対面セミナー再始動に込めた決意と感謝

2020年4月、株式会社WorkShiftは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、すべての対面セミナーを中止する決断を下しました。

参加者の安全を第一に考えた判断ではありましたが、その代償は小さくありませんでした。

会場として使用していた2会場を閉鎖し、事業全体に甚大な影響を及ぼしました。

経営者として、まさに試練の時期でした。

しかし、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリ専門職の力を社会へ届け続けるという使命を、放棄するわけにはいきませんでした。

すぐにオンラインセミナーへと舵を切り、新しい形で学びを提供する体制を構築しました。

それは挑戦であると同時に、成長の機会でもありました。

この5年間で、数百回におよぶオンラインセミナーを開催し、全国のリハビリ職種の皆さまとつながることができました。

この成果は確かに意義のあるものでした。

しかし、一つの事実から目を背けることができませんでした。

リハビリテーションの本質は「触れること」「感じること」「動かすこと」にあると考えております。

対面でなければ伝えきれない感覚、手の使い方、姿勢の変化、動作の質など、画面越しでは届かない「技術」があります。

それこそが、私がセミナー事業に情熱を注ぐ原点です。

そして今、2025年7月より不退転の決意で、対面セミナーを本格的に再始動することといたしました。

再び現場に立ち、現実と向き合い、技術を、情熱を、魂を直接伝える場を創り出す覚悟でおります。

この挑戦を実現できたのは、私一人の力ではありません。

講師陣、受講生、協力施設、そして過去に弊社のセミナーを信じて参加してくださった皆さまのおかげです。

心より感謝申し上げます。

対面セミナーの再始動は、単なる「復活」ではありません。

これは、リハビリ業界が抱える社会課題を現場で解決するための、再出発です。

教育とは、人と人が向き合う中でしか育たないものだと感じております。

その原点に立ち返る時が来たのです。

私は、これからも講師の先生方と共に「臨床で役立つ」「現場で即使える」技術を、真剣に、誠実に、熱意を込めて伝えてまいります。

これこそが、私が不退転の決意で対面セミナーに挑む理由でございます。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。

在宅支援の深化とリハビリ職種に求められる進化

2024年度の診療報酬・介護報酬の同時改定を契機に、医療・介護政策はより一層「在宅復帰支援」および「在宅生活継続支援」へと重心を移した。

在宅での生活を維持するためには、病状の安定化とADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)の維持・向上が不可欠であり、その担い手としてリハビリ職種への期待がかつてなく高まっている。

従来、リハビリの役割は疼痛緩和や職場復帰支援などが主流であったが、近年は明確に在宅支援へとシフトしている。

入院中には自立した動作が可能であった患者が、在宅に戻るとADLがうまく遂行できないというケースも多い。

その背景には、家庭環境の個別性と、病院での環境とのギャップが存在する。

住宅には玄関、上がり框、浴室、トイレといった構造的制約があり、それぞれの動作には特有の身体能力が求められる。

このような背景において、理学療法士・作業療法士の「動作分析力」および「環境適応力」は極めて有用である。

特に在宅ADLへの対応力は、今後のリハビリテーションの中核的なスキルとなるであろう。

一方で、在宅医療・介護の現場には構造的な課題も多い。

多職種連携の困難さ、リアルタイムの情報共有の制限、他事業所との方針の不一致、急性期からの情報伝達の不備などが、質の高いケア提供を阻害している。

このような状況を打破するためには、各専門職が自らの専門性を確立したうえで、他職種の知識や視点を部分的にでも取り入れる「ハイブリッド型人材」の育成が重要である。

例えば、脳卒中リハに精通した理学療法士が、薬剤の副作用に関する基礎知識を持っていれば、早期に異常を察知し、迅速な対応が可能となる。

このような人材は、チーム内外のコミュニケーションコストを下げ、連携の質を高める存在として重宝される。

今後、地域包括ケアシステムは「医療機関をバックアップとしながら、地域・自宅で生きる」ことを前提に進化を続ける。

しかし、その実現にはハード(制度・設備)だけでなく、ソフト(人材・文化)の整備が欠かせない。

特にリハビリ職種は、その中心的役割を担うべき存在であり、在宅支援に関するスキルと意識のアップデートが求められている。

すなわち、今こそリハビリ職種が在宅生活支援の専門家として再定義されるべき時代が来ている。

在宅ADLの再評価と実践力の強化は、セラピストのキャリアの可能性を広げると同時に、地域社会への貢献を最大化するものである。

今後の医療・介護において、在宅で「生活を支える力」が真に求められる資質であることを忘れてはならない。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。

