中年のリハビリ職種のキャリアデザインはどうあるべきか?

40代から60代の中年リハビリ職種は若い頃と異なる悩みが増えてくる。

若い頃は、目の前の患者の臨床に必死になれたし、様々な仕事が新鮮に感じやりがいを感じることも多かった。

しかし、中年になると
定年退職後の生活を意識するようになる
今の仕事を辞めたら、次の行き場がない想いにかられる
職場の若手より自分の能力が低下していることを感じる
自分の人生に疑問を持つようになる
体調が悪いことが増える
などが生じる

一般的にこれらは、ミッドクライシスと言われる。

2000年当初よりリハビリ職種の養成校が急増したが、その頃に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士になった世代の人たちが、現在、中年世代に突入しているため、ミッドクライシスに陥っている人たちが非常に多くなっている。

ミッドクライシスをどのように受け止めるかで、今後の人生は大きく変わる。

ミッドクライシスを危機感として正面から受け止め、具体的な対策や行動を取ることができれば人生の後半戦も充実したものになる可能性が高い。

しかし、危機感として受け止めず、今のままで良い、何も行動しないという保身をしてしまうと状況が全く変わらないため、ミッドクライシスが進行してしまう可能性が高い。

中年になれば、保身になる人が多い。

できるだけ、今の会社や環境にぶら下がり、波風を立てずに安定した給料を求めたくなる。

しかし、経営環境が厳しい日本の企業は、経営効率を上げるために、ぶら下がり社員をリストラの対象にする可能性も高いため、ぶら下がりを続けること自体がリスクと言える。

また、組織にぶら下がるためには、組織や職場に従属的になりやすく、自身が望まない仕事や役割を求められることが増えてくる。

そうなると、人はストレスを感じ最悪の場合、心身症を発症する可能性もある。

ミッドクライシスを乗り切る方法として次のようなものがある。

①これからの残りの人生に何ができれば幸せかを考える
②他人と比較するのではなく、自分の価値感を大切にする
③新しいことにチャレンジし、新たな経験や価値観を得る
④健康管理に重点をおいた生活をする

これらの項目の一つでもいいので行動を起こすことが大切である。

そうすると、自身の中で心の変化が生まれ、今後の人生における指針が見えてくる。

とにかく、今と違う思考や行動を実行することが、ミッドクライシスを乗り切るコツである。

これまでの考え方に固執せずに新しいこと挑戦していくことで思わぬ出会いや出来事が起こる。

とにかく挑戦を!

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

 

 

リハビリ部門マネジメントの課題 ワークライフバランスの誤解

ワークライフバランスの概念が医療機関や介護事業所のマネジメントに浸透して久しい。

なんとなく、「働きやすい職場=ワークライフバランスを実現している出来る職場」という考えが定着している。

しかし、経営者、管理者そして従業員も「ワークライフバランスとは何者なのか?」について明確に理解していることは少ない。

現実的にはワークライフバランスを導入したことにより
単位数減少等の生産性が低下した
セラピストの人手不足が生じた
セラピストの質が低下した
などの問題が全国各地のリハビリ部門で生じている。

