仕事や人生の前進を阻害するベーシック・ミステイクに注意しろ

アーロン・ベックが確立した認知療法では、「人間の認知が行動や感情に影響を与えている」と考えている。

人間がどのように外界をとらえ、それを意味づけたか?という認知が、行動や感情に影響を与えている。


歯科医師になったが思ったより、給料をもらえないという出来事により、落ち込むという感情が生じた場合、「思ったより給料をもらえない」という出来事をどのように捉えているかという信念が落ち込みの感情を生じさせるのである。

このような非論理的な認知を、心理学では認知の歪みと呼ぶ。

認知の歪みには、6つの例があり、「ベーシック・ミステイク」と呼ばれている。

6つのベーシック・ミステイク
1.選択的抽出  文脈の中から一部だけを取り出し、全体の状況は把握せずに判断すること

2.恣意的推論  証拠がない、あるいは正反対の証拠があるにもかかわらず、否定的な結論を出してしまうこと

3.過度の一般化 一部分だけを取り上げて、すべての事柄に当てはめる

4.拡大解釈や過小評価 失敗の拡大解釈、成功の過小評価

5.自己関連付け わずかな情報を自分に関連付ける

6.分極化思考 白か黒か、両極端に考えること

このようなベーシック・ミステイクという非論理的な信念を持っていると、多くの出来事を悲観的に捉え、行動を制限してしまう。

例えば、すこし失敗しただけで「取り返しのつかないものである」と考えてしまったり、人から少し批判されただけで全員から批判されていると感じるなどが挙げられる。

セルフケアや部下の指導においては、ベーシック・ミステイクをしていないかを充分に注意し、もしベーシック・ミステイクに取り付かれている場合は、認知の歪を正していく必要性がある。

ちょっとしたことで落ち込む人、失敗を恐れて何もできない人、他人の目が気になる人はベーシックミステイクに陥っている

 

 

 

急性期におけるキュア&ケアハイブリッドリハビリテーション

高齢化の進展により、急性期病院に入院する患者の属性が変化している。

急性期病院は重症度の高い急性発症の患者が入院する「場」であったが、高齢者の延命率向上や介護保険によるケアの提供により、在宅生活と病院入院を繰り返す高齢者が増加している。

その結果、急性期病院には複数の既往歴や認知症を有する高齢者が入院するケースが増えており、急性期医療の医学的モデルが適応できない状況が進んでいる。

そのため、急性期病院では慢性期疾患を持った高齢者に対する急性期治療を行うという複雑な状況が増えている。

main_img

特に認知症高齢者今後800万人になるとも言われており、急性期病院における認知症対応も大きな課題である。

つまり、高齢化が進展し、介護保険サービスの質が良くなればなるほど、急性期の役割は多様性を増してくる。

治療を意味するキュア、全人的アプローチを意味するケア

この両方の提供が急性期病棟には求められる時代となっており、リハビリテーションにおいてもキュアとケアのバランスが課題となっている。

専門性の高い治療技術、多職種と連携し、最良のQOLを生み出す技術、これらがミックスされたハイブリッドリハビリテーションが向こう30年は加速する。

急性期だから慢性期、認知症の技術を磨く。そんな時代になっている。

 

 

ワークシフトを実践する人にとって2025年問題は最高のチャンス

15歳から64歳までの現役世代人口は2010年には8174万人、2050年には5001万人になっている。

その間、65歳以上の高齢者は800万人以上増加している。

これは何を意味するか?

医療、介護職が不足する
医療、介護報酬が上がらない
医療、介護職の賃金が上がらない
・・・・などが毎日のように新聞、ヘルスケア雑誌に記載されている。

しかし、マイナスなことばかりが起こるわけではない。

ワークシフトを実践する医療・介護従事者には、最高の市場が訪れている。

労働力が減る社会においては、有能な人材はより、輝きを増す。

マネジメント
コーチング
急性期から慢性期に対応できる医療・介護技術
医療・介護業界マーケター
技術開発
などの能力を有する人材は、医療・介護業界において益々、至宝の存在になる。

今後、そういった人材は、複数の病院や企業に勤務し、同時に高い報酬を受けるだろう。

941b7dc0f1e59aea7d06801fb2682f8b_s

ワークシフトを実践する人にとっては今後の労働市場はブルーオーシャンである。

ワークシフトを達成するためには「連続的スペシャリスト」を目指す必要がある。

連続的スペシャリストとは
独自の専門分野を持ちながらも社会の変化に対応し、連続的に専門分野を取得していく人
である。

しかも、20代だろうが60代だろうが関係ない。

真のワークシフトは死ぬまで続けることに意義がある。

ブルーオーシャンの市場が現れるのではない。

ブルーオーシャンの市場を自分で造るのだ。

 

