やりたいことがあるセラピストはマイノリティーである

キャリアデザイン研修やリハビリテーション部門のコンサルティングをしていると以下のような質問をよく受ける。

「やりたいことが見つからないので困っています、どうしたらいいのでしょうか?」
「うちの職員は将来の目標がなく、漫然と臨床をしています。どのように教育したら良いのでしょうか?」
「目標管理における目標設定が低くて困っています」

つまり、目標設定とか、やりたいこと・・・これらを明確にした上で、仕事をしてほしいと管理職は切望している。

しかし、今のご時世、やりたいことや人生の目標があるセラピストはマイノリティーである。

そもそも、日本は世界最強の先進国であり、物質的には十分に満たされている。

その上、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は国家資格であり、職場を選ばなければ就職率100%である。

しかも、セラピストとしての能力が低くても就職できるという公務員以上に、市場の競争から守られている特殊な仕事である。

そんな世界で生きているセラピストにやりたいことや目標があるほうが珍しいと考える方が賢明である。

そんなセラピストをどのように導いでいけばよいのだろうか?

そのようなセラピストには、「ロールモデル」の提示が最も有効である。

今日は、病床削減、地域包括ケア、在宅シフト、EBM思考、ロボット活用・・・などリハビリテーションに関する価値観が多様になっている。

また、インターネット世代の若いセラピストほど、多くの情報に触れており、膨大な選択肢から何かを選択することが苦手である。

よって、リハビリテーション部門や介護事業所は、どのようなセラピストになってほしいかというリアルなロールモデルを提示しなければ、セラピストが自ら目標を想起することは困難である。

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このようなことをこのようなレベルでできるようになる
接遇はこの程度のレベルになる
書類作成はこの程度の水準はできるようになる
歩行介助は○○さんと同じぐらいのレベルになる
リスク管理に関するテストで80点以上を獲得する
カンファレンスでは○○さんのように発言する

など、より具体的に求める人物像を示すことが重要である。

そもそも、やりたいことや目標設定ができる人で組織が構成されていれば、人材教育など不要である。

目標設定を本人に任せていると言えば、聞こえは良いがそれはただの人材教育の丸投げである。

「やりたいことがあるセラピストはマイノリティーである」という認識が人材育成の基本である。