理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が業務独占ではないことはデメリットではない

名称独占資格
資格がなくてもその業務に従事する事はできる。

しかし、資格取得者だけが資格名称を名乗ることができる。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はすべて業務独占資格ではなく、名称独占資格である。

つまり、他職種が理学療法・作業療法・言語聴覚療法を行うことは法律で禁止されていない。

看護師が関節可動域練習 
介護福祉士が食事練習 
医師が歩行練習 
看護助手が摂食嚥下練習 
家族が筋力トレーニング

を行うことは違法ではない。

もちろん、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に認められた 診療報酬や介護報酬上の所定点数は算定できないが、業務を行うこと自体は問題ない。

一般的に業務独占ではない状況は、他職種からの代替サービスが可能となることから「ネガティブなこと」と捉えられている。

医師や看護師は名称独占・業務独占資格であり、医師や看護師以外の他職種が手術をしたり、注射をしたりすることはできない。

したがって、医師や看護師の業務には厳然たる参入障壁があるため、医師や看護師の職業的パワーは強いと言える。

はたして、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が業務独占をしていないことは、デメリットなのだろうか? 117903 現在、地域包括ケアシステムが推進され、入院医療から在宅医療、病院から地域へのシフトが進んでいる。

地域包括ケアシステムでは、介護保険を利用して、ほぼ在宅で過ごし、必要に応じて病院や施設に入院、入所するという仕組みの構築が進められている。

在宅では、病院や施設のように理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による個別リハビリテーションを多く提供することはできない。

したがって、各専門職や関係者によるリハビリテーションアプローチも重要となってくる。

現実的には、訪問リハビリテーションを週1回しか提供できない利用者は多い。

そのような場合、関節可動域練習や歩行練習の実行を看護師や家族にしてもらう このようなことを通じて、効果的なリハビリテーションを実現する必要がある。

もし、関節可動域練習や歩行練習が理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の業務独占であれば、看護師や家族にそれらの実行をお願いすることはできなくなってしまう。

現に、在宅において理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に注射や創傷処置の依頼がされることはないし、行うこともない。

もしこれらができることになれば、看護業務の質も向上する可能性があるが、法律的な壁があり行うことはできない。 160403

つまり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が業務独占ではないことは、地域包括ケアが推進される時代において、患者や利用者にとって大きなメリットであると考えられる。

リハビリテーション分野と看護・介護分野がオーバーラップする部分も多い。

ポジショニング
呼吸や循環器のリハビリテーション

車椅子のシーティング
骨盤底筋群の機能不全
テーピングなどの固定技術
トランスファー
口腔ケア
住宅改修 など・・・
沢山の領域でリハビリテーション分野が看護・介護分野に貢献することができる。

このように業務独占をしていないことによる患者や利用者、看護、介護分野のメリットはあるが、一部の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとってはデメリットである。

他職種に対してリハビリテーションに関する必要性、知識、技術を伝授できないセラピストは、業務独占ではないことのメリットを活かすことができない。

そのようなセラピストは個別リハビリテーションでは、能力を発揮することができるかもしれないが、地域包括ケアシステムの中で生き残ることは難しくなっていく。

業務独占ではないことのメリットを活かせるセラピストがこれからの時代では、求められている。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 助教

起業・パラレルキャリア・年収増というキラキラワードをささやくキャリアデザインの本質をしらないPT・OT・STが急増中

起業
パラレルキャリア
年収増加
というキラキラワードをささやきまくりの自称キャリアデザインファシリテーターのPT・OT・STが増えている(下図)。

Facebook、Instagram、Twitterでも、キラキラワード全開でセラピストのキャリアデザインをあおりまくる人物がいる。

そういう人の特徴は、自分が新しい時代におけるキャリアデザインのパイオニアであると自己陶酔している事が多い。

そして、自分のキャリアを他人に押しつける行為を遠回しにしている。

また、相手が自分の考えに反論してくると、別に押しつけるわけではないとスケープゴートな発言も出てくる。

こういう人は、キャリアデザインの本質を全く理解していない。

キャリアデザインとは、自己概念の生成の他ならない。

自己概念とは、自身の興味、関心、価値観であり、自身のアイデンティティーの基板となるモノである。

自己概念の生成が出来ていないから人は、仕事や人生での悩みが多くなる。

どんなに苦しいことであっても、それが自己概念を満たすモノであれば、人は歯を食いしばって踏ん張り、その状況を楽しむことが出来る。

よって、自己概念の生成なしにキャリアデザインを進めることは極めて危険である。

起業、パラレルキャリア、年収増はキャリアデザインのほんの一部の手段であり、目的ではない。

やたら、起業、パラレルキャリア、年収増をあおる人はあなたを利用したいだけかもしれない。

もし、そんな人がいれば、その人とは距離を置いて縁を切ることをお勧めする。

まずは、あなたの興味、関心、価値観を大切にして生きることがキャリアデザインの第一歩である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