具体的には以下のような問題が多い。

①多様な価値観を受け入れているとそれぞれの職員の考えがばらついてしまい、組織として同じ方向性を向くことが出来ない

②残業等を削減するため、セラピストの技術や知識を高めるための教育が乏しくなり、質の低いセラピストが増えた

③家庭の事情を最優先させ、組織に協力的ではない職員が増えた。

これらの問題が生じる根本的な原因は、「ワークライフバランスの誤解」である。

ワークライフバランスの真の意味を理解せずに組織のマネジメントに導入した結果、多くの問題を抱えることになっているのである。

ワークライフバランスの誤解には以下のようなものがある。

誤解①
仕事も生活も「そこそこに」で行う

最も多い誤解に、「ワーク・ライフ・バランスは仕事も生活もほどほどにして両立する」がある。

仕事や生活に手を抜いたり、妥協することがワークライフバランスではない。

「仕事や生活の双方が自分にとって充実したものにする」ために、「仕事や生活を含む人生を良くするために自分らしい働き方をする」を前提とするものである。

誤解②
ワークライフバランスは女性のための取り組みである。

出産や子育てといったライフイベントが多い女性が組織内で活躍するためにワークライフバランスは必要である。

しかし、子どもが生まれて親となるのは男性も同じであり、また、親の介護は性別や年齢に関係なく生じるライフイベントである。

よって、ワークライフバランスは年齢や性別を問わず全ての働く人を対象にした取り組みである。

誤解③
ワーク・ライフ・バランスは、会社が実現させるもの

働きやすさや自分の思い描く働き方の実現は会社や組織が提供してくれるという姿勢ではワークライフバランスは実現できない。

ワークライフバランスは、組織の制度を活用して働く一人ひとりが実現させるべき極めて主体的なものである。

そのためには、「会社が求めている仕事の結果」と「自分がどのように生きていきたいのかという価値観」を知り、その実現のために主体的に行動する必要がある。

誤解④
残業のない会社=ワークライフバランスを実現している会社

残業のない会社は定時時間内に成果を出すことが要求される。

時間内でリハビリテーションのサービス、書類作成、業務連絡などをすべて完了させなければならない。

したがって、ワークライフバランスを導入している会社は高い生産性が必須条件となる職場である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療機関・介護事業所の企業寿命が短くなっている現代ではPT・OT・STのセルフマーケティングが必要である

日本企業の寿命は平均23年と言われている。

一方で日本人が働く期間は50年前後と言われている。

つまり、働く期間より企業寿命の方が短い。

さらに、診療報酬改定・介護報酬改定が厳しくなっている現代では、医療機関・介護事業所の企業寿命は徐々に短くなっており、加えて2019年以降新型コロナウイルスの蔓延により小規模の医療機関や介護事業所の倒産や買収が増加している。

これらのことから言えることは、これからの時代において「所属先企業に依存した働きは明らかに危険である」と言うことである。

自分の能力を高めずに、所属先企業に依存した働き方をしていると、突然の倒産や買収などが生じた時に、転職等の対応を円滑に行うことが出来ず、厳しい労働環境に追い込まれる可能性が高い。

所属先に依存しない働き方を実現する手段として、セルフマーケティングが有効である。

セルフマーケティングとは、「自分の価値を構築し、市場と取引する能力」である。

簡単に言えば、「誰に何を供給するか?」と言うことである。

この場合、「誰」というのは、企業、個人、地域、自社組織、行政等である。

これらの対象者はニーズやウォンツを顕在的にも潜在的にも有している。

ニーズとは、不足している状態から渇望される欲求である。

ウォンツとは、ニーズから渇望された欲求を満たすものである。

つまり、セルフマーケティングを実施するためには「企業、個人、地域、自社組織、行政等がどのようなニーズやウォンツを有しているのかを知る」意識が絶対条件である。

ニーズやウォンツを知ることが出来れば、そこに提供するべき「サービス」があるはずである。

その「サービス」を、無形・有形として生み出すことを「価値」と言う。

「自分の価値を構築し、市場と取引する能力」を磨くことによって、個人の市場価値が向上し、組織や市場から必要とされる能力(エンプロイアビリティー)が格段に高まり、転職が容易となる。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの医療系の国家資格を有する人には、国家資格を取得することで「市場からの価値が得られたと勘違いする人」が多い。

毎年、国家資格の有資格者が大量に出現する現代では、国家資格自体の価値は低下している。

現に、理学療法士、作業療法士の年収はこの20年間、上がっていない。

今の時代ほど「セルフマーケティングが必要な時代はない」と言えよう。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
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修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

キャリアデザインの重大課題!行動できない症候群!

