理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のアラサー・アラフォークライシス

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の過剰供給が懸念されて久しい。

2025年以降は三職種合わせて30万人を軽く超える。

社会保障費の圧縮や医療・介護の効率化などの影響により、たとえ、セラピストの職場や職域は増えたとしても、賃金水準は上がらない。

今の30代、40代のセラピストはセラピストが不足している時代に養成校に入り、セラピストの資格を取得した世代である。

したがって、彼らの多くが比較的、好条件で医療機関や介護事業所に就職することができている。

それから10年ばかり経って、状況は激変しつつある。

毎年、18,000人誕生するセラピスト

診療報酬・介護報酬改定による成果主義の導入と基本報酬の低減化

このような状況においては、医療機関や介護事業所は次のように考える。

「これだけセラピストがいるのだから、もう賃金は上げなくていいよね、初任給も下げていこう」

「給料を高く払ってもいいのは、診療報酬や介護報酬の成果主義を満たせる優秀なセラピストだけだ」

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このような医療機関や介護事業所の考えの影響を受けるのは、今の30代、40代のセラピストである。

現在、50代や60代のセラピストは若いころにかなり良い待遇を受けおり、かつ、比較的、高い退職金もあるし、もうすぐすれば引退である。

しかし、30代、40代は実力がある、なしに関わらず好待遇になっており、あと20年以上働かなければならない。

したがって、アラサー・アラフォーセラピストは特筆すべき「価値」を組織や社会に提供できないと、医療機関や介護事業所のお荷物になる可能性が高い。

しかも、今のロボットテクノロジー・SNS・起業・AI・などの世の中の流れに関しては、20代セラピストのほうが圧倒的に強い。

アラサー・アラフォーセラピストは相当、危険水域に来ている。

 

99%の理学療法士・作業療法士等の医療従事者は自分で決断して、その職場に勤務し、そして、しばらく経つと職場の不満を言う

多くの理学療法士・作業療法士・看護師・介護士は、自らの意思で就職希望先に問い合わせ、自らの足で面接に行き、自らが書いた履歴書を提出して、自らの意思で席に着席し、自らの意思で面接を受ける。

そして、内定通知が来たら自らの言葉で、内定の受託を就職希望先に伝える。

就職するまでの過程は、すべて自らの意志である。

しかし、入職後、数か月から1年で突如、「不満」を言い出す。

この施設は〇〇だからダメなんです
こんなやり方は私は理解できない
これは私の仕事ではない
あの院長は〇〇なんでどうしようもない
事務長が〇〇をしろといってきたが,そんなこと嫌だ
などなど・・・・・

「不満」は言っても構わないが、「不満」を言っても現状は何も変わらない。

職場は永遠に現状維持される。

人間は、常に「不快な状況」を脱して「快な状況」を作る動物である。

しかし、不満ばかりを言っている人にはそんな原理原則も作用しない。

「不満」を言い散らしている人で、自ら行動する人はほぼ皆無である。

自ら決断して入社したのだから、自ら決断して退職するとか、現状を変えるとか、自分の意見を貫くとかすればいいのに、その決断には絶対に至らない。

つまり、結局のところ、「不満を言っている自分が大好き」だし、「不満を満足に変える意思」もない。

こういうことを言うと、「就職した後に色々とよくないことが分かった」「面接時に聞いた事と違うことが分かった」という声が聞こえてくる。

しかし、「面接時に聞いたことと違うことが職場内で起これば、それを理由に退職すればいい」と言いたい。

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面接時と違ったことが起こって、それを許さない自分がいるなら辞めれば良い。

結局、不満が生じる事態を許せる程度の意思やアイデンティティしか持っていないのだ。

雇い主は、「面接時に様々なことの詳細を聞かれなかったから、答えなかっただけだし、給料をもらっているのだから、文句を言わずに働いてほしい」と考えているだろう。

自分で就職希望をして、自分で入社の決断をしたのだから、「不満」があれば退職するか、その不満を消し去る行動を取ればよい。

入社の決断は自分でしておいて
不満の解決は自分でしない。

そんな未熟な医療・介護従事者は社会資源としても活躍できない。

重症患者・利用者の評価ができないセラピストが干される時代へ

近年の医療保険・介護保険に関する改定のトレンドの一つは、「重症対応」である。

リハビリテーション分野に関しても「重症対応」が進んでおり、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は「重症者へのリハビリテーション技術」を獲得しなければならない時代になってきた。

