リハビリ部門人材育成問題 長期的な視野に基づく人材育成ができない

人材育成を時間軸で考えた場合、短期的な人材育成と長期的な人材育成に分けることができる。

短期的な人材育成では「与えられた仕事を問題なく遂行する能力の開発」が主な目的となり、業務内容の把握、接遇、最低限のスキルなどについて教育が行われることが多い。

長期的な人材育成では「中長期的なリハビリ部門の戦略やビジョンを達成するための能力の開発」が主な目的となり、セラピストの専門性だけでなく、マネジメント領域に関する教育が行われることが多い。

多くのリハビリ部門では短期的な人材育成に終始しており、長期的な人材育成を全く行っていないリハビリ部門も多い。

それでは、なぜ、短期的な人材育成には取り組むが、長期的な人材育成は疎かになるのか?

それは、長期的にどのような人材がリハビリ部門にとって必要なのかを明確にすることができないからである。

その原因は、リハビリ部門が中長期的な事業領域を明確にしておらず、どのような戦略を打ち出すかを決めていないことである。

簡単に言えば、「リハビリ部門が目指すべき方向性がわからないため、どんな人を育てればよいのかわからない」ということである。

長期的な人材育成を疎かにして、短期的な人材育成のみを実施している場合、日々の業務はなんとか回るようになるが、診療報酬改定・介護報酬改定や新規事業などの大きな環境変化に対応できない事態に陥ることが多い。

環境変化に対応できる人材が不足していることがその主な原因である。

そして、環境変化に対応できない場合、利用者や収益の減少やコンプライアンス違反など経営に大きな影響を与えることが多い。

リハビリテーション分野の費用が国が医療費/介護費に占める割合が急増している。

そのため、リハビリテーション分野では様々な環境変化がまだまだ生じる。

皆さんのリハビリ部門では長期的な人材育成に取り組めているだろうか?

「今さえよければ良い視点」の短期的な人材育成では、今後の環境変化を乗り越えるのは困難だろう。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

理学療法士/作業療法士/言語聴覚士のリクルーティングのポイント 「情報開示」

リクルーティング活動は「求人募集の結果、医療機関や介護事業所が求めるスペックに適した人材が数多く応募してくること」が重要となる。

求人募集の結果、応募人数が少ないと人材を選択することが出来ず、応募者をそのまま採用する展開になってしまう。

よって、リクルーティング活動は「組織が求めるスペックの応募者を効率的に集める」という結果にこだわるべきである。

リクルーティング活動の最重要ポイントは情報開示である。

情報開示は医療機関や介護事業所の理念、ビジョン、業務内容等の情報を開示することであるが、医療機関や介護事業所の良いところ、悪いところをすべて伝える姿勢が重要である。

つまり、綺麗ごとばかりを伝えるのではなく、組織の現実的な側面を伝えることが重要となる。

全てを伝える情報開示は以下のような効果をもたらすと考えられている。

①入社後の仕事内容が明確となり、過剰な期待が軽減され、リアリティショックを軽減することができる。

②組織のリアルな実情を知った上での入職であるため、入職に対するコミットメントが高まる。

③仕事に対する価値観を深めることができる。

つまり、生々しい組織の実態を求人者に伝えることによって、求人者は自己選択を真剣に考えるようになる。

その結果、応募者間のばらつきも減り、採用プロセスが効率化することになる。

多くの医療機関や介護事業所における理学療法士/作業療法士/言語聴覚士の求人募集では「研修会の有無」「昇給システムの有無」「理念やビジョン」「業務内容」などの表面的な情報が開示されていることが多いが、これだけでは全く組織の実態が見えてこない。

リクルーティング活動においては就職説明会やホームページの掲載において本当の組織の姿を伝えることが効率的な人材応募につながることを理解していただきたい。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

リハビリ部門の採用活動において人材とのマッチングを重視していますか?

採用は人材獲得のスタート時点。

このスタート時点で最も大切なことは、「人と仕事と組織」のマッチングです。

マッチングとは
「つり合うこと」、「調和すること」
です。

組織や仕事が求めている能力、資質、姿勢、共感とその人材との適合性を評価するのがマッチングとなります。

マッチングを軽視しているリハビリ部門は、
離職率が高い
売上重視の人材育成軽視
従業員満足度が低い
運営に対する非協力な態度
陰口が多い職場
になる傾向が高いです。

