経営・運営の基本はトップダウン その先にボトムアップがある

経営・運営は責任ある立場の人の意志によって行われる。
その意志とは理念・ビジョン・志である。
その理念・ビジョン・志を組織というインターフェースを通じて社会において実現することが経営であり、運営である。

従業員満足や従業員の働きやすさが最近の経営論や労働法制では注目されている。
確かに、それらの要素は重要であり、経営や運営において軽視することはできない。

しかし、ここに大きな落とし穴がある。
従業員満足や働きやすさを実現させるために従業員からの意見や要求を集めるボトムアップを行うことで、様々な意見や価値観が顕在化し、その後の経営や運営が難しくなるという負のスパイラルに陥る組織が多い。

本来、組織とは目的を持った集団である。
目的を達成するために集められた人で構成するのが組織である。
従業員も目的を達成するために自らの意思で集っているのが組織である。
つまり、経営者、運営者、従業員は全員同じ目的を持っているのが組織である。

同じ目的を持っている組織のボトムアップは負のスパイラルに落ち込むことはない。
そのような組織のボトムアップでは目的を達成するために必要な意見や提案が下から上がってくる可能性が高い。

しかし、同じ目的を持っていない従業員で構成されている組織でボトムアップを行うとどうなろうだろうか?
組織の目的など気にせずに、自分のやりたいことや価値観について言及する可能性が高い。あるいは、不満を持っている従業員は組織を転覆させてやろうと思う人もいるかも知れない。

理念やビジョンは組織にとって、最重要の経営資源である。
この経営資源を生かすも殺すも、経営者、管理者からの情熱的なトップダウンである。
情熱的なトップダウンに共感してくれる仲間を一人も多く採用し、育てていくことこそ、組織の本質である。
トップダウン経営か?ボトムアップ経営か?という質問は愚問である。
なぜならば、「トップダウン&ボトムアップ」でなければ、健全に経営や運営はできないからだ。

介護報酬、診療報酬改定という時代の変化が定期的に訪れる医療・介護業界において、ボトムアップのみの経営や運営は成り立たない。

今こそ、「トップダウン&ボトムアップ」を意識する時である。