理学療法士過剰供給は、「競争を諦めたら、淘汰されるだけ」という状況を加速させる

このブログをはじめ、様々なメディアで理学療法士の過剰供給について述べられている。

近年は日本理学療法士協会や各都道府県理学療法士会の学術大会や印刷物においても、理学療法士の過剰供給が触れられており、過剰供給問題に対する対策などが議論されている。

日本理学療法士協会も将来の理学療法(士)の在り方について、様々な検討・提案を行っている。

現在行われている医療・介護分野(地域包括ケアシステムを含む)に加え
スポーツ・学校保健・高齢者に対する予防分野への対応
産業保健・児童福祉に対する理学療法の提供
終末期に対する理学療法
が新規参入分野として検討され、試験的な取り組みも開始されている。

確かに、これらの分野に理学療法が導入されていることは画期的であり、社会に貢献するものである。

ただし、現在、推進が検討されている分野の財源は社会保険料や税金を主なものとしている。

したがって、財源確保の観点から考えると,将来にわたり、理学療法士の雇用や人件費を高い水準で保証することは不可能である。

毎年、1万人以上で増えていく理学療法士。

2025年には、現在より9万人以上増えて、総計20万人を超えている。

2050年にはとんでもない数になっている。

どう考えても、全理学療法士の雇用や給料を保証することなんてできない。

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そもそも理学療法士だけが保証されている世の中を期待するほうが、社会常識で考えれば異常である。

資本主義国である日本では、ラーメン屋も、牛丼屋も、服屋も、家電量販店も、本屋も、歯科医院も、診療所もすべて、過剰供給である。

過剰供給だから、競争が起きる。

競争を諦めれば、潰れるだけである。

日本理学療法士協会の様々な提案は本当に素晴らしいものである。

理学療法を様々な分野に活かすことができれば、間違いなく社会に貢献することはできる。

しかし、多くの理学療法士は、理学療法士協会や国が生きる道を創ってくれることを待っている。

ほとんどの理学療法士は、自らの行動で未来を切り開く意思もないし、そんな教育も受けていない。

しかし、そのような待ちの姿勢では、理学療法士のマーケットは広がらない。

時には、理学療法士協会や国の提案より先行した事業モデルや取り組みを行う必要がある。

これからの理学療法士は、理学療法士協会や国に様々な提案を行うぐらいの気概が必要である。

理学療法士協会も、国も全理学療法士を救うことはできない。

まさに、競争を諦めれば、淘汰されるだけ。

そんな時代になっていることを理解できない理学療法士は淘汰されたらいい。

 

合議制という名のくだらない会議が医療機関・介護事業所を崩壊させる

現場の意見を吸い上げたい
現場から病院を変えてほしい
現場の声を経営に活かしたい
現場が経営感覚を持ってほしい
などの理由から、物事を決めるプロセスに「合議制」を取り入れる医療機関や介護事業所が多い。

合議制とは、「みんなで話し合って、運営の方針を決めよう」というものである。

しかし、私は断言する。

「合議制を取り入れている医療機関・介護事業所でろくなところはない」

合議制は一見、民主主義・平和主義的であり、なんとなく雰囲気が良い。

しかし
1.意思決定のスピードが遅い
2.責任の所在が曖昧
3.経営の論理を無視した結論が出やすい
という最悪な特徴を有している。

また、「経営責任者や管理職が自らの職責を丸投げする手段」として、「合議制」は都合が良い。

「自分自身が仕事をしたくないから、現場の職員に仕事を振りたい。本音を言うと、嫌われるから、合議制を導入して、みんなで決めてもらおう。」という魂胆である。

よく、「現場に経営感覚を持ってほしいから合議制としている」という経営者がいるが、はっきり言って現場が経営感覚など持てるわけがない。

経営感覚をもつ動機や志、そして経営責任としての処遇がない人たちに、どうやって経営感覚ももってもらうのだ!!

だいたい、「経営感覚を社員に持たせる」こと自体が、ブラック企業の所業である。

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社員が経営感覚を持たなくても、うまく運営できるようにカジ取りしていくのが、経営者や管理職の役割である。

最大の矛盾は、合議制であるからこそ、責任が分散して、誰も責任ある行動をとることができないということである。

病棟の稼働率が低下した
リハビリテーションの患者が減った
外来の新患が減った
ケアマネからの紹介が減った
人件費が増加している
残業代が増えている
離職者が増えている

こんな状況になった時にだけ、「合議制でみんなで対策を考えよう」という経営者や管理者はさらに最低である。

大体、こんな状況にならないようにするのが、経営者や管理者の仕事ではないか?

合議制に騙されてはならない!!

