なぜ、リハビリ部門にやらされ管理職は多いのか!?

経営者から院長に言われたから管理職を引き受けました。
給料が上がるから管理職を引き受けました。
管理職を引き受けなければ、その組織に居ることが出来ないと思い引き受けました。

このような理由で、リハビリ部門の管理職を引き受けている理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がいるが、はっきり言って「管理職を舐めすぎ」である。

管理職は
リハビリテーション部門やそこで働く従業員の生活や命を守る職位である。

時に、職員を厳しく指導し
時に、経営者や院長に対して苦言を呈し
リハビリテーション部門の経営を健全化させる全責任を担っているのがリハビリテーション部門の管理職である。

本心では管理職をやりたくないのに、管理職を引き受けてしまった人を「やらされ管理職」と言う(図1)。

図1 やらされ管理職

やらされ管理職の人は、管理職を拝命した後に管理職を引き受けたことを後悔することが多い。

管理職を前向きに取り組む動機づけが乏しいので経営者や上司からの要求、組織内における人間関係の調整、リハビリテーション部門としての売り上げの確保などに強いストレスを感じるようになる。

その結果、管理職を辞めたい、ひいては、会社を退職したいという気持ちが高まり、退職に至ることが多い。

管理職が退職すれば、一時的に組織は混乱状態となる。

「管理職をやりたくない」のに「管理職を引き受ける」ことは、職業人としての判断が甘すぎると言わざる得ない。

しかし、一方で「管理職をやりたくない人」に「管理職に就かせようとする」会社側も、管理職を舐めすぎである。

このような会社は
管理職の位置づけが低い
管理職の育成を放置している
管理職を年功序列で就かせる
管理職の任命基準はない
管理職の離職率が高い
などの状況が多い。

管理職とは大きな責務と権限を担う職位である。

その職位を軽んじるような考えを持つ組織や個人がいると、組織は常に崩壊の危機に瀕する。

「やらされ管理職」を防止するためには次のような方策がある。
①職能基準書を作成し、管理職の役割、権限を明確にする。
②入職段階から人材育成を進め、管理職の適性の有無を判断する。
③管理職枠の採用を進め、管理職希望者を確保する。
④管理職の役割、権限に見合った給与等の条件を整える。

上記のような取り組みをしていない組織は、常に行き当たりばったりで管理職を抜擢する傾向がある。

皆さんの組織には「やらされ管理職」はいないだろうか?

もし「やらされ管理職」がいるのであれば、組織に根深い問題が存在していると思ってよいだろう。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療法人様で三年目リハビリテーション職種を対象としたキャリアデザインセミナーを行いました!

2024年10月に兵庫県の某医療機関様にて株式会社WorkShiftの高木綾一がキャリアデザインセミナーの講師を担当させていただきました。

対象は三年目リハビリテーション職種の方でございました。

リハビリ職種の三年目の悩みとして多いのは次のようなものがあります。

①臨床業務が忙しく、一日が忙殺されあっという間に一日過ぎて、自分の仕事や人生を振り返る時間がない。

②リハビリ職種になる目標は叶えたが、次の目標が特に見つからない。

③特にやりたいことが見つからず、キャリアをどう展開してよいかわからない。

また、一方で医療機関やリハビリテーション部門としては三年目のリハビリテーション職種には現場におけるリーダーや教育者としての役割を期待したいところです。

医療機関やリハビリテーション部門が抱く期待とリハビリテーション職種が持つキャリアの不安をどのように調整してくのか?がキャリアデザインの課題となります。

ここで重要な点は、リハビリテーション部門側が実現してほしい目標を一方的にリハビリテーション職種側に強要をしてはならないことです。

なぜならば、リハビリテーション職種は一人の人間であり、それぞれの人が興味・関心・価値観を持っているからです。

人の興味・関心・価値観を完全に無視した組織側の目標設定は人のモチベーションを下げる可能性が大いにあります。

リハビリテーション部門の管理職は常に部下とのコミュニケーションを怠らず、部下の興味・関心・価値観を探っておくことが重要です。

キャリアデザインセミナーでは、年齢や経験年数別に応じたキャリアの在り方や組織が実施するキャリア開発について解説をしております。

近年はオンラインも活用して全国各地に実施することが可能となりました。

リハビリテーション部門のキャリアデザインセミナーに興味がある方はいつでも弊社にお問い合わせくださいませ。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

