経営の素人が介護事業でうまくいく時代は終わった

2015年度介護報酬改定から6ヶ月が経過した。マイナス改定の影響が徐々に顕在化しており、筆者の元にも「事業所の閉鎖が決定した」、「買収先を探している」、「親会社からの売り上げ増加命令が日増しに強くなっている」との声が届く。

今後の介護報酬改定でも、より特徴のあるサービスを有機的に提供できる事業所が生き残れる仕組みが導入される。看取り、認知症、中重度者、リハビリテーション、活動と参加へのアプローチなどを、事業所内や地域で統合的に提供できる事業者が生き残る。
これからは、どんどん今まで与えられていた「はしご」が、外される。「はしご」に甘えて参入した経営の素人は、「はしご」に対して過度に依存している。しかし、よく考えてみて欲しい。「はしご」が外されたあとに、かならず「別のはしご」が用意されている。その「別のはしご」に、乗り移れる経営者や事業者はかならず生き残れるようになっているのが、診療報酬改定であり、介護報酬改定である。
「別のはしご」を特定して、そこにアプローチをする能力こそが、マーケティング能力である。

経営の素人は、マーケティング能力が低い。目先の利益だけを考えると、将来の利益について考える時間が圧倒的に少なくなり、遺失利益の機会を被る事になる。
先述した看取り、認知症、中重度者、リハビリテーション、活動と参加に関しては、厚労省管轄の会議、専門誌、新聞にて様々な情報がリークされている。例えば、今後の在宅医療においては、診療が受けられる対象に制限が加わる可能性が指摘されている。もし、それが実現すれば、訪問看護ステーション、訪問リハビリテーションの事業戦略は大きく変わる。また、診療所やデイサービスの戦略も変わってくる。

このように未来に起こる出来事の芽は、すでに現れている。これらの情報を有機的に統合し、どの方向性で進んでいくのかについて、判断し、財務や人材を考慮して、事業方針を決断していくことが、今後の経営者に必要なリーダーシップである。

介護保険制度が始まって15年。多くの事業が政府の整備目標数に追いついてきている。整備目標数に追いついた瞬間、経営の素人は市場から撤退を余儀なくされる。国はサービスを受ける国民は守っても、経営者は守らない。経営の素人は今こそ、経営の玄人になる時である。