筆者が医療機関や介護事業所に対してコンサルティングをしていると、経営者や管理者より
「うちの職員はレベルが低いから、質の高いサービスはできませんよ」
「従業員が退職したら困るので、業務に関して強く指導することが出来ない」
などの意見をよく聞くことが多い。
このような発言の背景にあるものは何であるだろうか?
組織の作り方は二つある。
組織の能力から会社のサービスを規定する方法
と
会社のビジョンから組織を規定する方法
である。
先ほどの事例の会社は「組織の能力から会社のサービスを規定する方法」を選択していることになる。
しかし、この方法ではいつまでたっても会社のビジョンを達成することは出来ない。
それではなぜ、「組織の能力から会社のサービスを規定する方法」を選択してしまうのか?
それは、「今さえよければよい運営」を選択している他ならない。
「毎日がただ平穏無事に終わる」
「離職されたら現場が大変なので辞めないように低負荷の業務を与える」
「新しいことに挑戦すると失敗するかもしれないので、挑戦的なことはしない」
「職員が仲良しこよしで、ぬるま湯の家族的な運営」
「今さえよければよい運営」の代表事例である。
「今さえよければよい運営」は早晩、運営危機をもたらす。
なぜならば、事業を取り囲む外部環境の変化に「今さえよければよい運営」は全く適応できないからである。
例えば、診療報酬改定や介護報酬改定、人口動態の変化などに適応するためには、常に未来予測をした事業運営が必要となる。
そのためには、「会社のあるべき姿=ビジョン」を常に掲げ、「会社のビジョンから組織を規定する方法」の実践を模索する組織でなくてはならない。
あくまでも、「組織は会社の戦略目的を達成するための手段」である。
しかしながら、「組織の能力から会社のサービスを規定する方法」を選択している会社では、組織は存在することが目的になっている。
組織の存在が目的化すると、事業の本質は見えてこない。
また、「会社のビジョンから組織を規定する方法」では、組織に対するアプローチは常に行われる。
その代表格が「人材育成」である。
すなわち「人材育成」も会社の戦略目的を達成するための手段である。
皆さんの会社の人材育成は会社の戦略目的を達成するために存在しているだろうか?
人材育成を通じて会社のビジョンを組織に宿らせることが出来ているだろうか?
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授