整形外科クリニックにおけるリハビリテーション科の差別化戦略とは

整形外科クリニックが地域において選ばれ続けるためには、リハビリテーション科の差別化が極めて重要である。

特に高齢化社会の進展に伴い、整形外科に求められる役割は「治療」から「機能回復」へと広がっており、リハビリ部門の質と戦略性がクリニックの競争力を左右する。

第一に取り組むべきは差別化戦略である。

一般的なマッサージや電気治療だけでなく、個別理学療法や姿勢・動作分析に基づく精緻なアプローチを導入することで、地域の他院との差別化が図れる。

また、運動器リハビリテーションにおいては、スポーツ障害や術後ケアに特化したプログラムを用意することで、対象患者層の明確化と集患力の向上が期待できる。

次に求められるのは、技術マネジメントである。

臨床現場における知識と技術は、個人依存になりがちであるが、組織として標準化し、技術の伝承と共有を促すことで、サービス品質の安定化と属人化の回避が実現する。

加えて、スタッフの専門分野への興味や得意分野を把握し、適切な役割配置を行うことも、組織的な成果につながる。

そのためには、継続的な技術への投資が不可欠である。

最新のリハビリ機器の導入や外部セミナー・研修参加への支援は、スタッフのモチベーションを高めるとともに、治療技術のアップデートを可能にする。

また、学びの機会を提供することは、スタッフ定着率の向上にも寄与する。

さらに、差別化を外部に伝えるためには、WEBマーケティングの活用が鍵となる。

クリニックの強みや専門性を明確に打ち出したホームページ、SEOを意識したブログ記事、SNSによる情報発信は、潜在的な患者との接点を増やす効果がある。

とりわけ、症例紹介やリハビリの様子を視覚的に伝える動画コンテンツは、信頼獲得につながる有力な手段である。

最後に、忘れてはならないのがインターナルマーケティングの視点である。

リハビリスタッフが「この職場で働く価値」を感じられるような環境づくりは、質の高いサービスを提供する土台である。

理念の共有、双方向のコミュニケーション、評価制度の透明性といった取り組みは、内なるブランド価値を高め、外部への発信力にもつながる。

整形外科クリニックにおけるリハビリテーション科は、単なる補完的機能ではなく、クリニックのブランドを形づくる中核である。

今後の医療経営においては、戦略的な視点と柔軟な実行力をもって、その価値を最大化していくことが求められる。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
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医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
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リハビリ職種40代・50代からのキャリアチェンジ 新たな可能性を探ろう

40代、50代とキャリアを重ねてきたリハビリ職の皆さん。

これまで築いてきた実績と経験に誇りを持ちながらも、「このままでいいのか?」と心のどこかで不安を感じてはいないだろうか?

リハビリ業界は、技術革新や社会の変化とともに大きく進化している。

患者のニーズも多様化し、従来のリハビリテーションの枠を超えた新たな役割が求められている。

そうした変化の中で、自分のキャリアを見つめ直し、新たな道を模索することは決して遅くはない。

40代・50代のキャリアチェンジは遅すぎない

「この年齢でキャリアチェンジなんて無理では?」そう思うかもしれない。

しかし、実際には40代・50代だからこそ開ける道も多い。

例えば、臨床経験を活かしてリハビリ関連のコンサルタントとして活動する道がある。

現場のリアルな課題を知る者として、企業や施設へのアドバイスは非常に価値がある。

また、教育の分野に進み、後進の指導に携わることもできる。

研修講師や大学・専門学校の講師として活躍することで、自身の知識と経験を次世代に伝える役割を担うことができる。

また、マネジメントの経験があるなら、介護施設や訪問リハビリ事業所の管理職に進む道もある。

施設の運営を担い、チームをまとめる役割は、現場経験があるリハビリ職ならではの強みを発揮できるポジションだ。

地域包括ケアシステムの推進に伴い、地域リハビリテーションのニーズも高まっている。

リハビリ専門職が地域に根ざして活動する機会も増え、多職種連携を通じて新しい価値を生み出すことも可能だ。

キャリアチェンジを成功させるための具体的なステップ

キャリアチェンジには準備が不可欠だ。

やみくもに転職を考えるのではなく、しっかりと戦略を立てることが重要である。

自己分析を行う

自分の強みや得意分野は何か?

どのような働き方をしたいのか?

これまでの経験の中で、他業界でも活かせるスキルは何か?

市場リサーチを行う

どの分野でリハビリ職のスキルが求められているのか?

自分の経験を活かせる職種にはどのようなものがあるのか?

どんな資格やスキルが必要になるのか?

スキルアップとネットワーク構築

必要な資格や知識を習得するために、セミナーや研修に参加する。

すでにその分野で活躍している人と交流し、実際の仕事内容を知る。

キャリアカウンセリングを活用し、自分に合った道を探る。

小さく始める

いきなり転職するのではなく、副業として新しい分野に関わってみる。

ボランティアやプロボノ活動を通じて経験を積み、現場の感覚を掴む。

リハビリ職の新たな可能性とは?

