2016年度に通所介護の経営環境は激変する

医療介護総合確保推進法では、全国の市町村は2015年度から2017年度までに日常生活総合支援事業を行うことを定めている。

日常生活総合支援事業とは「市町村の主体性を重視し、地域支援事業において、多様なマン パワーや社会資源の活用等を図りながら、要支援者・二次予防事業対象者に対して、 介護予防や、配食・見守り等の生活支援サービス等を、市町村の判断・創意工夫に より、総合的に提供することができる事業」(厚労省)である。

特に訪問介護・通所介護における要支援1・2の方は予防給付から外れ、日常生活総合支援事業に参加することになっている。

2015年度からこの事業を行うことは、先進的な自治体を除いて、ほとんどの自治体で不可能である。

しかし、2017年度に始めると、2017年度から開始される第7期介護保険事業計画に当該事業の実績や反省を反映させることができない。

よって、2016年度から始める自治体がほとんどであると推察される。

実は、2016年度にもう一つ大きな制度が開始される。

定員18名以下の通所介護事業所が「地域密着型サービス」に移行し、「地域密着型通所介護」になる。

地域密着型というのは、各自自体の総量規制に基づく、許認可制度である。

つまり、定員18名の小規模通所介護の開設に歯止めがかかったことを意味する。

2016年度には
1.通所介護からの要支援1.2の介護保険外し
2.小規模通所介護の総量規制
が開始される。

よって、2016年度を境に通所介護業界におけるビジネスモデルの転換が求められている。

通所介護で日常生活総合支援事業の指定を受けることは可能であるが、その場合、要支援1・2の利用者から得られる収入単価は極めて低くなると予想される。

したがって、通所介護において、要支援1・2の方を対象とするビジネスモデルが極めて厳しくなったと言える

また、小規模通所介護の開設が困難になったことから、通常規模、大規模通所介護の開設が今後は主流となり、資本力がより重要な時代になったと言える。

資本力があり、複数の事業所を持つ法人であれば、日常生活支援総合事業を敢えて行い、要支援1・2の方を将来の介護保険給付における通所介護等の利用者と見込み、利用者の囲い込み作戦も可能である。

2015年介護報酬改定では、通所介護の事業モデルとして、認知症対応、重症者対応、リハビリテーションが示された

。これらのモデルに加え、日常生活総合支援事業への参加の有無、通常規模、大規模通所介護への変更や開設の判断が求められている。

通所介護事業所の戦略は、従来より複雑になっており、将来を見据えた経営戦略や人材育成が重要になっていると言える。

したがって、通所介護事業所は2015年度中に大きな経営判断が迫られる。

 

 

 

2015年 介護報酬改定 リハビリテーションマネジメント加算Ⅱとリハビリテーション会議という厚労省のトラップに気づいているか?

2015年介護報酬改訂にて「リハビリテーション会議」という言葉が出現した。

この会議は、通所リハビリテーションやリハビリテーション事業所における加算項目であるリハビリテーションマネジメント加算Ⅱの要件として設置が求められているものである。

リハビリテーションマネジメント加算Ⅱの説明文は次のとおりである。

(1)リハビリテーション会議を開催し、利用者の状況等に関する情報を、会議の構成員である医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、居宅介護支援専門員、居宅サービス計画に位置づけられた指定居宅サービス等の担当者、その他関係者と共有し、当該リハビリテーション会議の内容を記載すること。

(2)通所リハビリテーション計画について、医師が利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得ること。

従来から行われていた情報交換を主体としたミーティングやサービス担当者会議ではなく、リハビリテーションに特化した会議を、医師を含めた専門職にて開催することが求められている。

また、項目の(4)には以下のように記載されている。

(4) 指定通所リハビリテーション事業所の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、介護支援専門員に対し、利用者の有する能力、自立のために必要な支援方法及び日常生活上の留意点に関する情報提供を行うこと

つまり、リハビリテーションマネジメント加算Ⅱは、自立支援に向けた取り組みを本格的に行うために、医師を含めた専門職による会議を行うことが求められていると解釈できる。

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今回の介護報酬改定でこのような加算要件が設定されたことは、厚労省より「今までは、自立支援に向けて医師を含めた専門職の取り組みは不十分でしたよね?」とダメ出しをされたに等しい意味を持つ。

現在、著者のところにリハビリテーションマネジメント加算Ⅱとリハビリテーション会議の運営方法に関して多くの相談がきている。

その内容は「医師が協力してくれない」「医師は会議に出るが、リハビリテーションなんかわからないと言っている」「理学療法士や作業療法士が他職種に助言することが苦手」「自立支援に向けたシステムが整ってない」などである。

これこそまさに、厚生労働省が望んだ「カオス」である。

この「カオス」から、抜け出した事業所が真の生活期リハビリテーションを行う資格を与えられる。

通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの目的が、「利益のみ」であったところは、今回の介護報酬改定で間違いなく内部崩壊を起こす。

