成果主義が強すぎる医療機関・介護事業所の課題とは?

近年、診療報酬・介護報酬改定にてアウトカム志向が強くなったことや、経営不振の医療機関や介護事業所が増えたため、成果主義を導入するケースが増えている。

成果に応じた評価や報酬制度は、スタッフのモチベーション向上や業務効率化に貢献する一方で、成果主義が過度に強調されると、現場にさまざまな課題をもたらす可能性がありある。

成果主義が強すぎると次のような問題点が生じやすい。

1. 患者・利用者本位のケアが後回しになる
医療や介護の現場では、患者や利用者の満足度が最も重要ですが、成果主義が強くなると、数値目標の達成が優先され、適切なケアが後回しになる危険がある。
例えば、医療機関であれば診療回数や手術件数の増加を求められ、必要以上の治療が行われるリスクがありある。介護事業所では、利用者の満足よりも契約数や稼働率が重視されるケースもある。
実際に、成果主義が原因となる不正請求も頻発しており、地方厚生局の摘発が相次いでいます。

2. チームワークの低下
医療や介護はチームでの連携が欠かせない。
しかし、個人の成果を重視するあまり、職員間の協力が薄れ、情報共有が不十分になる可能性がある。
特に介護現場では、多職種が連携しながらケアプランを立てる必要があるため、成果主義が強すぎるとチームワークが崩れ、結果的に利用者へのサービスの質が低下する。

3. メンタルヘルスへの悪影響
厳しいノルマや数値目標の達成が求められると、現場のスタッフに大きなストレスがかかる。
疾患別リハビリでは一日18単位以上のノルマが課せられていることが多い。
毎日18単以上を算定すると、カンファレンス、家屋評価、多職種連携などの時間が確保できない。
このような環境で働くとリハビリ職員のモチベーションが低下する可能性が高い。

4. 長期的な視点の欠如
医療や介護は、単なる数値目標では測れない「質の高いケア」が求められる分野である。
しかし、成果主義が強くなると、短期的な業績ばかりが評価され、長期的な視点での改善が後回しになる。
例えば、職員の教育やスキルアップの機会が削られ、結果的に組織全体の成長が阻害されるリスクがある。

確かに、成果主義は適切に導入すれば、医療機関や介護事業所の効率化やサービス向上が図れるかもしれない。

しかし、過度な成果主義は、患者・利用者本位のケアの低下、チームワークの崩壊、スタッフの負担増加、長期的な視点の欠如といった問題を引き起こす可能性があり、現場の実情を考慮しながら、バランスの取れた評価制度を導入が望まれる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授