多死社会がPT・OT・STの役割を変える

近い将来、年間160万人が死亡する時代となる。

高齢化ではなく、超高齢化の日本では状態が悪い高齢者の方が必然的に増えてくる。

在宅サービスや施設サービスの介護度は年々高まっており、医療や介護の質の向上は必須となっている。

このような背景から施設や在宅におけるリハビリテーションにも変化が生じている。

右肩上がりのADLの支援だけではなく、看取りを前提とした右肩下がりのADLの支援が必要となってきている。

重傷者や看取り患者では、ADL改善を目指したリハビリテーションではなく、QOLの改善を目指したリハビリテーションが必要となる。

しかし、PT・OT・STは終末期リハビリテーションの知識や経験は乏しく、多くのセラピストは終末期患者を前に悩みながらリハビリテーションを行っている(下図)。

(無断転載禁止)

終末期リハビリテーションでは
身体的苦痛
社会的苦痛
実存的苦痛
精神的苦痛
に対して適時対処しなければならない。

しかし、PT・OT・STはこれらの分野について包括的に学ぶ機会は少ない。

2000年から2020年までは急性期・回復期リハビリテーションの制度設計が行われたが、2021年以降は終末期リハビリテーションの制度設計が一気に進むだろう。

このことは、現職で働くPT・OT・STのキャリア設計にも大きな課題となってくる。

終末期リハビリテーションの展開に目が離せない。

 

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

イラスト提供
福山真樹

理学療法士×イラストレーター
医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
問い合わせ先
Facebook https://www.facebook.com/Masaki.Fukuyama.PT
メール  big.tree.of.truth@gmail.com
Twitter  https://twitter.com/PT_Fukuyama
Instagram https://www.instagram.com/masaki.fukuyama

 

セラピストも学び直しが必要な時代

セラピストの過剰供給
社会保障費の圧縮
医療機関や介護事業所の飽和
などにより、セラピストの労働市場はどんどん厳しくなっている。

そのため、セラピストには労働市場を生き抜くだけの知性や能力が必要となっている。

現在、政府は社会人の学びなおしに関する支援を強化している。

そもそも日本人は、一度、社会人になると専門学校や大学などの教育機関で「学び直し」を受ける習慣がない(図1)。

「学び直し」が習慣化されていない理由は次のようなことが考えられる。

終身雇用の神話を信じている人が多い
国家資格取得者は永遠に雇用があると信じている
好きなことを仕事にしていくと言うマインドが少ない
我慢して仕事をすることを美徳と考えている

これらの理由から、あえて違う世界に飛び出して勉強をするインセンティブが作用しないと考えられる。

学び直し図1 2018年7月30日 日本経済新聞より抜粋

しかし、現実は次の通りである。

既に終身雇用制は崩壊している
国家資格取得者も余りつつある
我慢して仕事をしていると鬱になる

よって、セラピストの学び直しの必要性は高い。

大学院でより専門性を高める勉強を行う
専門学校で他の医療資格を取得する
社会福祉士や臨床心理士などのリハビリテーションと関連する資格を取得する
財務会計やマネジメントに関する学びを深める
などは、現実的な学び直しの選択肢である。

日本人の働き方改革は、学び方改革の一面を持つ。

働きながら自分を成長させ、どんどん新しい自分になるために、どんどん学びを深めていく。

そんな時代に突入している。

執筆者
高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士 修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

人命に関わることを軽視して何がリハビリテーションなのか?