イラスト提供
福山真樹

理学療法士×イラストレーター
医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
問い合わせ先
Facebook https://www.facebook.com/Masaki.Fukuyama.PT
メール  big.tree.of.truth@gmail.com
Twitter  https://twitter.com/PT_Fukuyama
Instagram https://www.instagram.com/masaki.fukuyama

PT・OT・ST協会の認定資格を取得するべきか?について、特定看護師の事例で考える

現在、日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会より認定資格が発行されている。

専門・認定理学療法士
専門・認定作業療法士
認定言語聴覚士
などの認定資格が各団体より所定の研修や試験をパスした者に付与されている。

今のところ、診療報酬や介護報酬上の優遇はなく、資格取得の目的や意義は、「高い専門性の確保という自己研鑽の領域」を超えていないと言える。

認定資格を取得せずとも、高い専門性を得る方法が他にもあるため、多くのPT・OT・STは認定資格を取得するべきかについて、悩んでいるのが実情である o064009601291085557574認定資格をとるべきか?否か?を考える上でひとつの判断材料になるものとして、看護師の「特定看護師」の事例が挙げられる。

特定看護師は通称で、正式には「保健師助産師看護師法」において、今までは「診療の補助」に含まれないものとされてきた特定の医療行為を、医師の指示を受けて「診療の補助」として実施することができる看護師のことを指す。

特定看護師は業務範囲を主治医より包括的指示を受け、自己の判断により、医療行為を実践するという極めて新しい類型の看護師である。

特定看護師になるためには
①日本看護協会が認定する当該分野の認定看護師の資格を有すること
②認定看護師の資格取得後、5年以上の経験を有すること
③当該分野の認定看護師としての実践を積んでいること
④研修を受けるに当たり、所属施設の看護部長あるいは施設長の同意を得ていること ⑤出張および研修等で研修中の身分が保証されていること
という5要件を満たした上で、厳しい研修を受ける必要がある。

研修修了者には、受講した研修機関より、研修修了証が発行が発行され国の法律に則り、特定看護師の身分が付与される。

つまり、特定看護師は公益法人等の法人より認定されている資格が土台となり、国による新たな資格の付与に繋がるという事例である。

PT・OT・STの業界において、特定看護師のような立場が将来、生まれるかどうかわからない。

しかし、このような事例があることを知った上で、認定資格を取得するか、否かを判断するべきである。

自分の仕事に対する価値観と国の施策を十分に把握した上で、人生や仕事の戦略を考え、資格取得の有無を考えるべきであろう。

執筆者
高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士 認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士 修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

PT・OT・STのキャリアデザイン ホランド理論「ホランドタイプ」

個人のパーソナリティと仕事環境が適合した場合に最適なキャリアが選択できるという理論である。

キャリアとはパーソナリティーと仕事の相互作用の結果から得られるという視点で構築された理論である。

つまり、この理論では、自分の性格や興味と一致することが、満足度の高いキャリア選択になると考えている。

当然、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士という同じ専門職であっても、性格と興味は各人で違う。

よって、同一の専門職でもそれぞれの性格や興味に適合した仕事の分野で働くことがより良いキャリア選択になる。

ホランドは、生涯に渡り、個人の性格的特性と個人の活動や興味との関係の研究を行い、その研究より以下のことが示された。
1)幼少期からの経験を背景として青年期にかけて、個人の興味や能力に関連する価値観が急速に発達する。
2)価値観とは自分自身の行動を選択する時に、強く影響する信念である
3)価値観の発達により、人は6つのタイプの自己概念を有するようになる。
4)ホランドタイプは、興味、能力、価値観がある分野を示し、自身の自己概念を示すものであり、その分野における活動に強く興味を持つ。
ホランドタイプ

6つのホランドタイプ

 

この20年間、PT・OTの給与水準が上がっていない事実

1995年から2016年までの約20年間、理学療法士、作業療法士の給与水準は全く上がっていない(下図)。

理学療法士に至っては2.42%のダウンである。

医師、歯科医師、薬剤師、看護師の給与水準が軒並み上昇する中、理学療法士・作業療法士の冷遇は顕著である。

給与水準は、各職種の需要と供給や診療報酬、介護報酬により決定されることから、理学療法士、作業療法士の社会的立場は決して高いものではないことが明白である。

しかし、理学療法士、作業療法士は、「自らが給与水準が上がりにくい職種」であることの認識が乏しい。

認識の乏しさは危機感の低下を招く。

危機感のない人間には必ずと言っていいほど「ゆでがえる現象」が認められる。

ゆでガエル現象
環境の変化には気がつきにくく、何もしないでぼーっと過ごすことで最終的に致命的な状況に至る

危機感がなければ、当然、何もしないでぼーっと過ごす時間が増える。

その間にも、社会はどんどん変化していく。

気づいたら、社会から評価されないという致命的な状況に至る。

地域包括ケアシステムの導入
在宅リハビリテーションの推進
AIやロボットテクノロジーの進展
労働人口減少
など、社会環境の変化はどんどん進む。

いま、理学療法士、作業療法士はちゃんと自分たちの置かれている状況を真正面から受け止め、ポジティブな危機感をいただくべきである。

執筆者 高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士 認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士 修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科