回復期リハビリテーション病棟9単位の厳格化が及ぼす影響はデ・カ・イ。

2015年12月2日に中央社会保障医療協議会(中医協)にてリハビリテーションの個別事項に関する協議が行われた。リハビリテーション分野に関して、厳しい意見が多く出たが、とりわけ「回復期リハビリテーション病棟の9単位取得悪用論」が注目された(図1)。

2015年12月2日中医協発表資料図1 2015年 中央社会保険医療協議会資料

一言で言うと、9単位の必要性が疑わしい症例に9単位のリハビリテーションを提供している、9単位と6単位以下のリハビリテーションを比較すると、ADLの変化があまり変わらない病棟も多い・・・。とのことである。よって、次期診療報酬改定では9単位を厳格化し、6単位を基本とするとの議論が進んでいる。

2006年に9単位が緩和された時、脳卒中患者への一日3時間のリハビリテーションが効果的であるとの論文やデータが提示された。回復期リハビリテーション病棟では、ADLの回復をいち早く促すことがリハビリテーション医療の役割であると定められた。
しかし、時は過ぎ、日本経済の低迷、社会保障費の増大、少子化の改善の見込みがない状況が継続し、財源確保の目処が立たなくなると、9単位取得に対する懐疑的な意見ができた。

今回の中医協の議論は、9単位を有効に活用するための制度設計を考えるのではなく、9単位の不要論や悪用論が目立つ。つまり、エビデンスが確保されている治療法であっても、財源の確保や医療の効率性が議論の優先順位として高くなると、その治療法は採用されることはないということである。

今後、回復期リハビリテーション病棟で9単位が認められず、6単位が上限になった場合、急性期や慢性期における取得単位数に大きな影響を及ぼすと考えられる。回復期リハビリテーション病棟は文字通り、最大限の機能回復を図るリハビリテーション医療を提供する病棟である。その病棟が最大6単位ということになると、他の病棟が6単位を標準的に算定できる可能性は低い。

実は、リハビリテーション提供単位の削減に関しては、密かに多くの制度設計がなされている。
急性期病棟にはADL維持向上体制加算というリハビリテーションが包括された加算
慢性期病棟には標準算定日数を超えた人が入院しているため、月13単位の対象者が多い
2014年度からは地域包括ケア病棟が新設され、2単位が標準となっている。

これらの背景を考えると急性期、慢性期において現状認められている6単位が、今後厳格化される可能性は極めて高い。診療報酬で単位数を限定しなくても、レセプトの査定で一律に厳格化するなどの動きが今後は考えられる。つまり、回復期リハビリテーショ病棟の9単位の厳格化は他の病棟におけるリハビリテーション医療の萎縮につながる可能性は高い。

回復期リハビリテーションの9単位をどのように運用していくのかについてリハビリテーション業界は真摯に議論し、9単位の制度を維持する方向性も探るべきである。それが、他の病棟におけるリハビリテーションの萎縮医療を防ぐことになる。