筆者は全国各地で在宅リハビリテーションのコンサルティングや大阪府内で訪問リハビリテーションを提供している。

そのような活動をしていると驚きのセラピストに出会うことがある。

それは、動作分析だー、下肢の筋力だー、歩行練習だー、活動だー、参加だーと言っていろいろな運動や活動を利用者に提供するのだが、利用者がそれどころでないのだ(下図)。

在宅療養利用者の高齢化や重症化のために、人命に関わる症状が生じている人が多い。

呼吸不全
心不全
糖尿病
膠原病
消化器疾患
がん
などハイリスクな在宅療養利用者が増えている。

(無断転載禁止)

このような利用者に対して理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が提供するべきことは、リスク管理とリスク緩和である。

しかし、ADL向上や活動・参加の知識や経験のみに凝り固まった理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとってリスク管理とリスク緩和のハードルは高い。

そのため、人命に関わるような状況であっても、それらの軽視して運動療法を提供しようとする。

しかし、多くの場合、利用者に運動療法を拒否をされ何もすることができないことが多い。

人命に関わることを軽視して、何がリハビリテーションなのだろうか。

今の状況では、訪問リハビリテーションに携わるセラピストが増えていけばいくほど、人命を軽視するリハビリテーションが行われる可能性が高い。

卒前・卒後教育の見直しやセラピストのメンタリティーの変容が求められる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

イラスト提供
福山真樹

理学療法士×イラストレーター
医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
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セラピスト主導による保険外サービスが少ない事による弊害

診療報酬と介護報酬の単価の頭打ちにより医療法人や介護事業所の売上は頭打ちになっている。

そのため、多角化による事業拡大を模索する医療法人や介護事業所が増えている。

保険外ビジネスとは文字通り、医療保険、介護保険を用いないサービスである。 現在、散見される保険外サービスは以下のようなものがある。

地域のコミュティーカフェ
トレーニングジム

カルチャースクール
家事代行会社
配食サービス
自費リハビリテーション

これらの事業をイチから始める場合もあるが、近年はフランチャイズへ加盟をすることが増えている。

フランチャイズを利用すれば、コストはかかるが経営ノウハウが手に入り、事業リスクを低減化させることができる。

様々なフランチャイズも増えているため、医療機関などの起業が保険外ビジネスに参入することが珍しくない時代になっている。 ea87bcb082925d58877bbbe0e3e85c20_s しかし、残念ながら、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の保険外サービスへの参入はいまだ一般的なことではない。

残念ながら、企業主導で保険外サービス行われており、セラピストの起業による保険外サービスは圧倒的に少ない。

この原因は、セラピストの資本力が少ないなどが挙げられるが、基本的にはセラピストの起業家精神が乏しいことが根本原因だと考えられる。

リハビリテーションによる保険外事業が企業主導で進めば、結局、企業に雇われるセラピストが増えるだけである。

それでは、セラピストの考えるリハビリテーションの実現は厳しいだろう。

セラピストが真に社会に貢献するためには、セラピスト自身による保険外サービスの実現が欠かせない。

執筆者 高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士 認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士 修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

既定路線の先には輝かしい未来は築けないセラピスト業界

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の業界は大きなパラダイムシフトを迎えている。

医療から介護への流れ 、そして、自費リハビリテーションや自費ヘルスケアという新しい分野の誕生。

また、近い将来、発展するAI、ロボット、ITを用いたリハビリテーション関連サービス これらの時代の変化は、セラピストの働き方へ大きな変革を与える。

しかし、残念ながらセラピストの働き方に対する教育は不十分ではない。

養成校では従前どおりの医療モデルを中心とした教育が行われ、医療機関では一日18単位を算定することに重きが置かれている。

また、職場で新しい取り組みをしている人は「変わっている人」と思われる風潮がある。 change

セラピストの働き方が変わる風土の醸成には程遠いと言ってよい。

しかし、残念ながら今のまま何もせず働いていると、大きな時代の変化が生じたときに自分の知識や技術がその時代には使えないものとなり、自身の仕事人生が暗転する可能性が高くなる。

既定路線の上を歩けば歩くほど、綱渡りとなるのが今の日本の社会情勢である。

今のセラピストに最も必要なのは危機感である。

危機感はあらゆる行動の源泉になる。

危機感への感度が低いことはこれからの時代は致命傷になる。

あなたの危機感はどれほどであるか?

今、改めて考えてみてほしい。

執筆者 高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士 認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士 修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科