急性期病院・回復期リハビリテーション病院・老人保健施設の在宅復帰率の計算対象として、自宅だけではなく有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅が含まれている。しかし、自宅と有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅では、生活の状況は全く違う。

有料老人ホームなどの居住系住宅は、施設内にスタッフが常駐していることや、訪問介護ステーションなどが併設している。そのため、介護や生活支援のサービスを適宜受けることが可能である。しかし、自宅ではそのような環境がないために、生活を継続していくためには、家族や親類といった関係者の協力が不可欠となる。

本来、ご自宅で生活することはQOLの観点や本人の希望を考えると望ましい一面があるが、家族や親類の協力がなければ、ご自宅での生活が悲惨な状況となりかねない。

つまり、ご自宅で生活をすることになった場合、ADL動作や認知症などの心身機能が改善していたとしても、家族や親戚の協力が得られない場合、ご自宅への復帰や質の高い生活を送ることが困難となる可能性が高い。

現在、7:1急性病院、回復期リハビリテーション病棟、老人保健施設は、施設基準や加算取得のために在宅復帰の取り組みが求められている。医療モデルで考えた場合、在宅復帰のアプローチには病状の改善、ADL動作の改善、認知症の緩和などを目的とした治療や指導などが行われる。しかし、今後、独居老人、老老夫婦や貧困層の増加すると、心身機機能が改善しても、ご自宅に復帰できない事例が増加してく。

在宅復帰率は病院や老健にとって、施設基準を維持や地域貢献のために、死守すべき指数である。したがって、心身機能の改善への取り組みだけでなく、家族や親戚の協力体制やケアが継続的に提供できる連携体制の構築能力が、今後より必要となっていく。

急性期病院や老人保健施設から、自宅復帰が困難となり、在院、在所期間が延長している症例が増えていることや、ご自宅に帰ったものの、ケアが不十分となり、すぐに肺炎、転倒などを生じ、再入院になるケースが増えている。

在宅復帰の中でも、「自宅復帰は特別な意味を持つこと」、そして、「心身機能のリハビリテーションや医療的対応のみではご自宅に復帰するには不十分」であること認識し、患者、利用者を取り巻く環境をマネジメントする能力が必要であることを強く自覚した経営や運営が求められる。

koureiizinkou図1 厚生労働省「今後の高齢者人口の見通しについて」