 

リハビリテーション潜在市場

現在、介護保険サービスを利用していない高齢者は高齢者の中でも圧倒的多数を占める。

介護保険制度の仕組みを知らない人や介護保険に対する誤解がある人が多く、身体機能や社会参加が低下していても、要介護認定を申請しない人も多い。

2025年に向けて後期高齢者が爆発的に増加していく過程では、医療保険、介護保険を利用する前の健康的な時期をいかに長くするか?すなわち、健康寿命延伸への取り組みがが重要である。

現在の日本では、病気や介護が必要な状況になれば、医師、看護師、ケアマネージャーなどの支援により、医療・介護サービスを受けるシステムは完全に構築されている。

しかし、徐々に身体機能や社会参加が低下していく時期に対して、具体的な介入を行うサービスは乏しい。

ab370c4e23eee4025437b4a501a8320f_s

自発的に健康に留意している高齢者なら、地域の社会活動、フィットネスクラブ、老人クラブなどにも通う。

しかし、健康に対する意識が低い高齢者は、廃用症候群やフレイルの発症を無防備に待っているのが実情である。

2014年度の介護報酬改定にて介護保険から要支援者が外されることが決定しており、2017年度までには地域支援事業として地方公共団体が要支援者へ介護予防サービスを行うことになる。

しかし、要支援認定を受けていない高齢者への政府の対策はあまり見えてこない。

2025年以降、今後も要支援認定を受けていない虚弱老人は、確実に増加していく。

今後、要支援者への介護予防サービス、要支援認定を受けていない人への健康増進が大きな市場になるのは確実である。

理学療法・作業療法・言語聴覚療法の知見は、健康増進に大きく活用できるし、他の分野と組むことでさらにその強みを増す。

転倒予防、認知症予防、活動参加支援、就労支援、栄養改善などの身体機能に関するコンサルテーションなどは異業種と組むもできる分野である。

また、産学官連携を強化すれば、リハビリテーションのエビデンス作りも、加速するだろう。

リハビリテーション潜在市場は希望に満ち溢れていると言える。

「人」なぜ働くのだろうか?

人は何のために働くのか?

医療・介護従事者は専門職である前に、「人」である。

「人」がなぜ働くか?という原理原則を理解することは、人材や組織のマネジメントを行う上で極めて重要である。

今回は「人」が働く理由を考える上で重要な概念である「キャリア・アンカー」を紹介したい。

これはアメリカの心理学者エドガー・シャインによって提唱 された概念である。

キャリア・アンカー
職業、職種、勤務先などを選択する際に判断基準となるものであらゆる人が持っている。

アンカーとは日本語で「碇」を意味し、船を固定させるものである。

言い換えると、自分の人生の中で「優先度が高いもの」「譲れないもの」を示す。

どのような仕事に就こうとも「キャリア・アンカー」という自己概念が仕事の中で顕在化してくる。

キャリアアンカーには8つのものがある。

・専門
企画、販売、人事、エンジニアリングなど特定の分野で能力を発揮することに幸せを感じる

・経営管理
組織をマネジメントし、対人関係の調整や業績の拡大に魅力を感じる

・自立
自分のやり方で自由なスタイルで仕事をすることに魅力を感じる

・安定
労働条件などの福利厚生の安定を求める

・企業家的創造性
新しいものを創り出し、困難を乗り越えることに幸せを感じる

・社会への貢献
社会という公共なものへ貢献したいという気持ちが強い

・チャレンジ
大きなリスクや障害を乗り越え、不可能と思える事柄に挑戦することが楽しい

・全体性と調和
プライベートと仕事の調和を図ることが最も重要と考える

applying-job-outside-field-featured

これらの8つのいずれかのキャリア・アンカーを持つ人が組織内に存在している。

比較的多いのは「全体性と調和」のキャリア・アンカーである。

仕事とプライベート(家庭)が大切であるという現代の世相を示していると言えるだろう。

しかし、中には「企業家的創造性」や「専門」などのキャリア・アンカーを有する人もいる。

その場合、「企業家的創造性」の人には新規施設の開設や経営改善の仕事、「専門」の人には医療技術指導者や研修責任者が適性のある業務であると言える。

キャリア・アンカーの評価なくして組織マネジメントは難しい。

理学療法士だからこのような価値観を持ちなさい
作業療法士だからこんな風に働きなさい
看護師はこうあるべきだ
というアドバイスは、「キャリア・アンカー」を前提にしておらず、非常に乱暴なものである。

皆さんは部下や同僚のキャリア・アンカーを把握しているだろうか?