リハビリテーション科を併設したクリニックを開設し、成功させるためには、経営戦略のみならず、リハビリスタッフの働きやすさやモチベーションを考慮する必要がある。
本記事では、リハビリテーション科の成功に向けた重要なポイントを解説する。
1. クリニックの方向性と運営方針の明確化
クリニックを円滑に運営し、発展させるためには、方向性を明確にし、それに沿った方針を確立することが重要である。
スタッフ全員が共通の意識を持ち、統一された方針のもとで診療を行うことで、組織としての強みが生まれる。
また、長期的な視点を持ち、クリニックの成長を見据えた取り組みを進めることが、持続可能な経営につながる。
2. 院長のリハビリテーション科へのコミット
リハビリテーション科を成功させるためには、院長自身が積極的に関与することが重要である。リハビリスタッフに業務を一任するのではなく
- リハビリテーションの重要性を理解し、経営方針に反映する
- 定期的にスタッフと意見交換を行い、働きやすい環境を整備する
- リハビリの効果を患者と共有し、クリニック全体でリハビリの価値を高める
といった取り組みを実施することが求められる。
3. 専門性の確立と差別化
クリニックのリハビリテーション科が成功するためには、専門性を確立し、他院との差別化を図る必要がある。たとえば、
- 脳卒中リハビリ:脳卒中後のリハビリに特化し、回復期から生活期まで支援する
- スポーツリハビリ:アスリートやスポーツ愛好者の復帰を支援する
- 高齢者の生活動作リハビリ:転倒予防や日常生活動作(ADL)向上に特化する
などの特色を持たせることで、専門性をアピールできる。
また、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)など、それぞれの専門分野を活かしたチーム医療を展開することも有効である。
4. WEBマーケティングの活用
集患のためには、WEBマーケティングが欠かせない。
特に以下の施策が効果的である。
- ホームページの充実:クリニックの理念、診療内容、スタッフ紹介、リハビリの様子を掲載する
- SNS・ブログの活用:リハビリの重要性や患者の回復事例を発信する
- Googleマイビジネスの活用:Google検索やマップで上位表示されるよう最適化する
- YouTubeや動画コンテンツ:リハビリのビフォーアフターやセルフエクササイズの紹介を行う
これらを活用し、リハビリの専門性をアピールすることで、患者の信頼を獲得できる。
5. クリニックはブラックになりやすい問題の回避
リハビリテーション科を併設するクリニックは、ブラックな労働環境になりやすいという課題がある。
その要因として
- 中抜きの時間が多く、拘束時間が長くなりやすい
- 労働時間が長いため、スタッフの離職率が高まる
- 算定期限超の月13単位患者ばかりのリハビリになるとモチベーションが低下する
が挙げられる。
これを回避するために
- シフト制を工夫し、中抜き時間を有効活用する(研修・勉強会の時間に充てるなど)
- 労働時間の管理を徹底し、無理なスケジュールを組まない
- 月13単位患者ばかりにならないよう、急性期の患者を受け入れる仕組みを作る
といった対策が必要である。
6. 確定診断の重要性と適切な患者層の確保
クリニックのリハビリテーション科を成功させるには、確定診断を適切に行える医師の力量が重要である。
診断が曖昧な慢性疾患の患者が集まりすぎると
- リハビリの効果が不明確になり、モチベーションが低下する
- 診療報酬が安定せず、経営の負担が増す
- スタッフが診療方針を立てづらくなる
といった問題が発生する。
そのため
- 確定診断を行える医師の採用・育成
- 診断基準の明確化と標準化
- 新患患者が定期的に来院するようなマーケティング施策
を実施することが大切である。
7. コンプライアンスの徹底
リハビリテーション科の運営には、コンプライアンスが欠かせない。
特に以下の点に注意が必要である。
- 診療報酬請求の適正化:不正請求が発覚すると、クリニックの信頼が失われる
- リハビリスタッフの資格・業務範囲の遵守:無資格者による施術は禁止する
- 個人情報の管理:患者のカルテや情報を適切に管理する
コンプライアンスを徹底することで、安定した経営が可能となる。
8. まとめ
リハビリテーション科を併設したクリニックを成功させるためには、
- 理念・ビジョンの明確化
- 院長のリハビリテーション科へのコミット
- 専門性の確立と差別化
- WEBマーケティングの活用
- ブラックな労働環境の回避
- 確定診断の強化と適切な患者層の確保
- コンプライアンスの徹底
が重要である。
特に、スタッフのモチベーション維持や労働環境の改善を意識しながら、患者に質の高いリハビリを提供する体制を整えることが、クリニックの成功につながる。
筆者の経験上、成功するクリニックは理念が明確であり、院長が積極的にリハビリテーション科へコミットしているケースが多い。
また、労働環境の整備や新患患者の獲得に積極的なクリニックほど、経営が安定しやすい傾向がある。
クリニックの経営上の課題がある場合は、いつでも弊社に相談ください。
専門のコンサルタントが、貴院の状況に応じた最適なアドバイスを提供いたします。
筆者
高木綾一
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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