リハビリテーション部門のトップに職人を配置してはいけない

リハビリテーション部門は、看護部門と比較して圧倒的にマネジメントが作用していない。

看護部門は、看護部長、看護師長を頂点としたヒエラルキーが構築されており、看護サービスだけでなく、ベッドコントロールや施設基準の維持などの経営上の責任を担っている。

それに比べリハビリテーション部門のマネジメントは発展途上である。

リハビリテーション部門は看護部門と比較して、歴史が浅い。

リハビリテーション部門が、本格的に組織として形成されたのは2000年以降である。

それは、回復期リハビリテーション病棟の影響が多きかった。

2000年以降に設立された回復期リハビリテーション病棟を持つ病院は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の数が多いため、組織的な管理が必要となった。

現在では、セラピストを多く抱える医療法人や介護事業所も珍しくなくなった。

一方、看護部門は、病床数が激増した1960年代から看護部門としての組織化を図っており、日本看護協会においても看護師の管理者教育には従来から力を入れてきた。

今日の看護部長、看護師長の組織マネジメントに対する意識づけは長い歴史の中で培われてきたものである。

しかし、リハビリテーション部門の組織化が不十分であるのは、歴史だけの問題ではない。

「リハビリテーションの技術職が組織のトップをしている」という問題が全国的に蔓延っている。

なぜ、これが問題かというと、職人にはマネジメントが出来ないからだ。

職人には以下の特徴がある。

自分の技術に興味があり、社会が求める技術には興味がない
自分の技術変化には興味があるが、社会変化には興味がない
自分を認める者は自分の師匠であり、経営における利益をアウトカムとしていない

そもそもセラピストという職人集団を組織化をしようとすること自体に大きな無理があると言える。

では、どうするべきか?

それは、セラピストの視点を持つ商人、つまりビジネスマンを育成、採用することである。

商人は、社会が求める技術、社会の変化、組織の利益に興味がある。

根本的に職人とはキャラクターが違う。

リハビリテーション部門のトップが職人である限り、組織の改革は極めて難しい。

診療報酬改定・介護報酬改定・地域包括ケアシステム・地域医療構想・総合事業・テクノロジーなどに、本気で興味を示さない職人のトップは、残念ながら組織にとって有害である。