介護支援専門員×セラピストの有用性

介護支援専門員(以下、ケアマネ)の資格をもつ理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は増加している。

各協会もケアマネの資格を取得することを推進しており、今後のダブルライセンス者は増える模様だ。 しかし、実際にケアマネとして働くセラピストは少ない。

セラピストがケアマネとして働くことを選択しない理由として次のようなものが考えられる。

1)ケアマネとして働くと、現状より給与が下がる可能性がある。

2)ケアマネに専念すると臨床ができなくなり、リハビリテーション技術が低下するという不安がある。

3)ケアマネは介護職出身の方が多く、セラピストが一緒に働くとぶつかる可能性がある。

4)介護保険の知識を勉強したかっただけで、そもそもケアマネとして働くつもりがない。

ケアマネの資格を取得しても、ケアマネとして働くことをしなければケアマネの資格を十分に活かせていないという意見も多い。

しかし、上記した1)から4)の理由は一定の合理性もあり、セラピストがケアマネとして働くことにハードルが存在するのも事実である。

では、1)から4)の課題をどのようにして解決すればよいだろうか? 1)から3)の理由に関しては、勤め先の組織のマネジメントにより解決できる可能性は高い。

ダブルライセンスの評価、セラピストとしての勤務時間確保、他職種ケアマネとの連携などを、組織ぐるみで取り組めば1)から3)の問題は解決できる。

しかし、組織がこの問題に取り組まない場合は、セラピストがケアマネとして働くことは困難である。

また、4)の理由に関しては、セラピストの考え方次第で解決できる。

ケアマネの資格を取っただけで、セラピストとしての仕事の質が向上すると考えるのは禁物である。

ケアマネの資格によって、得た知識をどのように業務に活用していくのか?と言う視点がなければ、ケアマネの資格は活きることはない。

すなわち、キャリアデザインが必要である。 167356 ケアマネの資格取得により得られる知識としては、「介護支援分野」「保健医療分野」「福祉サービス分野」などがある。

80%以上のセラピストが医療機関に勤めている現状から、多くのセラピストには「介護支援分野」「福祉サービス分野」に関する知識は乏しいと言える。

よって、それらの知識を生かすことで、セラピストとしてのキャリアは変化する可能性がある。

もちろん、ケアマネとして働くことができれば、セラピストの視点を活かしたケアプランの作成や医療や介護の連携ができるかもしれない。

しかし、ケアマネとして働くことを選択しなくても、キャリアデザインによっては、これからの地域包括ケアシステムが推進される時代においては活躍できる可能性が高い。

近年の診療報酬改定、介護報酬改定により退院支援会議、サービス担当者会議、リハビリテーション会議などの介護支援や福祉サービスの知識が必要とされる会議がどんどん増えている。

また、医療機関や介護事業所の管理職になれば、医療・介護・福祉の知識は組織マネジメントに相当役立つことが多い。

「知行合一」という言葉がある。

「知っていることは、使わなければ、知らないことと同じ」と言う意味である。

ケアマネの知識は、これからの時代に有用であることは間違いない。

しかし、使わなければケアマネの知識を知らないことと同じである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

解決力を持つエキスパートになることは、計り知れないアドバンテージをPT・OT・STに与えてくれる

これからの時代において、長期間に渡り、PT・OT・STが活躍していくためには、「特定の分野のエキスパート」になることが重要である。

医療・介護・リハビリテーションを取り巻く環境変化が激しい時代においては、「個別リハビリテーションが出来る」・「一日18単位取得できる」・「訪問リハビリテーションができる」などの作業レベルの価値提供では、まったく、話にならない。

社内で大きな課題が生まれた時、地域で新しい挑戦を始める時、質の高いサービスを開発したい時に、経営者や上司が真っ先に頼ってくる人材になっておくことが、PT・OT・STの明るい未来に繋がる。

全てのPT・OT・STが、「特定の分野のエキスパートになる」ことを意識していない。

むしろ、そのような意識を持っている人は少数派である。

よって「特定の分野のエキスパートになる」こと達成することができれば、大勢のセラピストより、圧倒的に目立つことができる。

特定の分野のエキスパートになるということは、マニアックな知識を詰め込むということではない。

何かを解決することができる具体的な方策を有していると言うことである。

解決力という目立つパワーを有するエキスパートには、常に付加価値が高い仕事が訪れる。

当然、付加価値の高い仕事に対応することができれば、経済的なメリットを得られる可能性も高い。

また、付加価値の高い仕事をしていたという履歴は、エンプロイアビリティを著しく高めることになる。

解決力を持つエキスパートになることは、計り知れないアドバンテージをPT・OT・STに与えてくれる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
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リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

