リハビリテーションマネジメント加算Ⅱの算定は精神論だけでどうにかなるものではない

2017年3月13日 介護給付分科会にて「通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション等の中重度者等へのリハビリテーション内容等の実態把握調査事業(結果概要)案」が発表された。

この調査は、2015年度介護報酬改定で導入された通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算Ⅱ、生活行為向上リハビリテーション実施加算、社会参加支援加算と訪問看護ステーションにおけるリハビリテーションの実態を調査するために行われた。

詳細は
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000154605.pdf
をよりダウンロードしてご確認をいただきたい。

本ブログでは、通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算Ⅱの実態について言及したい(下図)。

リハビリテーションマネジメント加算Ⅱの届け出をしている事業所は全体の37%前後となっている。

届け出をしていない事業所が6割ほどある訳だが、その理由は次の通りである。

医師のリハ会議への参加が困難 65.6%
医師からの説明時間が確保できない 60.8%

また、届け出をしている事業所で算定していない利用者がいる場合の理由は次の通りである。

利用者の経済的な負担が大きくなる 56.5%
本人・家族が意義・必要性を理解できない/毎月のリハ会議が負担である 46.1%

つまり、リハビリテーションマネジメント加算Ⅱの算定が難しい理由は
医師が業務に関与できない
利用者の理解が得られない
というものである。

しかし、これはある意味「嘘」である。

医師の業務も利用者の理解もすべてマネジメントの問題である。

何かができないという現象の裏には、真の原因がある。

医師が業務に関与できないのは、「医師が関与できるような理念や人員体制が欠落している」からであり、利用者の理解が得られないのは「顧客のターゲッティングのミス」である。

世間には、リハビリテーションマネジメント加算Ⅱを算定できないのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の情熱が乏しいからだ!ICFを理解していないからだ!心身機能ばかり見ているからだ!と声高に叫ぶ業界人が多いが、私は全くそうは思わない。

なぜならば、医療・介護業界において、施設基準が取得できなかったり、加算が算定できない理由は、人材不足、人員不足、顧客ターゲッティングや技術力の不備、理念の欠落が殆どであり、その責任は医療機関であれば理事長、院長、事務長、介護事業所では経営者や運営者にあることが殆どである。

リハビリテーションマネジメント加算Ⅱや生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定が難しい現状は、回復期リハビリテーション病棟創成期と非常に似ている。

回復期リハビリテーション病棟の創成期においても
医師のリハビリテーションへの関与
カンファレンスや患者家族への説明
家屋評価
多職種連携
などに大きな課題があった。

その大きな課題を乗り越えた施設は一様に、「理念、人事体制、教育体制、顧客マーケティング」というマネジメントのハンドリングができた医療機関である。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の努力や思いが足りないという精神論に終始しても、経営や運営は変わらない。

マネジメントを第一優先に考えることが今後の通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションの役割を強化し、さらに経営を安定させることにつながる。

 

地域包括ケアシステムは後発優位性を高めている

地域包括ケアシステムの概念を用いたヘルスケアシステムの改革は、急速に進行している。

特に、地域包括ケアシステムの概念が政策として明確に打ち出された2010年以降、
診療報酬改定
介護報酬改定
医療計画
介護保険事業計画
などの政策は2000年から2010年の間に行われた政策と比較して、遥かにハードルの高い内容となっている。

筆者は、リハビリテーション事業のコンサルタントを専門としているが、最近、ある一つのことに気づいた。

それは、2010年以降に開業した介護事業所のほうが、2010年以前に開業した介護事業所よりも経営や運営が安定している傾向があるということだ。

2000年当初より介護保険事業に参入した介護事業所は、介護報酬が緩かった時代に参入しており、また、地域に競合企業も少なく、ブルーオーシャンな状況で事業運営が可能であった。

しかし、2010年以降の政策により、介護事業所を取り巻く環境は激変している。

軽度者の介護報酬低下
基本報酬の低額化
重症対応・看取り対応などの加算要件が増加
行政処分の増加
ライバル事業所の増加
などの環境変化が起こり、その環境への適応が大きく遅れている事業所が多い。

しかし、2010年以降に開業した介護事業所は、開業した瞬間より地域包括ケアシステムの荒波に遭遇している。

つまり、彼らにとっては、加算要件を取得することや、看取りなどの特定の領域に力を入れることや、人材教育を行うことなどが最初から当たり前のことである。

つまり、後発優位性が発揮されていると言える。

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ビジネスは先発優位性と後発優勢がある。

先発優位とは、新しい市場に早期参入することで持つことができる優位性のことでメリットとしては、次のようなものがある。

発企業は最も有利なポジションへと自社の製品を位置づける
もっともうまみのある市場を獲得する
市場における製品価格を決定する
質の高い商品やサービスを生み出すことで参入障壁を高くする

しかし、果たして市場に早期に参入した介護事業所は参入障壁を築くことができただろうか?

