昇進試験や人事考課がないリハビリ部門の弊害 やらされ管理職が多い件

昇進試験
特定の人材が昇格に値するかどうかを見極める試験
面接や適性試験により判定され高い職位に昇進、昇格できるかを決定する

人事考課
従業員の貢献度や業績、能力を評価し、給与、賞与あるいは昇格・昇進に反映させる人事制度

医療機関、介護保険事業所、リハビリテーション部門には昇進試験や人事考課がそもそも存在していない、あるいは存在していても制度が形骸化しており機能していないことが多い。

このような状態の組織では、管理職を育成すること、適切な人物の管理職の抜擢が難しくなり、その結果、管理職に不適切な人物を抜擢することが多い。

昇進試験や人事考課は次のようなメリットを組織にもたらす。

管理業務にモチベーション高い人を選抜しやすい
管理職を希望する人を抽出しやすい
個人の能力を可視化できるため、管理職への適性を判断しやすい

昇進試験や人事考課が機能していない組織では、管理職の選抜や抜擢は、本人の適性やモチベーションなどは考慮されずに、「前任者がいなくなったから、経験年数が長いのあなたがしてください」という消去法的に行われることが圧倒的に多い。

そのため、管理職に抜擢された側は、「やりたくてなった管理職」ではなく、組織の事情により「仕方がなくなった管理職」という感覚、つまり、「やらされ感」が強い状態になる。

「やらされ感」を学術的に解説すると、「オーナーシップ」の低下である。

「オーナーシップ」とは
個人が会社の出来事に対して当事者意識をもって向き合う姿勢であり、使命感に基づいて能動的に仕事に向き合う姿勢
である。

「オーナーシップ」が低下している管理職は「なぜ、管理業務を自分がしないといけないのか?」「会社や組織の課題は自分には関係がない」という感覚をもっているため、管理職としての責任を全うすることはない。

よく、経営者や事務長から「うちのリハビリの管理職はやる気がない」「リハビリ職種は会社のことを考えていない」などの批判を聞くことがあるが、そういう会社に限って昇進試験や人事考課が全く機能していない。

管理職に対してポジティブな態度を取れないセラピストに対して「オーナーシップ」を持たせることは極めて困難である。

よく、経営者が「経営者目線で運営に関わってほしい」「会社のことを思って業務をしてほしい」などを管理職に伝えることがあるが、これは高い「オーナーシップ」を求めており、この要求に応えられる人材は稀有である。

つまり、昇進試験や人事考課を行わずに、抜擢した「オーナーシップが低い」管理職に、「経営者目線で仕事をしてほしい」という「極度のオーナーシップ」を求めるとう矛盾が生じるのである。

「オーナーシップが低い」管理職に「極度のオーナーシップ」を求めることにより、管理職はストレスを感じ、さらに会社に対する「オーナーシップ」を低下させていく。

管理職が育たない組織には未来はなく、管理職の育成こそ組織の成長の源泉である。

消去法的な管理職の選抜から脱却し、昇進試験や人事考課などの未来への投資をぜひ行って頂きたい。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授