権限を与えずに責任を取らせる経営者や管理者はマネジメントのド素人

医療機関や介護事業所は一般企業と異なりマネジメントの作用が乏しい。

そのため、役割分担が曖昧となっている組織も多い。

また、院長や事務長などの経営層は経費削減の理由から、できるだけ多くの役割を特定の個人に依頼する傾向がある。

その方が、役職手当を削減できるからである。

しかし、このやり方には相当な問題がある(図1)。


(図1)無断転載禁止

組織設計の原則の一つに権限責任一致の原則というものがある。

役割に与えられる権限の大きさは、責任と同じ量でなくてはいけないというものである。

図の事例の漫画では、OT部門を統括する権限がないのに、OTの人材育成という責任が生じている。

つまり、権限<責任という状況である。

責任を果たすために十分な権限がないため、取り組む前から「あきらめ」が生まれる可能性が高い。

また、権限がない状況でOT部門にPTが介入するとOTからの反発が当然予想される。

そのため、PTとOT双方に不満が生じ、従業員満足度も著しく低下するだろう。

「権限も与えずに責任を持て」という発言は、組織設計を全く知らないマネジメントのド素人である。

権限を持っていない人に責任を負わせる行為は、上司の自己満足であり、担当者のやる気を軽視するという悪魔の所業である。

したがって、権限と責任を一致させるというのは大切なことである。

あなたの職場はいかがでしょうか?

権限と責任が一致しているでしょうか?

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
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リハビリテーション部門コンサルタント
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理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
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修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

イラスト提供
福山真樹

理学療法士×イラストレーター
医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
問い合わせ先
Facebook https://www.facebook.com/Masaki.Fukuyama.PT
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PT・OT・STが知っておきたい老化現象と喪失体験

老化には二種類ある。

生理的老化
すべての人に不可逆的に生じる老化

病的老化
疾患により生理的老化が著しく進む老化 老化により、活動性が低下し、その後に生活機能が低下していくことが一般的である。

一方で、認知機能の低下や喪失体験などから精神機能の低下も著明となる。

喪失体験とは
体力や心身機能の低下などによる心身の健康の喪失
子どもの自立や定年、退職、引退、配偶者や友人との死別などによる家族や社会とのつながりの喪失
定年、退職、引退などによる経済的自立の喪失
社会的地位や役割などを終えたり失うことによる生きる目的の喪失
がある。 138009 ただし、上記した老化現象や喪失体験は、個人差が大きく、生活習慣や個人の生理的特徴により大きく個人間で異なる。

また、老化現象は運動や食事によって大きく変わることから、特に病的老化は予防することが可能である。

人間にとって、老化は避けられないものだが、健康寿命の延伸やQOLの維持・向上を視点を持つことで、老年期の状況は大きく変化する。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、今後、予防領域に携わることは間違いない。

老化について積極的に学ぶことは、予防領域で活躍するために最低限の必要なことである。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

PT・OT・STのニーズを広げる視点

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の職域拡大は重要な課題である。

有資格者がどんどん増えていく未来に向けて、理学療法・作業療法・言語聴覚療法の提供先の顧客や分野を増やしていくことは喫緊の課題となっている。

リハビリテーションは、人が生活をするうえで困っていることに対して支援ができるツールである。

したがって、生活支援のニーズを明らかにしていくことが、職域拡大には有効と言える。

ニーズが明らかにならないパターンは大きく2つのパターンに分けられる。

一つ目が社会的抑圧

二つ目が個人的・家族的抑圧 である

1)社会的圧力が原因となりニーズが顕在化しないケース
・社会に生活支援サービスが十分に認識されていない
・保健・医療・福祉などの専門職間の情報交換が不十分となり、他の分野へのサービスの紹介が行われない
・サービスの供給量が少なすぎて、利用することをためらう心理的な規制

2)個人的・家族的抑圧が原因となりニーズが顕在化しないケース
・ニーズが自覚されているが、個人的あるいは家族の確執などが理由でニーズを表現できない
・家族や個人がニーズを自覚していない

リハビリテーションサービスは今のところ、ほとんどが医療保険・介護保険を用いた保険内サービスである。

その保険内サービスであっても、リハビリテーションの介入が不十分であるケースは多くみられる。

未だに理学療法・作業療法・言語聴覚療法が適切な人に、適正なタイミングで、適切な量が提供されることは難しい。 1100 ましてや、保険外サービスはまだまだ市民権を得ておらず、日本では根付いていない。

しかし、社会的抑圧が改善すれば、個人的・家族的抑圧にも変化が生じ、保険外サービスが社会において一般的なものになっていく可能性は高い。

保険内・保険外で職域拡大に取り組んでいる理学療法士・作業療法士・言語聴覚士もまだ少なく、いたとしてもメディアに取り上げられることも少ない。

まさに、これが社会的抑圧である。

社会的な抑圧を改善していくことから、リハビリテーションの職域拡大は始まる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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