リハビリテーションと健康増進のボーダレス化が進む

日本は世界一の高齢社会を迎えるに当たり戦略的に医療政策を進めてきた。

特に急性期医療・回復期医療・慢性期医療のハード面、ソフト面両面の整備には余念がない。

高度急性期病棟の創設
回復期リハビリテーション病棟のリハ対象疾患の厳格化
多重疾患や退院調整に対応する地域包括ケア病棟の設置
訪問看護ステーションの推進による在宅医療提供体制の強化
が近年の医療政策の中で進められてきた。

そんな中、安倍政権においては人口減少社会が大きくクローズアップされ、現役世代の労働力の確保や65歳以上の人の労働への従事推進の政策が進んでいる。

そのためには労働者の身体的、精神的な不調を予防し、健康な状態を維持しながら労働への参加が可能な労働人口を確保することが必要不可欠である。

現在、健康状態を悪化させ、十分な労働力を提供できない人が増加している。

このような現象をプレゼンティーズムと呼ぶが、プレゼンティーズムによる労働力の損失は企業にとって大きな問題となっている。

鬱を代表とする精神面の不調、腰痛、肩こり、膝痛などの身体的不調、そしてそれらの症状を放置したことによる長期的な心身の不調をどのように予防していくのか。

また、65歳の労働者に対しては健康増進プログラムを準備することが、高齢労働者への労働へのインセンティブにもなるだろう。

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現在、日本における健康増進は民間のスポーツクラブ、健康食品産業などがその中心を担っているが、対象としている顧客も高齢化が進んでいる。

また、労働を継続するための健康維持にはリハビリテーションの視点による予防医学的介入も必要となってくる。

健康増進分野の人材が予防分野を牛耳るか?
リハビリテーション医療分野の人材が予防分野を牛耳るか?
それともバウンダレスキャリアを有するリハビリテーション医療及び健康増進分野の人材が両ジャンルを牛耳るか?

共存共栄という美しい言葉では、片づけられない市場の争奪戦が始まっている。

 

 

医療・介護従事者はマーケットに身を投じろ

医療や介護の情勢は刻々と変わる。

高齢者が増加する2030年までは医療・介護従事者は規制緩和により量産化される。

必要な数の医療・介護従事者は、最低限の生活が出来る水準の給与を得ながら労働力として、国によって確保されていく。

しかし、物価高、消費増税などの影響から生活が徐々に厳しくなるのは明白である。

家族を養う、家を買う、車を買う、親の介護費用、子供の教育費用の捻出等を考えると到底、国の設定する給与水準ではやっていけない。

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そのため、給料を上げるという行為を能動的に行う必要性が高まっている。

給料を上げるためにまず優先的に決定をしなければならないことがある。

それは社会が求める能力を高めるか?
自身の所属する会社が求める能力を高めるか?
について選択しなければならないということである。

要するに、セルフマーケティングである。

社会や会社が求める能力はどちらも10年後の状況を十分に予想し、その上で自身の能力を磨いていく必要がる。

社会が求める能力はマクロ的に考える必要がある。

時には国外のみならず、国外の医療・介護や社会情勢にも目を向ける必要もある。

また、医療・介護制度の未来を予測した活動が必要であるため常に周りからは好奇の目にさらされるかもしれない。

会社が求める能力はミクロ的に考えなければならない。

オーナーや会社の考えや10年以上先の会社存続の可能性、各部署のパワーバランス、そして事業展開に求められる能力の棚卸をしなければならない。

この場合、自身の会社に今後も継続して勤務をするという覚悟が求められる。

今や医師、弁護士、聖職者の三大プロフェッショナルも給料の増加に苦慮する時代である。

三大プロフェッショナルでさえも国は守ってくれない。

医療・介護従事者はまさに自分自身をマーケットという渦中に身を投じる覚悟が必要である。

それは技術的なことではなく、マインドの問題である。

今、各医療従事者には意志が必要である。

意思の「意」の意味は想うことである。

即ち意思とは「志を想う」ことである。

志を想い続けない医療・介護従事者には金銭的には明るい未来は来ないと断言する。

まさにワークシフトが求められている。

 

給料は上がるんじゃない、自分で上げるんだよ

医療・介護職の中でも、セラピスト、介護士、事務方の給料はとりわけ低い。

現状は手取り15万~30万円の人がほとんどではないだろうか?

給料は誰が上げるのか?
それは国か?
院長か?
施設長か?
行政か?

ちがう、自分だ。

自分で給料を上げるんだ。

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小学校、中学校の時に野球やサッカー、武道でレギュラーメンバーに選ばれるのはどうした?

何の努力もなしに選ばれたか?

何の努力もせずになれた人は親のコネを使える特別な奴だけ!

レギュラーになるために、チームが求めるポジションを分析し、そのポジションに必要な心技体を磨いたろ?

