アーロン・ベックが確立した認知療法では、「人間の認知が行動や感情に影響を与えている」と考えている。
人間がどのように外界をとらえ、それを意味づけたか?という認知が、行動や感情に影響を与えている。
例
歯科医師になったが思ったより、給料をもらえないという出来事により、落ち込むという感情が生じた場合、「思ったより給料をもらえない」という出来事をどのように捉えているかという信念が落ち込みの感情を生じさせるのである。
このような非論理的な認知を、心理学では認知の歪みと呼ぶ。
認知の歪みには、6つの例があり、「ベーシック・ミステイク」と呼ばれている。
6つのベーシック・ミステイク
1.選択的抽出 文脈の中から一部だけを取り出し、全体の状況は把握せずに判断すること
2.恣意的推論 証拠がない、あるいは正反対の証拠があるにもかかわらず、否定的な結論を出してしまうこと
3.過度の一般化 一部分だけを取り上げて、すべての事柄に当てはめる
4.拡大解釈や過小評価 失敗の拡大解釈、成功の過小評価
5.自己関連付け わずかな情報を自分に関連付ける
6.分極化思考 白か黒か、両極端に考えること
このようなベーシック・ミステイクという非論理的な信念を持っていると、多くの出来事を悲観的に捉え、行動を制限してしまう。
例えば、すこし失敗しただけで「取り返しのつかないものである」と考えてしまったり、人から少し批判されただけで全員から批判されていると感じるなどが挙げられる。
セルフケアや部下の指導においては、ベーシック・ミステイクをしていないかを充分に注意し、もしベーシック・ミステイクに取り付かれている場合は、認知の歪を正していく必要性がある。
ちょっとしたことで落ち込む人、失敗を恐れて何もできない人、他人の目が気になる人はベーシックミステイクに陥っている