リハビリ職種の職人肌キャラに管理職が務まらない理由

リハビリ職種においていわゆる「職人肌」の人が管理職に向かない確率が100%に近い。

臨床は熱心なのに、管理業務は稚拙・無関心である。

なぜ、こんなことになるのか?

次のようなことが原因と考えられる。

1. マネジメントと専門技術の違い
職人肌の人は、自分の技術や知識を極めることに価値を見出しやすく、臨床に強いこだわりを持つ。
しかし、管理職の役割は「組織を運営し、チームをまとめ、成果を最大化すること」であり、個人の技術力とは異なるスキルが求められる。
個人からチームへ関心を向けることが難しいという根本的な問題を抱えている。

2. チームワークの軽視
職人肌の人は、自分のやり方にこだわりが強く、「自分が正しい」という意識が強い。
そのため、チームメンバーの意見を聞かず、一方的に指示を出したり、部下のやり方に不満を持ったりする。
リハビリテーションは多職種が連携して利用者にケア・リハビリテーションを提供する場なので、コミュニケーション不足や協調性の欠如は大きな問題になる。

3. 業務の属人化と育成の難しさ
「自分のやり方がベスト」と考える職人肌の人は、標準化された業務プロセスを作るのが苦手である。
標準化された業務がないため、部下が成長する機会を奪ったり、管理職本人が不在になると業務が滞ったりするリスクが生じる。

4. 視野の狭さと経営視点の欠如
職人肌の人は、臨床の細部にこだわるあまり、組織全体の利益や経営的な視点を持ちにくい。
リハビリテーション部門の管理職には、患者の満足度だけでなく、コスト管理、人材確保、業務効率化などの視点が求められるため、「良い臨床を提供すること」だけは、組織運営が困難となる。

職人肌を管理職にしないためには、専門職と管理職の複線型のキャリアパスを運用することが効果的である。

専門職コースの設置:技術や技能を極める「スペシャリスト」
管理職としてチームを率いる「マネージャー」
の2つキャリアパスを明確にすることが大切である。

管理職に向いていない職人肌の人を無理に昇進させると、本人も周囲も苦しくなる。

「管理職にならないと出世できない」という風潮をなくし、専門職として活躍できる道を整備することも重要である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

PT・OT・STのみなさん!周りから応援されるキャリアデザインをしましょう!

キャリアデザインの本質は「自己決定」である。

自分自身の価値観に基づき、自分自身で行動を決定する。

自己決定ではない、他者決定のキャリアデザインはモチベーションが継続せず、いつしか、「環境の奴隷」と化してく。

よって、自己決定の精神でキャリアデザインを進めることは最重要課題であると言える。

しかし、一点、留意しなければならないことがある。

それは、「自身のキャリアは他者に影響を与える」という視点である。

人間は一人では生きていけない。

社会的なコミュニティー中で生きている。

よって、自分の行動は他者に影響を与える。

その影響は、良い影響もあれば悪い影響もある。

したがって、自己決定だけでなく、他者の配慮もキャリアデザインには必要である。

図1は自己決定が周囲に与える影響の違いを示している。

図1 応援される人と応援されない人

キャリアデザインは自己決定が原則であるが、自己決定に至るまでに自分自身の興味・関心・価値観を自身と利害関係のある人たちに自己開示することが大切である。

興味・関心・価値観を自己開示することで、周囲の人たちは「この人はこんな夢があるんだ」「この人はしっかりした考えを持っている」と感じるようになる。

その結果、新たな行動を決断した時に、周りの人からの応援を得やすくなる。

しかし、日頃から利害関係のある人たちとコミュニケーションをとらず、自身の想いを語らなければ、周りの人は「あの人は何を考えているのかわからない」と感じる。

その結果、新たな行動を決断した時に、あまりに唐突な行動に周囲は驚き、唖然として、最終的には批判される可能性もある。

人生において新しい選択をした時は、それなりの困難を伴う。

その困難を乗り越えるためには、自分の能力だけではなく、友人、知人などの支援が必要である

しかし、支援をしてもらうためには、「応援されるキャリアデザイン」が必要となる。

「あいつの夢を応援してやろう」、「あの人が困っているなら助けてあげよう」と思われることが重要である。

そのためには、常に自分の興味・関心・価値観を周囲の関係者に語るといったオープンマインドな姿勢を持つことが重要となる。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

