2024年度診療報酬改定 急性期病院と老人保健施設の連携が強化された!

2024年度診療報酬改定では、老人保健施設の機能がさらに強化されている。

特に、老人保健施設と医療機関の密接な連携が強化される改定項目が新設されている。

その一つが、老人保健施設の初期加算の改変である。

以前の初期加算の算定項目は以下の通りである。

初期加算 30単位
1)入所日から30日間に限って,初期加算として1日につき30単位を加算する。
2)当該入所者が過去3月間(日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する者の場合は過去1月間の間)に入所したことがない場合に限り算定できる。

このように初期加算は老人保健施設に入所してから1か月間のケアやリハビリテーションに生じる手間を評価するものであった。

今回の改定では従来の初期加算が初期加算(Ⅰ)となり、新設の初期加算(Ⅱ)が設定された(図1)。

図1 初期加算Ⅰ・Ⅱの改定内容

初期加算(Ⅰ)算定要件
1)次の基準のいずれかに適合する介護老人保健施設で、急性期医療を担う医療機関の一般病棟への入院後30日以内に退院し、施設に入所した者について、1日につき所定単位数を加算する。ただし、初期加算(Ⅱ)を算定している場合は、算定しない。
2)施設の空床情報について、地域医療情報連携ネットワーク等を通じ、地域の医療機関と定期的に情報共有している。
3)空床情報について、施設のウェブサイトに定期的に公表し、急性期医療を担う複数医療機関の入退院支援部門に対し、定期的に情報共有を行っている。

初期加算(Ⅰ)の算定要件は、老人保健施設と急性期病院の関係性を高める項目となっている。

実は、急性期病院には中等症・軽症の高齢者の患者が急増しており、本来の急性期医療の対象者である重症患者の受け入れができない事例が増えている。

そこで、急性期病院からの退院を早期に促すために出口戦略として老人保健施設がその対象となった。

現在、老人保健施設には所定疾患施設療養費が認められている。

所定疾患施設療養費とは
肺炎等により治療を必要とする状態となった入所者様に対し、治療管理として投薬、検査、注射、処置等が行われた場合に、1回に連続する10日を限度とし、月1回に限り算定する。対象疾患は肺炎・尿路感染症・帯状疱疹・蜂窩織炎・慢性心不全の増悪(2024年度追加)である。

所定疾患施設療養費により老人保健施設の医療対応の機能が向上していることから、急性期からの患者の受け入れが促されている状況と言える。

今後、老人保健施設には急性期後の所謂、亜急性期患者が入所してくるケースが増えてくると予想される。

老人保健施設に勤務する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は亜急性期の利用者への対応という新しいステージを迎えていると言っても過言ではない。

亜急性期患者に対するリスク管理を徹底したリハビリテーションの介入が求められる機会が増えると予想される。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

2020年度診療報酬改定を受けてリハビリテーション部門はどのような運営を心掛けるべきか?その1 マーケティング

2020年度診療報酬改定の最終答申が出た。

今回も疾患別リハビリテーション料の単価は増加することなく据え置きとなった。

リハビリテーションでは、リハビリテーション実施計画書の作成タイミング、外来リハビリテーション料、専従者の複数業務可能など働き方改革に関する部分の改定が目立った。

一方で、急性期、回復期、地域包括ケア病棟は再編を促す内容が大きく盛り込まれた。

急性期は重症度・医療看護必要度の強化
地域包括ケア病棟は、400床以上の病院に対する新設不可、自前急性期転棟が6割未満
回復期リハビリ病棟はFIM利得向上
などが設定された。

このような設定は明らかに病棟機能が低い医療機関に対する警鐘であり、これらの要件を満たせない場合は、他の医療機能への転換やベッド数の返上を促すものである。

このような背景の中で、リハビリテーション部門はどのような運営を心掛けていけば良いのだろうか?

まず、リハビリテーション部門は患者を集めるためのマーケティングをしなければならない。

マーケティングについては過去にも投稿してるので下記の内容を参照にしてほしい。リハビリテーションの機能をアピールしたいなら理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が主体となったマーケティング活動をしましょう

マーケティングを一言で言うと、「自社の価値を顧客に届けてサービスを購入してもらうこと」になる。

先述したように、疾患別リハビリテーション料の単価の増加は今後も期待できない。

したがって、今後は病棟稼働率、外来利用者数を増やして、疾患別リハビリテーション料を確実に算定できる状況を作り続けることが重要となる。

病棟稼働率や外来利用者数を増やすには診療報酬改定で定めらたアウトカムは満たすことは当然である。

その上で、リハビリテーション部門のサービス提供価値を地域の医療機関や住民に理解してもらわないといけない。

リハビリテーション部門のサービス提供価値は単にリハビリテーションの医療行為だけでなく、連携に対する取り組み、退院後のフォロー、入院中の教育的指導、接遇、家族不安への取り組みなど多岐に渡る。

いくら素晴らしいリハビリテーションやサービスを提供していても、それが地域の医療機関や住民に理解されていなければ、患者紹介や利用につながる可能性は低い。

つまり、これからの時代は「情報発信」が極めて重要と言える。

リハビリテーション部門は、病院経営を経営者や幹部職員に任せるだけでなく、主体性をもってリハビリテーション部門の情報発信に努めなければ患者が減り自分たちの部門の存在意義もなくなってしまう。

診療報酬改定で単価が上がることを期待するよりも、「情報発信」を通じて患者を増やしていく方が得策である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
茂澤メディカルクリニック
たでいけ至福の園
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学 客員准教授