99%の理学療法士・作業療法士等の医療従事者は自分で決断して、その職場に勤務し、そして、しばらく経つと職場の不満を言う

多くの理学療法士・作業療法士・看護師・介護士は、自らの意思で就職希望先に問い合わせ、自らの足で面接に行き、自らが書いた履歴書を提出して、自らの意思で席に着席し、自らの意思で面接を受ける。

そして、内定通知が来たら自らの言葉で、内定の受託を就職希望先に伝える。

就職するまでの過程は、すべて自らの意志である。

しかし、入職後、数か月から1年で突如、「不満」を言い出す。

この施設は〇〇だからダメなんです
こんなやり方は私は理解できない
これは私の仕事ではない
あの院長は〇〇なんでどうしようもない
事務長が〇〇をしろといってきたが,そんなこと嫌だ
などなど・・・・・

「不満」は言っても構わないが、「不満」を言っても現状は何も変わらない。

職場は永遠に現状維持される。

人間は、常に「不快な状況」を脱して「快な状況」を作る動物である。

しかし、不満ばかりを言っている人にはそんな原理原則も作用しない。

「不満」を言い散らしている人で、自ら行動する人はほぼ皆無である。

自ら決断して入社したのだから、自ら決断して退職するとか、現状を変えるとか、自分の意見を貫くとかすればいいのに、その決断には絶対に至らない。

つまり、結局のところ、「不満を言っている自分が大好き」だし、「不満を満足に変える意思」もない。

こういうことを言うと、「就職した後に色々とよくないことが分かった」「面接時に聞いた事と違うことが分かった」という声が聞こえてくる。

しかし、「面接時に聞いたことと違うことが職場内で起これば、それを理由に退職すればいい」と言いたい。

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面接時と違ったことが起こって、それを許さない自分がいるなら辞めれば良い。

結局、不満が生じる事態を許せる程度の意思やアイデンティティしか持っていないのだ。

雇い主は、「面接時に様々なことの詳細を聞かれなかったから、答えなかっただけだし、給料をもらっているのだから、文句を言わずに働いてほしい」と考えているだろう。

自分で就職希望をして、自分で入社の決断をしたのだから、「不満」があれば退職するか、その不満を消し去る行動を取ればよい。

入社の決断は自分でしておいて
不満の解決は自分でしない。

そんな未熟な医療・介護従事者は社会資源としても活躍できない。

職場づくりに活きる理学療法・作業療法・言語聴覚療法の価値は高い

筆者のクライアント先の医療機関や介護事業所が抱える様々な問題の中に、医療や介護現場における「質の低いケア」が挙げられる。

質の低いケアの中身を確認すると以下のようなものが挙げられる。

口腔ケアが不十分である

食事介助がいい加減である

移動介助技術が低く、腰痛を発生している職員が多い

褥瘡を持つ利用者への姿勢に難渋している

拘縮が予防できない

トイレや入浴時に転倒が多い

認知症患者のBPSDが進んでいる

痰の多い利用者への対応ができてない

誤嚥性肺炎患者が多く退所が多い

車椅子の姿勢が悪い利用者が多い

福祉用具・自助具・装具の使い方がわからない

レクレーションがマンネリ化している

在宅復帰に向けた在宅の環境調整が難しい

これらの内容は全国津々浦々の医療機関・介護事業所にあるのではないだろうか?

質の低いケアがもたらす影響は大きい。

従業員の仕事への熱意が低下しケアのネグレクトや虐待につながることや、業務内容から人間関係の悪化や退職につながることもあるだろう。

技術の高さは個別のケアの質を高めるだけでなく、「職場の空気や文化」にも影響を与えるものである。

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ほとんどの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は目の前の患者や利用者のために働いている。

「よりよい職場を作る」ために働いている人はどれぐらいいるだろうか。

上記した様々な問題の解決に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は貢献できることができる。

多職種が横断的に働く地域包括ケア時代においては、職場づくりの理学療法、作業療法、言語聴覚療法が重宝される。

あなたの理学療法、作業療法、言語聴覚療法は「職場づくり」に役に立っているだろうか?

そこに、今後の働き方のヒントがある。

 

 

 

 

 

「誰でもできる仕事では賃金は上がらない」という極めてシンプルな市場原理が、医師、療法士・看護師・介護士の働き方を変えていく

医療保険・介護保険を取り扱う業界で働いている人たちの給料の財源は、社会保障費から捻出されている。

ご存知の通り、日本の債務超過は1000兆を超えており、従来のような手厚い社会保障を提供することは困難となっている。

そのため、近年の医療・介護の政策は「選択と集中」が推進され、より重症な人、より介護が必要な人、支援が困難な人に社会保障費が回されるようになっている。

逆説的に考えると、より重症な人、より介護が必要な人、支援が困難な人へ対応できる場合は、比較的、金額の高い社会保障費、すなわち診療報酬・介護報酬を得ることができると言える。

近年、進められている「選択と集中」の代表例は以下のようなものである。

急性期病院・療養型病院の重症化
在宅における終末期医療の推進
通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションの心身機能・活動・参加の推進
回復期リハビリテーション病棟の在院日数短縮と効果的なFIM獲得
精神病院の在宅復帰促進
通所介護における認知症・重症利用者・リハビリテーションの促進
地域包括ケア病棟における地域連携の実践