専門性を極める症候群が逆にキャリアを阻害する

リハビリ職種のキャリアデザインでは、大半の人が自らの専門性を高める取り組みを行うことが多い。

リハビリ職種として「専門性を高めることに重きを置いている価値観」がある人が専門性を高める取り組みを行うことは何ら問題がない。

問題は、「専門性を高めることに重きを置けない価値観」の人が専門性を高める取り組みを行い、そのことにより、ストレスを感じていることである(図1)。

図1 専門性を極める症候群はストレスを生む

リハビリ職種は、専門職であることから一定の専門性を高めることは重要である。

しかし、専門職を高めることに固執をしてしまうと、自身の興味・関心のある分野に取り組むことを躊躇してしまう。

リハビリ職種は、「専門性を高めることが重要である」と学生時代から教育されてきた。

また、PT・OT・STの職能団体も専門性を高めることがリハビリ職種として重要であることを啓蒙し、それに基づいた認定資格の取得を推奨している。

リハビリ職種が「専門性の向上」以外のキャリアを歩むことは、「悪」であるという文脈が作られていると言っても過言ではない。

そのため、リハビリ職種の中には、他の分野に興味はあるが、それがリハビリ職種の専門性とは異なる分野のために、取り組むことが出来ない人がいる。

さらに、「リハビリ職種なのに他の分野に興味を持つ私は最低な人間だ」と自己嫌悪に陥る人までいる。

まさにこれは、専門性を極める症候群がキャリアを阻害している事例である。

リハビリ職種はリハビリの専門性に固執しなければならないというのは典型的なベーシックミステイクと言える。

ベーシックミステイク
人は物事を受け取り方を悪い方向性に解釈し、正しい認知を歪めてしまう

「リハビリ職種=専門性の向上こそがキャリアデザインである」というのは本人が勝手に思い込んでいることであり、リハビリ職種であっても他の分野に興味があるなら、他の分野で自らの才能を伸ばすことの方がよっぽど合理的である。

かく言う私も理学療法士という職種ながら、マネジメントやキャリアデザインといった他の分野でキャリアを構築している。

もし、理学療法だけに固執をしていれば、今の自分はいないと断言できる。

キャリアデザインは、その人らしさを発揮することが目的の一つである。

その人らしさを発揮できない専門性の向上であるならば、専門性の向上はキャリアデザインを阻害する要因にしかならない。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

中年のリハビリ職種のキャリアデザインはどうあるべきか?

40代から60代の中年リハビリ職種は若い頃と異なる悩みが増えてくる。

若い頃は、目の前の患者の臨床に必死になれたし、様々な仕事が新鮮に感じやりがいを感じることも多かった。

しかし、中年になると
定年退職後の生活を意識するようになる
今の仕事を辞めたら、次の行き場がない想いにかられる
職場の若手より自分の能力が低下していることを感じる
自分の人生に疑問を持つようになる
体調が悪いことが増える
などが生じる

一般的にこれらは、ミッドクライシスと言われる。

2000年当初よりリハビリ職種の養成校が急増したが、その頃に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士になった世代の人たちが、現在、中年世代に突入しているため、ミッドクライシスに陥っている人たちが非常に多くなっている。