 

 

あかんもんは、あかん。というマネジメントが最後は勝つ。

限りなくブラックに近いマネジメント手法が、全国津々浦々には存在する。

筆者のもとには、全国から様々な質問が寄せられる。

医療保険で疾患別リハビリテーションの上限日数が超えたので、疾患の付け替えをしていますが、それはだめでしょうか?

通所リハビリテーションで利用者にマッサージを提供していますが、それではリハビリテーションにならないでしょうか?

服薬指導において、意思疎通が取れない患者に対して、元気ですか?と声かけだけで加算をとるのはだめでしょうか?

回復期リハビリテーション病棟の医師が患者の回診をほとんどしないのが常態化していますが、やっぱりまずいですよね?

1時間の訪問看護で毎回、半分以上は看護に関係のないおしゃべりをして、1時間の算定をしてますが、これってばれないですよね?

これらの質問は本当にあったものである。

全部、「あかんにきまってるやん!」(大阪弁)です。

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このような質問をしてくる人は、心のどこかに「自分たちはとんでもないことしている。だから、誰に駄目だと言ってほしい」という心理が働いている。

私から、「そのようなはすべていけないことだ」と諭すように話をすると、「自分たちのしていることが、だめだと感じている。しかし、経営幹部からのプレッシャーがあり、やってはいけないことを容認している。どうしたものか・・・」という気持ちを打ち明けてくる。

しかし、あえて言う。

経営幹部からのプレッシャーだろうが、なんだろうが、「あかんものは、あかん」である。

こういったモラルハザードを容認する組織は、遅かれ早かれ必ず崩壊する。

経営幹部と喧嘩しろと言っているのではない。

モラルのある事業所運営を行うことも、医療・介護の国家資格を持つ専門職の職責である。

政府や保険者は様々な手法を通じて、医療・介護事業所で行われているモラルハザードを把握している。

そのモラルハザードに加担している専門職に対しては、診療報酬改定や介護報酬改定を通じて手痛い打撃を与えてくる。

「あかんもんは、あかん!!ちゃんとした事業所運営をしよう!」という気持ちを強く持つことから、事業所改革は始まる。

事業所改革の強い気持ちを持つことができないことを、経営幹部からのプレシャーという言い訳をして、責任転嫁をしてはいけない。

管理職を今こそ、立ち上がれ。

急性期病院からの直接の自宅復帰が評価される時代に突入した

近年の入院医療に関する診療報酬改定では、在宅復帰を評価する流れが進んでいる。

在宅復帰というと、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟が注目されがちであるが、実は、急性期病棟と療養病棟の在宅復帰の評価が急速に進んでいる。

平成26年度のデータでは、7:1病棟の退院患者の76%が、どこの病棟も経由せずに直接、自宅に戻っている。

急性期と在宅の連携

医療費削減の観点から考えると、患者が急性期病院から病院や施設も経由せずに直接自宅に帰ることは、非常に望ましいことである。

回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、老人保健施設を経由すると、医療費や介護給付費が生じ、社会保障費の増大につながるからだ。

したがって、急性期病院から直接自宅に復帰することは、政府としては是非とも進めたいことである。

急性期病院から直接自宅に復帰する政策として、様々なものが導入されている。

回復期リハビリテーション病棟には、従来より入院できる疾患の条件、在宅復帰率、重症患者率などの要件が設定されている。

これらの要件に加え、2016年度診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟は「効果的なFIMの獲得」ができなければ、7単位以上のリハビリテーション料の請求ができなくなり、入院料に包括化されることになった。

また、効果判定に活用するFIMを用いた計算式から以下の者が毎月3割まで除外できると規定されている。

1. FIM運動項目が著しく高い(76点以上)・低い(20点以下)の者
2. FIM認知項目が低い(25未満)の者
3. 年齢が80歳以上の者

これらの1から3に該当する患者像は、「大きなADLの回復が難しい者」であると言える。

つまり、これらの患者の入院が増え、入院比率が3割以上となればFIMの計算式に入れなければならず、FIM改善率が低下する可能性が高い。

以上のことをまとめると、回復期リハビリテーション病棟には、入院できる疾患が縛られている上に、ADLの大きな回復が見込める患者であり、かつ、在宅復帰が期待される患者しか入院できない制度設計が進行していると言える。

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また、2016年度診療報酬改定では、急性期病院と療養病院に、退院支援加算が新設された。

退院支援加算の目的はずばり「在宅復帰困難者の在宅復帰支援を円滑に行うために、地域の介護事業者等との連携を図る」ことである。

この加算の対象者は、退院困難な要因を有する入院中の患者であって、在宅での療養を希望するものである。

一般病床と療養病床で算定ができる加算であるが、一般病床が600点、療養病棟が1,200点と非常に高い点数が設定されている。

加算の要件は厳しいものの、国が急性期病院と療養病院の自宅への直接復帰を推奨したい狙いが見え見えである。

20か所以上の連携する医療機関や介護事業所の職員と年に三回以上の定期的な面会を実施することが求められ、かつ、介護支援連携指導料の実績も求められていることから、早期への自宅への復帰を支援するための連携が標準化されつつあると言える。

