2024年度診療報酬改定 目玉だった地域包括医療病棟はなぜ苦戦しているのか?

2024年度診療報酬改定にて10年ぶりに新病棟が新設された。

軽度急性期として新しいジャンルの確立を目指して設立された地域包括医療病棟。

口腔・栄養・リハビリテーションを標準化し、365日リハビリテーションを実施する画期的な病棟である

2040年までに高齢者が増加することにより、軽度急性期症状を有する高齢者が激増する。

しかし、軽度者が一様に一般急性期に入院することになれば、一般急性期はパンクする。

また、一般急性期はリハビリテーションの機能が高くないことから、入院した軽度者のADLの回復は乏しく、要介護状態がより進んでしまうリスクがある。

このような課題を解決するために、地域包括医療病棟は新設された。

この病棟は入院基本料も高く、疾患別リハビリテーションや看護補助体制の加算などにより日当点も5000点から6000点の範囲となり、非常に収入が高い。

しかし、2024年10月現在、地域包括医療病棟への参入する医療機関が少なく、新病棟の存在意義が早くも揺らいでいる。

地域包括医療病棟への参入が厳しい理由は、病棟要件に原因があるとされている。

地域包括医療病棟の重症度、医療・看護必要度の要件は以下の通りとなっている。

①既存の入院患者ではA項目2点以上かつB項目3点以上、A項目3点以上、C項目1点以上のいずれかに該当する患者が15%以上(看護必要度I)
②新規入院患者で入棟時B項目3点以上の患者割合が50%

特に、A項目やC項目は整形外科などの手術症例を多く受け入れている医療機関は満たしやすいが、内科系を中心とした医療機関には厳しい。

そもそも、地域包括医療病棟は尿路感染症、誤嚥性肺炎、呼吸器感染症、熱中症、低栄養などの内科系疾患の軽度急性期を受け入れる役割を求めているが、それらの症例にそぐわない重症度、医療・看護必要度が厳しすぎるという矛盾を抱えている。

また、入院時と比較して退院・転棟時にADLが低下した患者の割合が、直近1年で5%未満」の要件も内科系を中心とする医療機関には厳しいものである。

整形外科の手術患者が多い医療機関では入院後から退院までに右肩上がりにADLは回復するが、内科系では廃用症候群の回復に時間かがかかりADLが低下する症例も多い。

逆に言えば、整形外科の救急が多い医療機関であれば地域包括医療病棟への転換は検討の余地があると言える。

一点、留意しなければならないのは、地域包括医療病棟は平均在院日数が21日であるために、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟と比較して病床の回転率が高いことである。

そのため、高齢者数の増加が高止まりの地域や、他の医療機関が地域包括医療病棟へ転換するなどの環境変化により地域包括医療病棟の稼働率が低下する可能性がある。

また、平均在院日数21日以内を達成するためには、退院調整や退院後の後方連携のマネジメントが重要となる。

訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどの退院後の生活をフォローする介護保険事業所との連携は今以上に図る必要があるだろう。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授