むしろ、政府が用意した参入障壁の壁を上ることができずに、業績の悪化や倒産に至っていると言える。

つまり、今の状況では後発優位性が増しているのだ。

市場の後発組は先発企業の失敗事例を観察できるので、技術開発について無駄な投資が抑えられ、また、独自の改良をすることで別の新しさ、価値を訴えることで先発の市場を奪い取れる。

介護保険に早期に参入した介護事業所が、介護保険の役割である地域包括ケアシステムによって、淘汰されるという本末転倒な事態が起こっている。

先発組が意地を見せるか?
それとも
後発組が市場シェアーを拡大させるか?

今後も、市場では厳しい戦いが予想される。

 

医療機関・介護事業所のフリーライダーを排除せよ

フリーライダー
組織においてメンバー同士の貢献によって付加価値を産み出すとき、何も貢献せず、他のメンバーに貢献に依存し得られた付加価値の恩恵にはあずかる人、ただ乗りの人。

わかりやすく言うと、「給料泥棒」である。

ご存知の通り、診療報酬・介護報酬の体系はより厳しくなっており、生産性の高い働き方を実行できる集団でなければ、安定的な利益を確保することは難しくなっている。

生産性を高めるには

投資する時間や費用を少なくしても、成果には変化がないこと

もしくは、

投資する時間や費用は変化がないが、成果が大きく変化すること

が必要である。

すなわち、時間や給与あたりの成果が大きい人が生産性が高い人と言える。

次のような人がいる職場は、生産性の観点から考えると最悪である。

大した実力もないのに肩書だけの上司が指示ばかり出して、自分自身ではなんら仕事の成果を出していない人

職場における仕事の責任を果たさずに、外部の仕事(セミナーや副業)などの仕事を職場に持ち込んでしている人

よくわからない経営者や院長の親族の人が月に数回だけ勤めて、えらく高い給与をもらっている人

毎日残業をして、残業代も高く、しかも普通の仕事の成果しか残せていない人

1分でわかる話を5分も10分もする人

同じ失敗を何度もする人

今までの診療報酬・介護報酬の体系では、生産性の低い人がいても最低限の利益率を維持することが出来ていた。

また、生産性の低い理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護職、看護師、医師も人手不足をアドバンテージにして、雇用されていた。

しかし、地域包括ケアシステム構築の最終コーナーを回っている昨今では、もはや生産性の低いに人間は不必要となってくる。

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医療・介護現場は、まだまだ生産性が低い。

マネジメントレベルの低下
個々の職員の技術力
コミュケーションの不備
生産性への意識
ITの活用
など多くの課題の解決が先送りされている。

また、生産性の低い人を排除する仕組みも乏しい。

特に、経営者の知り合い、血縁関係者や立場の高い人のフリーライダーの排除をする力は乏しい。

あなたの組織にはフリーライダーを排除する考えや仕組みはありますか?

フリーライダーが増えれば増えるほど、組織崩壊は近い。

 

「営業活動をして利用者を集めてこい!」という院長・経営者・事務長は、臨床現場が最大の営業活動であることを忘れている

2000年以降の緊縮財政により、医療・介護事業では経営環境の変化に伴い、患者や利用者獲得のための「営業活動」が活発化した。

医療の機能分化の促進、介護保険事業所の増加により、患者や利用者の争奪戦の状況が生まれ、地域連携室や事務方の職員などが地域の医療機関、介護事業所、居宅介護支援事業所に患者や利用者の獲得目的で挨拶回りに行くなどの営業行為は、もはや、ごくごく普通のことである。

しかし、そんな「営業行為」だけでは、もうどうしようもないほど現在の医療機関や介護事業所を取り巻く環境はより厳しさを増している。

地域包括ケアシステムの推進は、各医療機関や介護事業所の「実力」を白日の下にさらしている。

在院日数短縮
重度者対応
ADL改善
24時間365日対応
地域連携
自立支援
ターミナル対応
多職種連携
認知症対応
など・・様々な項目への取り組みが医療・介護事業所の必須事項になっている。