これからは急性期病院と療養病院からの在宅復帰が大きな社会課題となってくる。

そのためには、地域におけるあらゆる社会資源を持つ組織や人材を有効に生かす必要がある。

セラピストを含め、医療従事者はこのようなトレンドを十分に知ったうえで働く必要があるだろう。

退院支援加算

入院医療に課せられた試練 インターナル・マーケティング

2016年度診療報酬改定の影響がじわじわと出てきている。

施設基準の維持や入院患者の確保が厳しい医療機関が現れてきており、厚労省の思惑通り、各医療機関の再編成や淘汰が起こっている。

特に、急性期病院と慢性期病院では経営的なダメージが大きくなっており、ダメージコントロールが益々重要となっている。

急性期病院のダメージコントロール項目
1)重症度、医療・看護必要度の患者割合25%以上
2)ICUの看護必要度厳格化への対応
3)総合入院体制加算の精神科要件への対応
4)ADL維持向上等体制加算の人員要件への対応
5)DPC/PDPSの診断群分類点数の変更への対応

慢性期病院のダメージコントロール項目
1)医療区分の厳格化(酸素療法・血糖検査・うつ症状の厳格化)
2)療養病棟入院基本料2に医療区分2.3が50%以上の要件追加

急性期病院・慢性期病院は「より重症な患者により高密度な医療を提供する機能」が求められており、入院医療の必要性が低い軽症患者や素泊まり希望の患者に医療を提供する医療機関は、診療報酬上、評価されない仕組みになっている。

したがって、医療機関が生き残るためには「より重症な患者により高密度な医療を提供する機能」を高めていく施策が必要となっている。

施策を設定するためには、マーケティング戦略の視点が重要である。

 

マーケティング

マーケティングとは
消費者の求めている商品・サービスを調査し、供給する商品や販売活動の方法などを決定することで、生産者から消費者への流通を円滑化する活動(三省堂 大辞林)
である。

一言でいえば、「価値を提供し対価を得る全てのプロセス」である。

一般的に、行われている広告・宣伝のような顧客向けのマーケティングは、エクスターナル・マーケティングと言われる。

現在の医療機関に求められているのは、エクスターナル・マーケティングではなく、インターナル・マーケティングである。

インターナルマーケティングは
「企業等が自らの商品・サービス価値を社内に浸透させる啓蒙活動であり、社内で商品・サービスへの価値観を共有化し、従業員の意識や行動の方向性を一致させる試み」
である。

自分たちの入院機能を高めるための理念・知識・技術を社内で共有し、行動の方向性を一致させなければ、今日の医療制度の下では生き残ることはできない。

入院医療を中心としている医療機関に必要なインターナル・マーケティングとしては、次のものがあげられる。

1)退院支援の強化
退院支援により軽症患者の在宅復帰が可能となり、重症度、医療・看護必要度の患者割合が向上しやすくなる。また、退院支援加算取得により収益の向上も見込まれる。

2)重症患者の受け入れルートや体制の確保
重症度、医療・看護必要度や医療区分2.3の割合を向上させるために、重症患者の受け入れルートや体制を確保する。救急機能の強化、手術部門の強化、在宅からの緊急受け入れ強化などを行うことで、医療必要度の高い患者が集まりやすい。

3)病床機能の転換
自院の地域性に適した病床へ転換することで、病床稼働率を安定的に維持することができる。地域の7:1急性期病棟が過剰、高齢者人口が減っている、近隣の病院が高度急性期へ転換しており、自院の急性期機能の役割が薄れているなどの場合は、10:1病棟、地域包括ケア病棟への転換も視野に入れるべきである。

4)認知症ケアの対応
認知症を有する患者が爆発的に増える中、急性期病院の認知症対応が求められている。入院中に、認知症が発症もしくは悪化し、治療が難渋、あるいは、ADLが低下し、結果、在院日数が増加することが多々みられる。また、急性期病院、療養病院ともに認知症ケアへの体制を強化し、認知症ケア加算を取得することが病院機能の向上に寄与する。

今までの医療・介護では、広告・宣伝などのエクスターナル・マーケティングに力を入れてきた。

確かに、エクスターナルマーケティングでも、患者が集まることから、自院のインターナルマーケティングに力を入れる医療機関は少なかった。

しかし、近年の診療報酬改定や介護報酬改定は、明らかに「サービスの質」を求める傾向があり、サービスの質の向上の有無が収益に直結する時代になったといえる。

インターナル・マーケティングは市場の雌雄を決する重要事項になっている。