老人保健施設の在宅復帰機能は標準装備が求められる

2012年度介護報酬改定にて在宅復帰強化型老人保健施設の評価が行われたが、当時、老人保健施設は第二の特別養護老人ホームと言われており、一度入所すると長期間入所することが一般的であった。

そのため、老人保健施設におけるリハビリテーションサービスが重要視されることはなく、老人保健施設に勤める理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も少なかった。

しかし、政府は地域包括ケアシステムの構築の鍵を握る在宅復帰を進めるため、あらゆる医療機関に在宅復帰の要件を設定し、老人保健施設もその対象となった。

2012年当時、在宅復帰を積極的に行っている老人保健施設は皆無であったが、平成28年10月には、在宅復帰に関する加算を算定している施設は老人保健施設全体の42.9%になっている(図1)。

図1 在宅復帰に関する加算を算定している老人保健施設の割合

老人保健施設の在宅復帰への取り組みは、まさにイノベーションである。

在宅復帰を進めるためには、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、相談員などの職員の増加(図2)だけでなく、カンファレンス、入所者のマーケティング、後方連携の強化、介護職のケアの質の向上などに取り組まなければならない。

図2 リハビリテーション専門職の数と在宅復帰率の関係

 筆者は老人保健施設の改革が難しい理由は、「多くの医療機関にとって、長年老人保健施設はおいしいセカンドビジネスであったため、経営者の経営努力が乏しくなる」ことが一因と考えている。

今まではセカンドビジネス感覚でもそれなりの報酬が得られたが、もはや老人保健施設の経営は一筋縄ではいかない状況である。

在宅復帰は当然のこと、今後は看取り、認知症、中重度者への対応も求められていく。

40%を超える老人保健施設が在宅復帰型へ移行していることを考えると、残り60%の老人保健施設の未来は決して明るくない。

2018年度介護報酬改定はすぐそこである。

あなたの勤める老人保健施設は今後どうしますか?