昨今ではこれらの項目に対応できない場合、患者や利用者だけでなく、連携医療機関や介護事業所から、不信に思われる。

例えば、次のような事例は「不信」を招く典型例である。

営業活動で、「〇〇の疾患であればすぐに入院対応できますので、いつでも、ご連絡ください」と言っていたが、いざ、入院の依頼をすると先方の医師の判断で入院が断られる。

自立支援を目指しているデイサービスという紹介で、デイサービスを利用したが、筋力トレーニングだけのデイサービスだった。

「365日24時間対応の訪問看護ステーションなんで、ご安心ください」と利用者に伝えていたが、実際に深夜に電話したら、オンコール担当の看護師の態度が悪かった。

「リハビリテーションを中心にしている病院です」という紹介で入院したが、土曜日、日曜日はリハビリテーションがなかった。

旧来の営業活動は、エクスターナルマーケティングといわれるもので、いわゆる、認知度を高めるための行為である。

こんな医療をしている医療機関ですよ!
こんなことに取り組んでいる介護事業所ですよ!
ということを、市場関係者に伝えることで、サービスや商品の購入を促進するものである。

エクスターナルマーケティングは
競合が少ない
市場が成熟していない
相手に知識がない
場合に有効である。

しかし、昨今の医療・介護情勢については、医療・介護分野の関係者だけでなく、多くの国民もインターネットなどのメディアを通じて知っていることが多い。

そのため、認知度を高める程度では、サービスや商品の購入が起こりにくい。

そこで、重要なのがインターナルマーケティングである。

このマーケティングは
社員に自社のサービスや商品の価値を教育し、日常的な活動において顧客の期待を裏切らないようにする
ことである。

言い換えると、「自社が謳っているサービスや商品の質を常に順守する」ということである。

よい噂を聞いたので、実際に利用したが、期待していたサービスを下回ったことはないだろうか?

このような場合、もう一度そのサービスを利用したいと思わない。

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医療・介護分野では、患者・利用者の獲得目的の営業は、エクスターナルマーケティングのような活動だけでは、もう、効果を出すことはできない。

利用者や入院稼働率が低下した場合、多くの経営者や院長は「外部の事業所に営業に行ってこい!!!」と言う。

しかし、この発言は本末転倒であることが多い。

そもそも利用者や患者が減っている理由は何だろうか?
なぜ、利用者や患者が離れて行っているのだろうか?

ほとんどの人は
臨床現場が、「インターナルマーケティングというマーケティングの最前線であること」を理解していない。

今一度、臨床現場におけるマーケティングを見直すべきである。

診療報酬・介護報酬低額化時代 勝ち残るために必要なのはネットワークである

ネットワークとは
連絡を保って網状になっている構成体
のことである。

ビジネスの世界では、一度ネットワークを構築することができれば必ず一定数の販売は確保できるという原則がある。

わかりやすい例は、「Google」である。

Googleはchrome、Gmail、Google calendar、Google Street View、androidなどのITテクノロジーを駆使して、全世界におびただしい数のエンドユーザーを確保している。

そのGoogleが、今後、どような商品を発売しようとも、必ず一定数は売れる。

なぜならば、Googleとエンドユーザーは強くネットワークにより結ばれているからだ。

また、様々なネットワークを持つことでGoogleは自らの技術を活かした商品を発売することができる。

例えば、Googleは現在、自動運転ができる車を開発している。

その技術の裏には、Google Street View、androidが活用されている。

このように、エンドユーザーと強く結くことができるネットワークを数多くもつことで、市場に対しては「破壊的な力」を持つこと可能となる。

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診療報酬・介護報酬が低減化していく中、医療機関や介護事業所は、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護福祉士の雇用者数を増やして、できるだけ一人当たりの売り上げを確保しようとする。

つまり、薄利多売作戦である。

しかし、この薄利多売作戦がうまくいくためには、患者や利用者が常に一定数確保できるという前提条件が満たされる必要がある。

すなわち、患者や利用者を確保することができるネットワークの構築がこれからの時代では重要である。

2000年以降の緊縮財政政策により、社会保障分野の費用は削減された。

2000年以降、医療・介護分野では「営業が重要だ!」と言う経営者が増え、多くの医療機関や介護事業所は営業活動を行っている。

しかし、その営業活動は
パンフレットを配る
事業所へ挨拶周り
電話を掛ける
営業のFAXを送付する
という程度のものであり、認知度向上程度の効果しか期待できないものがほとんどである。

これからの時代において、患者、利用者を確保していくために必要なのは、ネットワークの構築である。

そして、地域包括ケアシステムは、まさにネットワークの構築を求めている。

特に、リハビリテーション分野や重症者対応に関してはネットワークの構築が重要である。

なぜならば、リハビリテーション分野と重症者対応は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、医師のサービスの差が最も目立ちやすいものであるため、エンドユーザーであるケアマネージャー、患者、利用者、家族は質の高いサービスを得ることができるネットワークへの関与を希望するからである。

皆さんが勤めている医療機関・介護事業所は、ターゲットしている患者や利用者に対してネットワークの構築ができているか?