PT・OTの過剰供給が進む時代ではプロティアン・キャリアが益々重要となる

「プロティアン・キャリア」
環境の変化に応じて自分自身も変化させていく、柔軟なキャリア形成を示す。

「プロティアン(Protean)」はギリシア神話に出てくる、思いのままに姿を変えられる神プロテウスを指し、「変幻自在な」「多方面の」と訳される。

アメリカの心理学者ダグラス・ホールによって提唱されたキャリア理論である。

「変幻自在なキャリア」と言われても、ピンとこない人も多いだろう。

簡単に、プロティアンキャリアを説明すれば、「キャリア形成を企業に依存させずに、キャリア形成を自分事と捉え、自らキャリアを育てていくこと」と言える。

日本における戦後から続くキャリア形成の特徴は、「個人のキャリア形成を企業に依存させること」である。

これは一つの企業に長期間勤めることを前提にしていたため、企業側から提供される仕事の役割や人事配置などの重要性が高いため生じた現象である。

しかし、2000年以降の経済情勢、自然災害、新興感染症、国際情勢、少子高齢化などにより企業寿命が短命化しており、終身雇用が約束される状況ではなくなっている。

そのため、「一つの企業に長期間勤める」という前提が完全に崩れている。

さらに、日本人の長寿化も進んでおり、人生を80年以上全うする人も増えている。

そのため、定年退職後の人生が20年以上もあるため、定年後のキャリア形成の重要性が高まっている。

以上のようなことから、キャリア形成を企業に依存させずに、キャリア形成を自分事と捉え、自らキャリアを育てていくプロティアンキャリアが注目されている。

理学療法士・作業療法士の業界においてもプロティアンキャリアの重要性は益々高まっている。

診療報酬・介護報酬による急激な政策誘導
ロボットテクノロジーやAIなどの技術浸透
新型コロナウイルスなどの新興感染症
理学療法士・作業療法士の過剰供給
などにより理学療法士・作業療法士の雇用環境や市場における競争環境は2000年当初より厳しくなっている。

そのため、環境変化に強い生き方・働き方が理学療法士・作業療法士に求められている。

決して、勘違いしてはならないのは、「転職を繰り返すこと」がプロティアンキャリアではないと言うことである。

プロティアンキャリアを実践するカギは、「環境適応のための準備行動」である。

具体的な準備行動として
①専門性かつ多分野にまたがる知識・技術を習得しておくこと
②ネットワークの質と量を高めるためオンライン・オフライン問わず人脈を広げる
③お金に関する知識(資産把握・資産形成等)を学ぶこと
が挙げられる。

プロティアンキャリアを難しく考える必要なく、「今までやってきたことがない分野」に挑戦をしていくことがプロティアンキャリアの第一歩である。

理学療法士・作業療法士の皆さんの中には、数年以上同じ環境で、毎日同じような病態や状態の利用者さんにリハビリテーションを提供したり、同じような仲間と過ごしている人がいるのではないだろうか?

長年、同じ組織・環境で仕事していると新しい知識や技術を学ぶ機会が少なくなりやすい。

新しい知識や技術が蓄積されなければ、新しい分野への転身や非定型的な状況への対処が難しくなる。

そのため、環境変化への対応が難しくなり、結果的に「今と同じ状況」にいることを選択することになる。

「今と同じ状況」にいるのみを選択肢にしてしまうと、「組織の評価」に一喜一憂することになり、自分の仕事や人生を自分でハンドリングすることが難しくなる。

理学療法士・作業療法士がキャリア形成を自分事として捉え、今の環境や立場にこだわることなく、自分自身の成長や環境変化への適応を目的としたキャリアの視点を持つことが、今後の理学療法士・作業療法士の過剰供給時代を乗り切る秘訣である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授