リハビリテーション分野は幅も広く、奥も深い。それゆえ、セラピストの知性が求められる。

筆者は、仕事柄、多くの病院・診療所・老人保健施設・介護保険事業所等を訪問し、そこで働く医療・介護職と話をすることが多い。

その中で、最近、特に感じることは、同じセラピストであっても、リハビリテーションやセラピストという仕事に対する捉え方が大幅に違うということである。

つまり、セラピストの仕事に対する考え方の標準偏差が拡大していると言える。

多くのセラピストは「セラピストの仕事の概念」について、勤め先の事業内容や日頃の運営方針の影響を強く受けている。

整形外科診療所に勤めるセラピストは、少ない単位で即時的効果を出し、痛みや可動域を改善することが仕事

訪問リハビリテーションに携わるセラピストは、利用者や家族のQOL向上に取り組むことが仕事

大学病院に勤めるセラピストは、最先端医療や知見を用いて、最大限の機能回復に取り組むことが仕事

回復期リハビリテーション病棟に勤めるセラピストは、ADL回復と在宅復帰に必要な条件を整えることが仕事

老人保健施設や有料老人ホームに勤めるセラピストは、個別リハビリではなく、施設職員全員によるリハビリテーションアプローチを考えるのが仕事

療養病棟やターミナルに携わるセラピストの仕事は、終末期リハビリテーションを提供することが仕事

もちろん、そこに勤める全セラピストが同じ考えをもっているわけではない。
しかし、勤め先の業務内容がそのセラピストの「仕事観」に影響を与えていることは間違いないだろう。

リハビリテーションの概念は言うまでもなく、「全人間的復権」である。
しかし、リハビリテーションサービスを生業にしているセラピストが、仕事観に関して様々な考えをもっているのが現状である。

時代は機能分化と地域包括ケアの時代である。
機能は分化するが、地域は包括化せよという二律背反するような哲学が、医療と介護に導入されている。

そのような時代に、セラピストはどのような考えを持って仕事に邁進するべきなのか?

リハビリテーションとは実に幅も広く、かつ、奥も深い。
一言で、「全人間的復権」と言っても、その奥行や幅の広さは、各個人で異なる。

しかし、現在、自分が働く分野の利用者の全人間的復権を支援できるソリューションを提供することは最低限セラピストに求められる仕事である。

また、将来、自分が携わりたい分野における全人間的復権のソリューションを事前に考え、そのスキルを高めておくことは、個人のキャリアデザインにとって重要である。

リハビリテーションとは実に幅が広く、奥も深い。

それ故、セラピスト個人の職業倫理観やキャリアデザインに関する知性が要求される。