医療・介護における法令順守と言う魔物

日本では企業倫理はコンプライアンスであるという認識が強い。

コンプライアンスは日本語で法令順守と訳されていることから、法律を守ることが企業倫理であるという認識が根強い。

しかし、筆者が事業をおこなっている医療介護分野では、法令順守のみを追求し、顧客満足や社会貢献の意識の希薄な医療機関や事業所が多い。

医療や介護は規制ビジネスであることから、国より定められたルールが存在する。

診療報酬や介護報酬を請求するためには、決められた手順でサービスを行い、決められた書類を作成することが求められている。

短期的利益を追求する医療機関や介護事業所では、高い報酬を得るために法律上必要な最低限の行為(サービス・書類作成)だけに着目した運営をしており、患者や利用者の満足度や社会保障費の削減と言った社会貢献には全く興味を示さないことが多い。

しかし、このような医療機関や介護事業所は、患者や地域からの評判が悪くなり、長期的な経営が困難となり経営破たんを迎えることが多いのが実情である。

医療や介護のような公共事業的要素が強いビジネスでは、法令順守が最も要求される。

しかし、法令順守が厳しいことが、「法令順守さえしていれば大丈夫だろう」と言う文化を根付かせている側面があり、医療機関や介護事業所の本来の使命である質の高い医療や介護の提供が置き去りにされることが多い。

したがって、医療や介護の業界においては、企業倫理を法令順守としてだけ捉えるのではなく、社会的責任や社会貢献として認識することが、長期的な企業の成長には欠かせない。

あなたの事業所は法令順守だけをしていませんか?

執筆者
高木綾一
セミナー講師
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科