急性期病棟や回復期リハビリテーション病棟の重症患者の受け入れ
療養型病院の医療区分の厳格化
訪問看護ステーションの特定疾患やターミナル患者への評価
などは、そこに勤めるセラピストに「重症対応」という課題を突き付けている。

2006年の疾患別リハビリテーション料、算定日数上限
2008年の回復期リハビリテーション病棟へのP4P
は、「著しい回復が見込める患者に対する効果判定」を行うものであった。

しかし、2012年以降の診療報酬・介護報酬改定は「重症対応」を推進したため、リハビリテーション関係職種は回復期過程の患者・利用者だけでなく、重症な患者・利用者への対応が必要となってきている。

回復過程の患者の評価についてはすでに様々な手法が開発されている。

手段的ADLの質問票
1) Lawtonの尺度
電話をする能力、買い物、食事の準備、家事、洗濯、移動の形式、服薬管理、金銭管理の項目からなる。
2) 老研式活動能力指標
手段的ADL(交通機関を使っての外出、買い物、食事の準備、請求書の支払いなど)、知的能動性(書類を書く、新聞を読む、本・雑誌を読むなど)、社会的役割(友人への訪問、家族や友人からの相談、病人のお見舞いなど)の13項目からなる。
3) DASC-21
認知症のスクリーニングのための21の質問の中に、手段的ADLの買い物、交通機関を使っての外出、金銭管理、電話、食事の準備、金銭管理が含まれている。

基本的ADLの質問票
1) Barthel Index
整容、食事、排便、排尿、トイレの使用、起居移乗、移動、更衣、階段、入浴の10項目からなる。20点満点で採点する方法と100点満点で採点する方法とがある

2) Katz Index
入浴、更衣、トイレの使用、移動、排尿・排便、食事の6つの領域 のADLに関して自立・介助の関係より、AからGまでの7段階 の自立指標という総合判定を行う。

3) DASC-21
認知症のスクリーニングのための21の質問の中に、基本的ADLの入浴、更衣、排泄、整容、食事、移動が含まれている。

4)FIM
機能的自立度評価表(Functional Independence Measure)の略で、1983年にGrangerらによって開発されたADL評価法である。 特に介護負担度の評価が可能であり、ADL評価法の中でも、最も信頼性と妥当性があると言われ、リハビリの分野などで幅広く活用されている。

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しかし、重症患者・利用者のリハビリテーションに特化したアウトカムは普及していない。

重症患者・利用者の評価は主に医師や看護師のアセスメントで用いられる項目が多い。

血液データ
栄養状態
肝機能
水分摂取量
嚥下状態
皮膚状態
排泄パターン
呼吸機能
循環機能
意識レベル
など・・・・数多くの項目が重症患者・利用者の評価に使われている。

しかし、これらの項目を用いた評価は、もっとも理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が苦手とするところである。

養成校・実習においてこれらの評価を学ぶ機会は非常に少ない。

訪問看護ステーション、療養型病院、サービス付き高齢者向け住宅などの重症利用者に対応している事業所に勤める理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、上記した項目を評価指標としてリハビリテーションを展開できる能力が必要である。

IADLやADLだけでなく、生命の質やターミナル期の評価がこれからの時代は必須になってくる。

 

 

 

 

 

職場づくりに活きる理学療法・作業療法・言語聴覚療法の価値は高い

筆者のクライアント先の医療機関や介護事業所が抱える様々な問題の中に、医療や介護現場における「質の低いケア」が挙げられる。

質の低いケアの中身を確認すると以下のようなものが挙げられる。

口腔ケアが不十分である

食事介助がいい加減である

移動介助技術が低く、腰痛を発生している職員が多い

褥瘡を持つ利用者への姿勢に難渋している

拘縮が予防できない

トイレや入浴時に転倒が多い

認知症患者のBPSDが進んでいる

痰の多い利用者への対応ができてない

誤嚥性肺炎患者が多く退所が多い

車椅子の姿勢が悪い利用者が多い

福祉用具・自助具・装具の使い方がわからない

レクレーションがマンネリ化している

在宅復帰に向けた在宅の環境調整が難しい

これらの内容は全国津々浦々の医療機関・介護事業所にあるのではないだろうか?