家族文化のリハビリテーション部門が陥る末路

これまで筆者は多くのリハビリテーション部門のコンサルティングを実施してきた。

ご相談内容として多いものの一つに
「リハビリテーション部門の雰囲気が緩くて、規律が守られず、人材も育っていない」というものがある。

このようなリハビリテーション部門は、いわゆる家族文化を有している。

組織文化は次の4類型に分けられる。

家族文化
和気あいあいとした空気の中でお互いを尊重することを重要視する。
仲の良さ・気遣い・一体感が求められる。

革新文化
開放的な雰囲気の中で、チャンスを求めて変化に対応する。
新規性・挑戦・革新が求められる。

官僚文化
秩序やルールを重要視し、手順を大切にする。
規律・共有・監理が求められる。

成果文化
競争意識を持ちながら、目標に向かって進むことを重要視する。
利益・採算性・効率性・アウトカムが求められる。

リハビリテーション部門は家族文化が多い傾向が一般的であるが、一方で経営難に陥っている医療機関や買収された医療機関は成果文化が多い。

家族文化のリハビリテーション部門ではドロドロした人間関係やパワーハラスメントなどはないため、一見すると良い職場に見える。

しかし、最大の欠点は「チーム全体がの調和が求められる余り、チーム全体と異なる意見を言いにくいことや、個人の突出した行動が評価されにくいため、個人が育ちにくい」ことである(図1)。

図1 家族文化を有するリハビリテーション部門

近年、リハビリテーション医療では
リハビリ職種の複数担当制
リハビリ職種の他職種連携
リハビリ部門における感染管理・安全管理
リハビリ部門の収益改善
リハビリ医療のアウトカム改善
などの重要性が増している。

これらの取り組みを成功させるためには、組織の課題に率直向き合い、リハビリ職種同士が是々非々の議論を交わす必要がある。

よって、家族文化が強いリハビリテーション部門では、様々な取り組みに失敗している事例が多い。

取り組みを推進させるためには、革新文化や成果文化が望ましい。

家族文化が強すぎることで、組織改革が上手く実行できていない場合、家族文化からの転換を図る必要がある。

筆者の経験上、家族文化が浸透しているリハビリテーション部門は理念が浸透していない場合や理念そのものの設定がなされていない場合が多い。

理念がないため、ビジョンやルールも存在しない。

そのため、特に守るべき行動規範もないために、それぞれのリハビリ職種が「好き勝手に働いている」ことが家族文化を生み出している根源と言える。

また、理念やビジョンは設定するだけでなく、リハビリテーション部門全体に浸透しなければ何の意味もない。

家族文化の打開には理念を活用したマネジメントが重要であると言える。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

兵庫県介護老人保健施設協会様にて「2024年度診療報酬・介護報酬改定が老人保健施設の運営に与える影響」について講演をさせていただきました!

2024年10月18日 金曜日に兵庫県介護老人保健施設協会様にて「2024年度診療報酬・介護報酬改定が老人保健施設の運営に与える影響」について講演をさせていただきました!

会場には50人を超える参加者に方にお越し頂きまして感謝しかございません。

今回の講演では次の点について特に解説をいたしました。

1)老人保健施設の改革は大成功しているため、さらに老人保健施設の改革は加速する
2)ターミナルの受け入れ、所定疾患施設療養費対象疾患の拡大など重症者受け入れの促進
3)超強化型老健の施設運営は入居者確保のマーケティングがカギ
4)在宅復帰の取り組みは家族コミットメントを得るための家族支援である
5)老人保健施設の6割は赤字、黒字転換するには在宅強化型以上&高稼働率がカギ(図1)