マッチングには次の要素が必要です。

①獲得した人材スペックの明確化
②人材募集の方法を考える
③募集してきた人材の選考方法

①獲得した人材スペックの明確化
これについては「リハビリ部門採用戦略のキーポイント 人材スペックの明確化」をご確認ください。

②人材募集の方法を考える
組織の外部から人材に応募してもらうためには、「人材募集」という機能が重要となります。

「人材募集」の機能をどこまで高められるか?は非常に重要な要素となります。

ホームページ、SNS、ブログ、人脈、ハローワーク、優良人材紹介会社、求人誌などの「人材募集」の方法があります。

その中でも、ホームページ、SNS、ブログ、人脈に関しては企業努力によって相当なレベルの差が出る部分です。

単なる求人募集の情報を提供するだけでなく、法人の理念、ビジョン、取り組み、実績をわかりやすく伝えることができるか?が重要となります。

しかし、多くのリハビリ部門では募集人数、職種等の記載にとどまっていることが多く、募集の機能は極めて低い状態です。

③募集してきた人材の選考
応募してきた人材がどのような能力や資質を持っているか?について判定が必要となります。

その判定には、求める人材スペックが必須となります。

正確に言えば、「求める人材スペック明確でなければ選考は不可能」と言えます。

選考方法には面接、試験などがありますが、人材不足や利益優先のリハビリ部門では面接や試験は形骸化しています。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

リハビリ部門採用戦略のキーポイント 人材スペックの明確化

良い人材を採用したい、育成したいと考えているリハビリ部門は多く、弊社にも人材育成に関する多くのご相談が寄せられます。

人材育成には様々なステージがありますが最初の入り口は、募集→採用という流れになります。

実はここが大きなポイントとなります。

募集→採用においては「採用基準」が必要となりますが、多くのリハビリ部門では採用基準が不明確になっています。

少し過激な言い方になりますが、「PT・OT・STの資格を持っていてできるだけ早く勤務してくれる人」ならだれでもいいと思っているリハビリ部門が多いのではないでしょうか?

このような採用方法で、良い人材が入職することを期待すること自体が誤った判断です。

募集や採用にあたっては、「人材スペックの明確化」が重要となります。

採用に当たり
①自社の戦略遂行に寄与する能力レベル
②雇用形態(短期・長期・スポット)
③自社が求める価値観
④リーダーシップへの意欲
⑤特殊能力
などを明確にしたうえで募集や採用活動を実施することが重要です。

特に人材不足においては
資格さえもっていれば誰でも良い
人柄が問題なければ採用
人を選んでる場合ではないから募集してきた人は採用する
という現象が横行し、その結果、組織全体の能力を低下させます。

人材スペックを明確にしない場合、とくに上記の「誰でも採用する」現象が生じることでしょう。

また、人柄がよい、会話が普通に出来たなどが良く採用の理由として上がりますが、「コミュニケーションが可能である」というのは最低限の人材スペックですのでそれが決め手となる採用は非常にレベルが低いと言わざる得ません。

人材スペックを明確にすることによって、採用決定者の主観的な判断に頼らず、採用することも可能となります。

人材採用を
数を打てば当たる
直感の名人芸
で行っている場合、良い人材の入職や育成はギャンブルに近い行為と言えます。

投稿者
高木綾一

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感染対策や利用者状況変化に強い介護事業の在り方

地域包括ケアシステムが導入されて久しい。

地域包括ケアシステムの基本理念の一つとして「最後まで住んでいる地域で生きる」というものがある。

そのため、利用者を取り囲む事業者は利用者の状況が急性増悪や感染症などで変化した場合、事業者間で連携し、利用者の不利益が最小限になるように努力しなければならない。

そのため、医療や介護においては地域連携という概念の浸透が急速に浸透した。

しかし、新型コロナウイルスが蔓延してからは新しい形の介護事業を必要となってきた。

それは、一つの企業体が多機能な事業所をいくつも経営する多機能拠点集中サービスである。

多機能の拠点があるために、利用者の急性増悪や感染症に罹患した場合、適切なサービスに変更を行うことができる。

例えば、通所介護で感染症に罹患した患者が生じた場合、速やかに訪問看護や訪問介護のサービスに変更し、利用者の状態安定化と通所介護での感染予防を図ることができる。

また、介護、看護、リハビリ職種への人材不足への対応策としても有効である。

職員の急な休みやシフト変更などが生じた場合、他の事業所からの人材の支援を受けることができる。

ただし、この方法を実施するためには次のような要件が必要である。

1)複数の事業所を運営できる資金が確保されている
2)複数の事業所のマネジメントができる人材が確保されている
3)同一グループとして利用者を支援するという理念が浸透している

これらの要件を満たすことなく、多角経営に踏み切るのはハイリスクである。

資金力のある法人が多角経営に踏み切ったがその数年後に廃業に至ったと言う事例は多い。

廃業の原因は、マネジメントができる人材不足、理念の非浸透である。

一方で新型コロナウイルスのような新興感染症はいつ生じるかわからない。

そのために、多角経営を見据えることが重要な時代になったと言える。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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