「自立支援と利益」を追求していた健全な事業所は、2015年度介護報酬改定は追い風となる。

2018年の介護報酬改定では、リハビリテーションマネジメント加算Ⅱは包括化される噂もある。

そうなると多くの通所リハビリテーションは存在意義を失い、収益も低下するだろう。

診療報酬改定や介護報酬改定は、制度変更を通じて、「人の働き方」「組織のあり方」の変化、つまり、働き方の変化、つまり、ワークシフトを求めている。

今まさに、ワークシフトの概念で組織をマネジメントすることが必要な時代になったと言える。

地域包括ケアシステムは新しい商品・サービスを生み出す

地域包括ケアシステムでは、医療・介護・生活支援の有機的な連携を推進している。

医療や介護の連携に関しては、診療報酬・介護報酬改定・医療計画・介護保険事業計画という公的な力により推進されていく。

しかし、生活支援分野に関しては、法的に推進することは難しく民間企業の創意工夫が求められる。

生活支援の範囲は膨大であり、また、あらゆる業種が関わることが可能である。

高齢者の生活を効果的に支援する商品・サービスの開発することができれば、こぞって企業はその商品・サービスを購入し、市場で販売するだろう。

ざっと、想像しただけでも以下のような商品・サービスが民間企業主体で開発されていくと考えられる。

自動車・バイクの自動運転システム
認知症老人徘徊時の捜索システム
日常生活必需品の配達システム
安否確認サービス
金銭管理サービス
家事代行サービス
民間の介護保険・認知症保険・家族介護支援保険
ロボットを利用したリハビリテーション機器
在宅看護・介護支援システム
見守り家電システム
要介護者対応の健康増進施設
高齢者の旅行・趣味支援会社
アルツハイマー病予防薬
企業内デイサービス

地域包括ケアシステムは、日本の民間企業の商品・サービス開発の変革も求めている。

地域包括ケアシステムを支える商品・サービスの開発に医療・介護・健康産業の従事者が携わることは、今後、常識となっていくだろう。

医療介護連携・医工連携・産学連携などはもはや常識であり、それを支える人材は社会における至宝の存在となる時代となる。

地域包括ケアシステムは、ありとあらゆる分野のイノベーションを引き起こすプラットフォームである。

医師・看護師・介護職・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・薬剤師等が、民間サービスや商品の開発に携わることが期待される。

 

 

 

2015年度 介護報酬改定 通所系サービスのフルモデルチェンジ

2015年度介護報酬改定における目玉項目として通所リハビリテーションにおける「生活行為向上リハビリテーション実施加算」と「社会参加支援加算」が挙げられる。

生活行為向上リハビリテーション実施加算
1.利用開始日から起算して3月以内の期間に行われた場合 2,000単位/月
2.利用開始日から起算して3月超6月以内の期間に行われた場合 1,000単位/月

算定要件
1.指定通所リハビリテーション事業所が、生活行為の内容の充実を図るための目標及び当該目標を踏まえたリハビリテーションの実施内容等をリハビリテーション実施計画にあらかじめ定めて、利用者に対してリハビリテーションを計画的に行い、指定通所リハビリテーションの利用者の有する能力の向上を支援した場合には加算する。

次に揚げる基準のいずれにも適合すること。
(1)生活行為の内容の充実を図るための専門的な知識若しくは経験を有する作業療法士又は生活行為の内容の充実を図るための研修を修了した理学療法士若しくは言語聴覚士が配置されていること。
(2)生活行為の内容の充実を図るための目標及び当該目標を踏まえたリハビリテーションの実施頻度、実施場所及び実施時間等が記載されたリハビリテーション実施計画をあらかじめ定めて、リハビリテーションを提供すること。
(3)当該計画で定めた指定通所介護リハビリテーションの実施期間中に指定通所リハビリテーションの提供を終了した日前1月以内に、リハビリテーション会議を開催し、リハビリテーションの目標の達成状況及び実施結果を報告すること。
(4)通所リハビリテーション費におけるリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)を算定していること。
ただし、短期集中個別リハビリテーション実施加算又は認知症短期集中リハビリテーション実施加算を算定している場合は、算定しない。

1.生活行為向上リハビリテーション実施加算の実施後に継続利用する場合の減算
生活行為向上リハビリテーション実施加算の実施後の翌月から6月間に限り1日につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数から減算する。

社会参加支援加算
社会参加を維持できるサービス等へ移行する体制の評価
社会参加支援加算(新規) 12単位/日

算定要件
指定通所リハビリテーション事業所において、評価対象期間の満了日に属する年度の次の年度内に限り1日につき12単位を所定の単位数に加算する。
次に揚げる基準のいずれにも適合すること。
(1)評価対象期間において指定通所リハビリテーションの提供を終了した者(生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定した者を除く。)のうち、指定通所介護、指定認知症対応型通所介護、通所事業その他社会参加に資する取組を実施した者の占める割合が100分の5を超えていること。