図1 老人保健施設の6割は赤字である

2012年に老人保健施設に在宅復帰要件が明確に定められ、在宅復帰に取り組む老人保健施設が介護報酬において優遇されるようになりました。

2024年現在、超強化型老健の算定率は30%を超え、老人保健施設の役割は大きな変容を遂げたと言えます。

今後は、在宅復帰に取り組んでいないその他老健、基本型老健の取り扱いが焦点となります。

平成30年の介護保険法改正において「介護老人保健施設の役割は在宅復帰・在宅療養支援である」と改めて定義しています。

国はその他老健、基本型老健は老人保健施設の役割を果たしていないと考えており、さらなる介護報酬の締め付けを強化すると予想されます。

2024年度介護報酬改定において老人保健施設は在宅復帰機能のみならず、看取り機能、重度者ショートステイ機能を強化しています。

また、介護老人保健施設の開設許可があった場合は、訪問リハビリテーション事業所の指定があったものとみなされるようになりました。

つまり、老人保健施設は、在宅復帰の回復期機能、ターミナルケアの終末期対応、訪問リハビリテーションによる在宅療養支援機能を求められる時代なっており、まさに大規模多機能施設に変容しようとしています。

このように老人保健施設の経営環境は大きく変わっていますので、老人保健施設は経営環境に対する適応が必要となってきます。

経営環境に対する適応で、もっとも大切なものはマネジメントです。

旧態依然としたマネジメントでは老人保健施設の改革は困難です。

老人保健施設の改革に残された時間はまったなしです。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

2024年度診療報酬改定 目玉だった地域包括医療病棟はなぜ苦戦しているのか?

2024年度診療報酬改定にて10年ぶりに新病棟が新設された。

軽度急性期として新しいジャンルの確立を目指して設立された地域包括医療病棟。

口腔・栄養・リハビリテーションを標準化し、365日リハビリテーションを実施する画期的な病棟である

2040年までに高齢者が増加することにより、軽度急性期症状を有する高齢者が激増する。

しかし、軽度者が一様に一般急性期に入院することになれば、一般急性期はパンクする。

また、一般急性期はリハビリテーションの機能が高くないことから、入院した軽度者のADLの回復は乏しく、要介護状態がより進んでしまうリスクがある。

このような課題を解決するために、地域包括医療病棟は新設された。

この病棟は入院基本料も高く、疾患別リハビリテーションや看護補助体制の加算などにより日当点も5000点から6000点の範囲となり、非常に収入が高い。

しかし、2024年10月現在、地域包括医療病棟への参入する医療機関が少なく、新病棟の存在意義が早くも揺らいでいる。

地域包括医療病棟への参入が厳しい理由は、病棟要件に原因があるとされている。

地域包括医療病棟の重症度、医療・看護必要度の要件は以下の通りとなっている。

①既存の入院患者ではA項目2点以上かつB項目3点以上、A項目3点以上、C項目1点以上のいずれかに該当する患者が15%以上(看護必要度I)
②新規入院患者で入棟時B項目3点以上の患者割合が50%

特に、A項目やC項目は整形外科などの手術症例を多く受け入れている医療機関は満たしやすいが、内科系を中心とした医療機関には厳しい。

そもそも、地域包括医療病棟は尿路感染症、誤嚥性肺炎、呼吸器感染症、熱中症、低栄養などの内科系疾患の軽度急性期を受け入れる役割を求めているが、それらの症例にそぐわない重症度、医療・看護必要度が厳しすぎるという矛盾を抱えている。

また、入院時と比較して退院・転棟時にADLが低下した患者の割合が、直近1年で5%未満」の要件も内科系を中心とする医療機関には厳しいものである。

整形外科の手術患者が多い医療機関では入院後から退院までに右肩上がりにADLは回復するが、内科系では廃用症候群の回復に時間かがかかりADLが低下する症例も多い。

逆に言えば、整形外科の救急が多い医療機関であれば地域包括医療病棟への転換は検討の余地があると言える。

一点、留意しなければならないのは、地域包括医療病棟は平均在院日数が21日であるために、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟と比較して病床の回転率が高いことである。

そのため、高齢者数の増加が高止まりの地域や、他の医療機関が地域包括医療病棟へ転換するなどの環境変化により地域包括医療病棟の稼働率が低下する可能性がある。

また、平均在院日数21日以内を達成するためには、退院調整や退院後の後方連携のマネジメントが重要となる。

訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどの退院後の生活をフォローする介護保険事業所との連携は今以上に図る必要があるだろう。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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