リハビリ職は、単に「治療する人」ではなく、「社会の中で人々の生活を支える専門家」である。

これまで培ってきたスキルは、想像以上に多様な分野で活かすことができる。

コンサルティング・教育

企業向けの健康アドバイザー

研修講師、大学・専門学校の非常勤講師

セミナー運営やオンライン教育事業

マネジメント・経営

介護施設や訪問リハビリ事業の運営管理

自ら起業し、リハビリ関連の事業を展開

地域活動・福祉

地域包括ケアの推進役

自治体やNPOと連携した地域リハビリプログラムの企画

高齢者や障がい者支援活動

リハビリの知識は、医療・福祉・教育・ビジネスの境界を超えて活用できる。

これまでのキャリアを土台に、新たなフィールドで活躍するチャンスは無限に広がっている。

40代・50代からのキャリアチェンジは、不安を伴うものかもしれない。

しかし、これまで積み重ねてきた経験やスキルは決して無駄にはならない。

むしろ、それを活かせる新たなフィールドが待っている。

「もう遅い」と諦めるのではなく、「今だからこそできることがある」と考え、一歩踏み出してみてほしい。

新たな可能性に向かって挑戦することで、充実したキャリアの後半戦を築くことができるだろう。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
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関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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経営者とリハビリ部門管理者の理想的な関係とは? 〜利益と現場のバランスを取るために〜

リハビリ部門の運営において、「利益重視の経営者」と「現場重視の管理者」の間にギャップが生じることは少なくない。

経営者は事業の持続可能性を考え、利益を重視するのに対し、管理者は患者への質の高いサービス提供を最優先とする傾向がある。

この対立が解消されなければ、組織の方向性がぶれ、リハビリ部門の運営がうまくいかなくなる。

では、どのような関係を築けば、リハビリ部門が健全に運営できるのか。


①互いの立場と目的を理解する

経営者と管理者が協力するためには、まず相手の視点を理解することが不可欠である。

  • 経営者の視点
    1.リハビリ部門が利益を生み出さなければ、事業自体が継続できない
    2.適切な経営戦略をとることで、より多くの患者に質の高いリハビリを提供できる
    3.人件費や運営コストを抑えることで、組織全体の安定性が増す

  • 管理者の視点
    1.質の高いリハビリを提供しなければ、患者満足度やリピート率が低下する
    2.スタッフの働きやすさを確保しないと、離職率が上がり、結果的に部門運営が不安定になる
    3.現場の負担が大きくなりすぎると、サービスの質が低下し、長期的に収益にも悪影響が出る

お互いの視点を理解しないまま話し合っても、対立するだけである。

「利益重視」と「現場重視」はどちらかが正しい・間違っているわけではなく、両者のバランスが取れたときに初めて事業が成功すると認識することが重要である。


②共通の目標を設定する

経営者と管理者が協力するには、「利益」と「現場」のバランスを取る明確な目標」を持つことが求められる。

例えば、以下のような目標設定が考えられる。

  • 売上向上 × サービスの質向上の両立
    ✔ 「〇ヶ月後に〇%の利益増加を目指すが、患者満足度も〇点以上を維持する」
    ✔ 「リピート率を〇%向上させることを売上目標の一つとする」

  • コスト削減 × スタッフの負担軽減
    ✔ 「業務の効率化を進めて残業時間を〇時間削減する」
    ✔ 「適切なリソース配分で、1人あたりの負担を軽減しつつ利益を確保する」

このように、経営者と管理者が一緒に目標を作り、それを定期的に見直すことで、お互いの意識のズレを防ぐことができる。


③現場のデータを活用して合理的な意思決定をする

「感情的な対立」ではなく、「データに基づいた合理的な判断」を行うことで、両者の歩み寄りがスムーズになる。

例えば、
業務負担のデータ化:スタッフの稼働率や業務負担を可視化し、過剰な業務負担がある場合は調整する
患者満足度の調査:定期的に患者満足度を数値化し、改善点を明確にする
利益率の分析:リハビリ科の収益性を分析し、単位数を検討する

こうしたデータをもとに経営者と管理者が議論することで、感情論ではなく客観的な視点から判断ができるようになる。


④管理者が経営視点を持ち、経営者が現場を理解する

リハビリ部門が成功するためには、管理者が経営視点を持つことと、経営者が現場を理解することが不可欠である。

管理者の経営視点
1.単なる「現場の代表」ではなく、利益を意識した部門運営を行う
2.コスト管理や収益向上の手段を理解し、経営に貢献する提案をする
3.「質の向上=経営の成功」につながる方法を考える

経営者の現場理解
1.現場を知らずにコスト削減や効率化を求めるのではなく、現場の負担を考慮する
2.短期的な利益だけでなく、長期的な安定運営を意識する
3.スタッフの意見を取り入れ、働きやすい環境づくりに配慮する

このように、お互いが相手の立場を学び、歩み寄ることが重要である。


✅ リハビリ部門の成功のために大切なこと

  1. お互いの立場を理解する
  2. 共通の目標を持つ
  3. データを活用して合理的に判断する
  4. 管理者は経営視点を持ち、経営者は現場を理解する

「経営者と管理者が協力するリハビリ部門」は、利益を確保しながら、質の高いサービスを提供できる理想的な組織となる。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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