稼働率には興味があるが加算算定に関心のない医療・介護の経営者は提供しているサービスの質を軽視している人である

厳しさを増す医療・介護分野において、財務管理は最も重要な経営管理である。

財務管理を行うことで、経営上の課題が見つかり、取り組むべき医療や介護サービスを検討することができる。

経営の目的は利潤を上げることなので、財務を軽視した経営などあり得ない。

しかし、財務管理の視点が「売上=稼働率」という視点という偏った考えをもつ経営者が多い。

確かに、稼働率は医療・介護経営の売り上げに最大のインパクトを与える要素である。

そのため、稼働率にしか関心がない経営者がいるのも理解できる(図1)。


図1 稼働率に興味があるが加算には興味がない経営者

しかし、稼働率は直接的な医療や介護の質を表すものではない。

稼働率には地域の医療・介護資源の過不足、地域連携室の力量、立地条件なども大きな影響を与え、必ずしも医療や介護の質が高いから稼働率が高いと言うものではない

よって、真に質の高い医療や介護を提供したいと考えるならば、医療や介護の質を表現する加算の算定に関心を持つべきである。

質の低い医療や介護を提供して売上を上げているのであれば、それは企業倫理や職業倫理に抵触する可能性がある。

また、加算を算定せず、稼働率重視の売上の文化が増長すると、不正請求や運営基準違反などのコンプライアンス真っ黒な組織に近づいていく可能性もある。

さらに、加算を算定しない場合、近い将来、経営の危機に陥るリスクが高まる。

なぜならば、診療報酬・介護報酬改定における加算は政府が医療や介護に求めるサービスの水準を明示したものである。

そして、加算が新設されてから、4年から6年ほど経過すると、新設された加算は基本報酬に包括化され、加算によるサービスは標準化されてしまう。

つまり、加算算定に取り組まなければ、いずれ基本報酬を算定することすら難しくなる。

加算は医療や介護のサービスの質をアップデートし、経営を安定させる重要な経営管理の対象である。

リハビリテーション部門としては常に新しい加算に関心を持ち、経営者に加算算定の必要性について説明をしてほしい。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授