(2)評価対象期間中に指定通所リハビリテーションの提供を終了した日から起算して14日以降44日以内に、指定通所リハビリテーション事業所の従業者が、通所リハビリテーションの提供を終了した者に対して、その居宅を訪問すること又は介護支援専門員から居宅サービス計画に関する情報提供を受けることにより、指定通所介護、指定認知症対応型通所介護、通所事業その他社会参加に資する取組の実施状況が、居宅訪問等をした日から起算して、3月以上継続する見込みであることを確認し、記録していること。

○ 12月を当該指定通所リハビリテーション事業所の利用者の平均利用月数で除して得た数が100分の25以上であること。

この二つの加算の意味するところは何か?
生活行為向上リハビリテーション実施加算は「生活行為を向上させた上で通所リハビリテーションの利用を終了することが目的」である。

よって当該加算終了においても、通所リハビリテーションを利用している場合は、6ヶ月間に渡り、15%の減算となる。

また、社会参加支援加算の要件に「指定通所リハビリテーションの提供を終了した者(生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定した者を除く。)のうち、指定通所介護やその他社会参加に資する取組を実施した者の占める割合が100分の5を超えていること。」と記載されている。

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この二つの加算の意味を考えると以下のように考えられる。

1.通所リハビリテーションは生活期リハビリテーションにおいては、通過型のリハビリテーションインフラであると定義している

2.通所リハビリテーション終了後は、通所介護や地域の支援事業等を利用する

3.通所介護が社会参加インフラとしての位置づけが明確になった

通所リハビリテーションは医療モデルリハビリテーションとICFモデルリハビリテーションモデル/通所介護は完全ICFリハビリテーションモデルの様相を呈してきた

まるで、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟のような棲み分けのようである。

通所リハビリテーションは医療モデルの要素を取り入れながらも、社会参加に資する生活を念頭にリハビリテーションを展開する

通所介護はその社会参加を継続的に支援する

こういった取り組みは、新しい介護保険における新しいリハビリテーションモデルとして推進されていく。

この社会参加に関しては、まだまだ定義も曖昧であり、実例も少ない。

社会参加のインフラもサービスも不十分な領域である。

今後、通所リハビリテーションと通所介護は最大級に注目される分野に変革したと言える。

2015年 介護報酬改定 要介護度3の意味

2015年介護報酬改定において、特別養護老人ホームへの入所者は介護の必要性の高い「要介護3」以上に限定された。

厳格化の対象は新規の入所者になるため、現在、入所している要介護1~2の方は入所の継続は可能である。

幾分の除外条件(精神病や認知症等)はあるものの、特別養護老人ホームは、原則要介護3以上の方が入所する施設になった。

また、通所介護にて、中重度者ケア体制加算(45単位/日)が新設された。

算定条件は看護職員1名以上の配置で、要介護3以上の利用者の占める割合が100分の30以上である。

これらのことから、介護保険領域における重症者は要介護3以上であると定義されたと言える。

すなわち、軽症者と重症者の分水嶺は要介護2と要介護3の間に存在すると言える。

要介護2と要介護3の状況の違いは次の通りとなる。

要介護2
中程度の介護が必要な状態 一人で立ち上がったり歩けないことが多い。
排泄や入浴などに一部または全介助が必要。

要介護3
重度な介護が必要な状態 一人で立ち上がったり歩いたりできない。
排泄や入浴、着替えなどに全介助が必要。

立ち上がり、歩行ができるか、否か?
排泄や入浴ができるか、否か?

この間でリハビリテーションやケアの方針は大きく変わることは、医療介護従事者なら想像がつくだろう。

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2014年度診療報酬改定にて、地域包括ケア病棟が新設され、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟の役割の違いが明示された。

国からは明確に明示されていないが、筆者は前者は医療モデルリハビリテーション、後者はICFモデルリハビリテーションの推進が意図されていると考えている。

今回の介護報酬改定でも要介護2と3の間で、リハビリテーションのあり方に関して、モデルチェンジが必要な状況になったと考える。

要介護2以下は、歩行獲得等のADL動作獲得に加え、社会参加を促し、要介護3以上はADL動作の獲得にも配慮しながらも、摂食嚥下機能、精神機能、感染予防等のリハビリテーションの関わりを通じてQOLの向上が求められた言える。

当然、プロのセラピストとして、ADLやIADLの獲得や維持には全力で関わらなければならない。

しかし、要介護2と3では異なった視点から、より統合的なリハビリテーションを提供しなければならない。

医療・介護情勢は選択と集中の政策が加速している。

事業者やセラピスト、看護師、介護士も自らの仕事のフィールドを明確にして選択と集中を行っていかなければならない。

今回の介護報酬改定には、今後の未来のヒントが多く隠されている。