質の低いケアがもたらす影響は大きい。

従業員の仕事への熱意が低下しケアのネグレクトや虐待につながることや、業務内容から人間関係の悪化や退職につながることもあるだろう。

技術の高さは個別のケアの質を高めるだけでなく、「職場の空気や文化」にも影響を与えるものである。

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ほとんどの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は目の前の患者や利用者のために働いている。

「よりよい職場を作る」ために働いている人はどれぐらいいるだろうか。

上記した様々な問題の解決に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は貢献できることができる。

多職種が横断的に働く地域包括ケア時代においては、職場づくりの理学療法、作業療法、言語聴覚療法が重宝される。

あなたの理学療法、作業療法、言語聴覚療法は「職場づくり」に役に立っているだろうか?

そこに、今後の働き方のヒントがある。

 

 

 

 

 

2018年度診療報酬・介護報酬ダブル改定で予想されることを全部書いてみた

急性期病棟
5:1病棟の創設
7:1病棟の看護必要度の厳格化
7:1病棟の平均在院日数短縮(17日~16日)
7:1自宅等復帰率80%以上
10:1自宅等復帰率60%以上
13:1・15:1病棟の入院基本料減額
DRG/PPS対象の拡大
認知症対応の標準化
退院支援加算の増額と要件強化(プロセス・ストラクチャー評価だけでなくアウトカム評価導入)
ADL維持向上等体制加算の点数増加とアウトカム要件の厳格化
7:1病棟からの直接自宅退院の評価
集中治療室におけるリハビリテーションの評価

回復期病棟
FIM利得率の厳格化
在院日数低下(脳卒中150日・運動器90日)
6単位標準化(9単位を行う場合は特別な条件が必要)
家屋評価・退院前ADL指導・地域連携等の評価料の増額
80歳以上・高ADL・低ADL患者の入院制限要件の強化
施設基準Ⅲの消滅
施設基準Ⅰの要件強化(訪問リハビリテーション事業や通所リハビリテーション事業の必置等)

地域包括ケア病棟
在宅患者からの入院患者の受け入れ評価
低ADL患者の受け入れ評価
在宅復帰率の要件強化(80%)
在宅復帰に向けたシーティング・ポジショニング・福祉機器調整や指導の評価

療養型病床
医療区分の厳格化
特殊疾患病棟・障害者病棟・療養病棟の統合
摂食嚥下障害・排泄障害・循環障害・栄養障害に対するリハビリテーションの評価
在宅復帰のさらなる評価
退院支援加算の増額と要件強化(プロセス・ストラクチャー評価だけでなくアウトカム評価導入)
介護療養型病床の転換先として新たな医療強化型介護施設の新設

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外来リハビリテーション
算定上限日数超え要介護被保険者の外来リハビリテーションの廃止
若年者や回復が望める患者のリハビリテーション算定日数の緩和
消炎鎮痛処置料とリハビリテーション料の要件の厳格化

通所介護
認知症対応・リハビリテーション対応・重症対応していない事業所の単位数低下
生活相談員の要件強化(外部連携の強化や地域資源の発見)
個別機能訓練加算Ⅱの要件強化
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置加算
通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの連携加算

通所リハビリテーション
短時間通所リハビリテーションの増額と要件強化(活動・参加・卒業)
認知症対応・重症対応の加算増額と要件強化
言語聴覚士対応の加算の設置
訪問リハビリテーションとの連携評価
リハビリテーション会議の要件強化(医師の出席要件)

訪問リハビリテーション事業所
活動・参加・卒業の要件強化
地域連携に関する連携加算
重症度対応に対する加算

訪問看護ステーション
PT・OT・STによる訪問看護サービスの回数制限もしくは期間制限(介護保険)
看取りに対する看護・リハビリテーションの評価
活動・参加に関する加算の新設
要支援者の訪問看護サービス料の減額

その他
(看護)小規模多機能型居宅介護と定期巡回・随時対合型訪問介護看護の要件緩和と単位の増加
要介護1と2の単位数の低下
介護老人保健施設の医療費包括化の見直し
特別養護老人ホームにおける訪問看護サービスの要件緩和