なんで、介護福祉士やヘルパー、理学療法士、作業療法士になったとたんに、給料が上がらないと愚痴を言うのだ?

給料は上がらないのではなく、上げるものなんだよ!!!!

 

2025年問題のカギを握るハイブリッド医療・介護従事者

2025年までの診療報酬・介護報酬改定のトレンドは間違いなく在宅復帰・在宅シフトである。

在宅復帰後の生活を困難にする要因は、病状の急変と急激なADLの低下に起因する家族介護負担増加である。

すなわち、在宅復帰後においては病状およびADLの維持・向上に関して全力の対応が必要である。

回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟では医師、看護師、セラピスト、薬剤師、管理栄養士、臨床心理士などの多職種が同一のエリアで仕事をしており、物理的にも心理的にも職員間の距離が近い。

そのため、情報の入手やナレッジの共有がしやすく、個別ケア、リハビリテーションのプログラムの立案が多くの情報や知識に基づき得られやすい。

そのため、精度の高い個別ケア、リハビリテーションが提供されやすい。

しかしながら、在宅医療や介護のサービスにおいては大きな問題が存在する。

1.リアルタイムの情報が得られにくい仕事環境である点
2.他事業所の主治医、看護師、セラピストが担当患者にかかわっている点
3.ケアやリハビリテーションに関して共通の理念を有していない事業所間においてサービスを行っている点
4.そもそも急性期、回復期リハ病棟から十分な情報が得られにくい点などがあり、個別ケア、リハビリテーションの立案が阻害されやすい

2025年に向けて大多数の患者は在宅で生活し、状況が悪化した場合のみ病院や診療所を利用する仕組みの構築が現在進行している。

しかし、在宅生活を支える在宅医療を取り巻く状況はハード面だけでなく、ソフト面の開発も遅れていると言わざる得ない。

病院や介護施設においてもチーム医療・介護は大きな課題であり、ましては物理的、心理的な距離も離れている在宅医療においてチーム医療・介護をするのはより一層難しい。

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この問題を解決する一つの方法がある。

それは「自分の専門性を確立した上で少しでも他職種、領域の知識・技術を有すること」である。

すなわち、ハイブリッド型医療・介護従事者の育成であり、投資である。

そうすることで、チーム医療やチーム介護に生じる時間的コスト・心理的コスト・経営努力などが削減でき、チーム医療・介護の発展に寄与する。

ここで一点重要なのは「専門性の確立が前提としたうえでのハイブリッド医療・介護人」であるという点である。

自身の専門性が確立していない場合に多領域の知識を有していても、自身の専門性と多領域の知識や技術を有機的に結合させることができず結局、十分なサービスのアウトプットができない可能性が高い。

脳卒中リハビリテーションを得意とするセラピストが薬剤の知識を活かすことができれば、脳卒中の症状と薬剤の副作用(たとえば向精神薬などの動悸や高揚感)などを判別するができ、リスク管理が可能となる。

ポジティブに診療報酬・介護報酬の改定を考えると、医療・介護従事者のキャリアには無限大の可能性がある時代になったとも言える。

 

 

 

 

 

これからの医療・介護従事者に必要な社会課題解決の視点

現在の医療・介護従事者の仕事内容は、法律で定められた資格の業務範囲で定められる。

つまり、整形外科医師なら整形外科の診断と治療、作業療法士なら作業療法、看護師なら看護ケア、薬剤師なら調剤や薬の監査などである。

医療・介護従事者や組織も法律による縛りにより、資格が定めた範囲以外の業務は行うことを想定していない。

先般、神奈川県で開催されたとあるリハビリテーション学会に参加したところ、以前と比較して企業ブースや演題発表の内容が変質していた。

10年前にはなかったコンセプトの医療機器や福祉機器、演題発表が数多く存在していた。
特に演題内容は地域連携、看護連携、介護士連携、教育の在り方、職域拡大、摂食嚥下、福祉機器、ロボットなどが多かった。
しかし、一方で脳科学、細胞学、神経生理学などのより深い医学モデルの内容も盛んに発表されている。

学会発表や研究開発はすべて社会問題の解決、国民の幸せにつながらなければならない。
つまり、学会発表や研究開発の分野が幅広くなろうと、医学モデルの深いものになろうとも、それが社会課題の解決、国民の生活に役に立つのかどうか重要である。
医療従事者や研究者の自己満足での発表であればその発表は決して社会課題の解決には結びつかない。

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「社会課題を解決する」活動は2025年以降の仕事の在り方として常識になると言われている。

今の医療・介護従事者は社会問題の解決に向けた仕事しているのか?

例えば、何度も自宅で転倒や肺炎を再発し、入退院を繰り返す老人がいる。

これに対して入院中に抗生剤の投与と座位保持獲得のリハビリテーションという部分最適のみのアプローチがどれほど意味があるのだろうか?

このような事例に対してどう対応をするべきか?

社会課題を考える医療・介護従事者。

これが今後のキーワードだ。