医療・介護の職種にキャリアデザインの必要性が叫ばれて久しい。

診療報酬や介護報酬にて優遇されにくい分野や過剰供給が予測される分野で働く職種は戦略的なキャリアデザインが必要である。

特に、上記の理由から理学療法士、作業療法士、准看護師、放射線技師等の職種は今後、キャリアデザインは必須と言えよう。

しかし、キャリアデザインが必要性を頭ではわかっていても、行動に移せない人は非常に多い。

それでは、なぜ、行動に移すことができないのだろうか?

筆者の数多くのキャリアカウンセリングの経験から、行動に移せない人の特徴は以下のようなものがあると感じている。

①非常に優秀な人であるため、自分の行動の結果を先読みし、少しでもリスクがあると行動に移さない。

②失敗を悪と捉え、一度失敗すると立ち直れないと勘違いをしている。

③キャリアデザインの重要性を心底理解していないため、結果的に行動が中途半端になる。

簡単に言うと以下のような方が行動に移せない人である。
①はインテリの方
②は失敗したらどうしようが先立つ方
③自分の人生に向き合わない方

筆者はキャリアカウンセリングにおいてはこのようなクライアントに次のようなアドバイスを実施している。

インテリの方
リスクを取らないことの方がリスクになることが多い。
人生では正解だけを求めて行動すると不正解に出会った時の対処法を学ぶことができない。
リスクがある場合、リスクを管理しながら人生を前に進める方が前向きな人生になり、人生も好転しやすい。

失敗したらどうしようが先立つ方
そもそも、失敗しない人間に成功はない。
失敗しないと成功の方法が理解できない。
人生はトライ&エラーであり、トライしない人間にエラーはないし、エラーのない人間に成功はない。

自分の人生に向き合わない方
あなたはいつまで他人の人生の脇役を演じるかの?
自分の人生の主役は自分である。
自分の興味、関心、価値観を満たさない人生では永遠に環境の奴隷になる。
本当にそんな生き方でいいのか?

キャリアデザインには様々な理論があるが、上記のような問題がある人にどれだけキャリア理論を提供しても行動に移すことはない。

まずは、行動に移すため前提条件としてのキャリアデザインに必要な価値観を確立する必要があるだろう。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

リハビリ部門人材育成では組織と個人のパートナーシップが重要である

人材育成は組織側の視点で行われることが多い。

人事考課制度などはその典型例であり、組織が求める人材のスペックを評価するものである。

しかし、セラピスト個人の視点から見ると、人材育成は「キャリアデザイン」のほかならない。

セラピストが、日頃の業務や教育研修などを通じてリハビリテーション専門職として価値を高めていく過程を「組織と個人」がどのようにデザインをしていくのか?がキャリアデザインの大きなポイントとなる。

リハビリ部門においてセラピストのキャリアデザインを推進していくためには、リハビリ部門で働くセラピストとのパートナーシップが重要となる。

それではリハビリ部門とセラピストのパートナーシップはどのように形成すればよいのだろうか?

まず、リハビリ部門は組織の目標を達成するためのセラピストに仕事を与えセラピストのキャリアを発展させる機会を提供する。

そして、セラピストは与えられた仕事の機会を通じて自身の価値を向上させる努力をする。

このように説明すると簡単に思われるが、この組織と個人の関係を継続するためには組織が個人を育てる意思、個人が組織に貢献する医師のすり合わせが極めて重要となる。

つまり、「組織と個人の方向性を整える作業」が組織と個人の双方に求められる。

しかし、多くのリハビリ部門では「組織と個人の方向性を整える作業」を怠ることが多い。

組織がセラピストの成長を考えずにロボットにように働かせる。

個人は自分がやりたい臨床だけをする。

このような関係では組織と個人の間にはパートナーシップは存在していない。

ぜひ、みなさんのリハビリ部門においてはセラピストと綿密にコミュニケーションをとっていただき、セラピストとのパートナーシップの形成をして頂きたい。

パートナーシップが形成されていない中において教育・研修を行ってもその効果は限定的なものとなる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
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理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
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関西医療大学保健医療学部 客員准教授