2011年前後より地域包括ケアシステムが導入され、早10年以上が経過した。
この間、地域包括ケアシステムの構築が積極的に進められた。
特に、急性期―回復期―慢性期に患者が流れていく「垂直連携」が確立し、医療の機能分化は目覚ましく発展した。
医療の機能分化により、「急性期の在院日数低下や重度化」・「回復期におけるの早期の患者受け入れとADL改善後の在宅復帰」などは明確に効果が表れたといえる。
後期高齢者が爆発的に増加する2025年を前に、早期在宅復帰に向けた患者の流れが確立できたことは、地域包括ケアシステムの大きな成果と言えるだろう。
それでは2025年を目前にした2024年の診療報酬・介護報酬の同時改定では、何に重点が置かれた改定が行われるだろうか?
厚生労働省が新たに出してきたキーワードが「水平連携」である(図1)。
これは医療において患者が急性期ー回復期―慢性期に流れていく「垂直連携」とは異なる概念である。
水平連携とは
患者の住まいの圏域の医療機関や介護事業者等が、疾患やADLの状態に応じたサービスを提供し、可能な限り入院をせずに在宅で生活を継続することである。
「垂直連携」の仕組みが完成したこと、2025年以降、後期高齢者が急増することを踏まえると在宅療養を行う高齢者の数が必然的に増加する。
そのため、厚生労働省は2024年度診療報酬・介護報酬同時改定では「水平連携」に力を入れた制度改定を実施する。
「水平連携」に関して予想される改定の項目は診療報酬の「かかりつけ医機能の強化」と介護報酬の「新たな複合サービス」である。
かかりつけ医機能の強化は、近年の診療報酬改定で継続的に行われてきた。
2022年度の診療報酬改定ではかかりつけ医機能を評価する「機能強化加算」の要件の見直しが行われた(図2)。
かかりつけ医が行うべき項目を加算の要件にしていることが伺える。
2024年度の診療委報酬改定では、「かかりつけ医機能を患者に書面にて説明すること」、「かかりつけ医機能を発揮している医療機関としての情報を詳細に公開する」などをさらに求めていくことが予想される。
かかりつけ医機能を強化することで、「慢性疾患を有する患者が入院することなく、在宅にて長期間療養できること」を狙う。
新たな複合サービスでは介護保険における「通所サービスと訪問サービスの複合化」について規制緩和が行われる。
通所介護と訪問介護
通所リハと訪問リハ
療養介護と訪問看護
などを一つの介護保険事業所にて複合的に運営できる規制緩和となる。
次のような状態を複合的に満たす利用者は通所サービスと訪問サービスを組み合わせることで質の高いケアが実現できると考えられている。
医療的ニーズが強い
在宅での生活の希望が強いが24時間の介護が必要である
介護者の介護負担軽減のためのレスパイトが必要である
このような状態の方は今後右肩上がりで増えていくと考えられ、新たな複合サービス導入が検討されている。
2023年度の改定では水平連携に関する改定項目がどんどん出てくると思われる。
各医療機関、介護事業所においては今より最新情報をキャッチアップして、改定に備えてほしい。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授