ミッドクライシスをどのように受け止めるかで、今後の人生は大きく変わる。

ミッドクライシスを危機感として正面から受け止め、具体的な対策や行動を取ることができれば人生の後半戦も充実したものになる可能性が高い。

しかし、危機感として受け止めず、今のままで良い、何も行動しないという保身をしてしまうと状況が全く変わらないため、ミッドクライシスが進行してしまう可能性が高い。

中年になれば、保身になる人が多い。

できるだけ、今の会社や環境にぶら下がり、波風を立てずに安定した給料を求めたくなる。

しかし、経営環境が厳しい日本の企業は、経営効率を上げるために、ぶら下がり社員をリストラの対象にする可能性も高いため、ぶら下がりを続けること自体がリスクと言える。

また、組織にぶら下がるためには、組織や職場に従属的になりやすく、自身が望まない仕事や役割を求められることが増えてくる。

そうなると、人はストレスを感じ最悪の場合、心身症を発症する可能性もある。

ミッドクライシスを乗り切る方法として次のようなものがある。

①これからの残りの人生に何ができれば幸せかを考える
②他人と比較するのではなく、自分の価値感を大切にする
③新しいことにチャレンジし、新たな経験や価値観を得る
④健康管理に重点をおいた生活をする

これらの項目の一つでもいいので行動を起こすことが大切である。

そうすると、自身の中で心の変化が生まれ、今後の人生における指針が見えてくる。

とにかく、今と違う思考や行動を実行することが、ミッドクライシスを乗り切るコツである。

これまでの考え方に固執せずに新しいこと挑戦していくことで思わぬ出会いや出来事が起こる。

とにかく挑戦を!

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

 

 

リハビリ部門マネジメントの課題 ワークライフバランスの誤解

ワークライフバランスの概念が医療機関や介護事業所のマネジメントに浸透して久しい。

なんとなく、「働きやすい職場=ワークライフバランスを実現している出来る職場」という考えが定着している。

しかし、経営者、管理者そして従業員も「ワークライフバランスとは何者なのか?」について明確に理解していることは少ない。

現実的にはワークライフバランスを導入したことにより
単位数減少等の生産性が低下した
セラピストの人手不足が生じた
セラピストの質が低下した
などの問題が全国各地のリハビリ部門で生じている。

具体的には以下のような問題が多い。

①多様な価値観を受け入れているとそれぞれの職員の考えがばらついてしまい、組織として同じ方向性を向くことが出来ない

②残業等を削減するため、セラピストの技術や知識を高めるための教育が乏しくなり、質の低いセラピストが増えた

③家庭の事情を最優先させ、組織に協力的ではない職員が増えた。

これらの問題が生じる根本的な原因は、「ワークライフバランスの誤解」である。

ワークライフバランスの真の意味を理解せずに組織のマネジメントに導入した結果、多くの問題を抱えることになっているのである。

ワークライフバランスの誤解には以下のようなものがある。

誤解①
仕事も生活も「そこそこに」で行う

最も多い誤解に、「ワーク・ライフ・バランスは仕事も生活もほどほどにして両立する」がある。

仕事や生活に手を抜いたり、妥協することがワークライフバランスではない。

「仕事や生活の双方が自分にとって充実したものにする」ために、「仕事や生活を含む人生を良くするために自分らしい働き方をする」を前提とするものである。

誤解②
ワークライフバランスは女性のための取り組みである。

出産や子育てといったライフイベントが多い女性が組織内で活躍するためにワークライフバランスは必要である。

しかし、子どもが生まれて親となるのは男性も同じであり、また、親の介護は性別や年齢に関係なく生じるライフイベントである。

よって、ワークライフバランスは年齢や性別を問わず全ての働く人を対象にした取り組みである。

誤解③
ワーク・ライフ・バランスは、会社が実現させるもの

働きやすさや自分の思い描く働き方の実現は会社や組織が提供してくれるという姿勢ではワークライフバランスは実現できない。

ワークライフバランスは、組織の制度を活用して働く一人ひとりが実現させるべき極めて主体的なものである。

そのためには、「会社が求めている仕事の結果」と「自分がどのように生きていきたいのかという価値観」を知り、その実現のために主体的に行動する必要がある。

誤解④
残業のない会社=ワークライフバランスを実現している会社

残業のない会社は定時時間内に成果を出すことが要求される。

時間内でリハビリテーションのサービス、書類作成、業務連絡などをすべて完了させなければならない。

したがって、ワークライフバランスを導入している会社は高い生産性が必須条件となる職場である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授