これらの内容は、20年前の医療・介護業界では全く求められていなかった。

また、各項目を達成するためには非常に難易度の高い技術が医療・介護従事者には求められる。

したがって、医療技術に長けた医療従事者、介護技術に長けた介護従事者の確保は、今日の医療機関や介護事業所にとっては大きな課題である。

市場原理から考えると、特定の市場で必要とされる人材には高賃金が払われやすい。

つまり、今の選択と集中の政策により作り出される市場で、必要とされる人材になれば高賃金という優遇を得られる可能性は高い。

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しかし、多くの医療・介護従事者はマーケット感覚などなく、ただ、目の前の臨床やサービスをこなしている。

マーケット感覚の乏しい医療・介護従事者は、「医療・介護従事者であればだれでもできる仕事」を一生懸命にこなしている可能性が高い。

「誰にでもできる仕事」が不要だとは言わない。

組織においては、「誰にでもできる仕事」を一生懸命してくれる人は必要である。

優秀な人や管理職が脚光を浴びることができるのは、その裏で支える人たちの存在があるからである。

ただ、「心底、賃金を上げたいと考えている人」は今の自分が「誰にでもできる仕事」をしているかどうかについて、真剣に考えたほうがいい。

医療・介護従事者で国家資格を持っているとはいえ、医療・介護技術のコモディティー化が進んでいる。

市場の状況を冷静に分析する力。

この能力がこれからの医療・介護従事者には必要である時代になっている。

 

セラピストの職域拡大の鍵は、「企業との連携」にある

理学療法士等のセラピストの過剰供給が顕在化している。

既存の医療・介護分野の事業モデルでは、毎年、1万人以上のペースで増え続ける理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の雇用を継続的に維持することは困難である。

65歳以上の高齢者の数は、2042年でピークを迎え、その後急速に減少していくと予想されている。

また、2040年以降の日本国全体の人口減少も著しくなる。

つまり、これからの未来では理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の雇用の場はジリ貧となる。

したがって、現状の医療・介護分野の事業モデルだけでなく、セラピストが活躍できる「場」を作って行かなければ、セラピストの雇用の絶対数は減少する。

そのため、現在、セラピストの各種職能団体より、「新たなセラピストの活動の場」が提案されている。

しかし、現実的には、「新たなセラピストの活動の場」を現場の「イチ理学療法士」・「イチ作業療法士」・「イチ言語聴覚士」が開拓することは極めて難しい。

新しい職域を開拓するためには、優秀なマーケティング能力が必要である。

しかし、マーケティングに関してセラピストは学ぶ機会は皆無であり、そもそもマーケティングの意味さえもわからない人がほとんどである。

 

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そのような状況で、「新たなセラピストの活躍の場」を作るには、どのようにすれば良いか?

それは、「企業と連携してセラピストの能力を社会に活かす」ということである。

企業は、資金力・販促ルート・既存顧客・人脈などを持っている。

その企業にセラピストの能力を活用してもらい新たなサービスや商品を作り出すことが、最も効率の良い方法である。

また、セラピストが新しい取り組みをした場合、様々なところから「イチャモン」がつく。

そのような「イチャモン」が発生しても、企業の場合は顧問弁護士などを通じて法的な立場から対応をしてもらえるというメリットがある。

セラピストの能力が活かせる業界との接点を持つためには、企業展示会、異業種交流イベント、ヘルスケア関連の学会などに参加すると良い。

セラピストが企業と連携をする。

そんな時代が10年後には常識になる前に、今から行動することをオススメする。

 

リハビリテーションの視点は、医療・介護事業のマネジメントをより良好なものに変えることができる

理学療法士や作業療法士という仕事は、医療の世界では後発組である。

現在、医師は31万人、看護師は准看護師も含めると142万人である。

医師法は1906年に、保健師助産師看護師法は1948年に制定されており、医療業界における数の力と歴史的な背景は他の職種を圧倒している。

したがって、今までの医療における制度設計や伝統的なしきたりは、医師と看護師の影響を強く受けていると言っても過言ではない。

事実、医師と看護師の業務範囲は大きく、その権限も強い。

診療報酬における施設基準要件や加算要件にも、医師と看護師の配置が圧倒的に他の職種より多い。

よって、医療における様々なマネジメントは、医師や看護師の考えや思想が反映されているものが多い。

医療におけるマネジメントに理学療法士・作業療法士の考えや思想が反映されにくい状況は今でも続いている。

筆者は2014年から、独立系の医療・介護コンサルタントとして活動している。

独立する以前も、大阪府内にある医療法人で8年間トップマネジメントを経験した。

これらの経験から言えることは、「理学療法やリハビリテーションの視点は、医療・介護事業のマネジメントをより良好なものに変えることができる」というものである。

地域包括ケアシステムというのは、いわゆるリハビリテーションの考え方と同義語である。

WHO(世界保健機関)は1981年にリハビリテーションを以下のように定義している。

リハビリテーションは、能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。
リハビリテーションは障害者が環境に適応するための訓練を行うばかりでなく、障害者の社会的統合を促す全体として環境や社会に手を加えることも目的とする。
そして、障害者自身・家族・そして彼らの住んでいる地域社会が、リハビリテーションに関するサービスの計画と実行に関わり合わなければならない。

まさに、地域包括ケアシステムの考えと同じであり、地域包括ケアシステムの起源はリハビリテーションであると言っても良い。

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直近の診療報酬改定・介護報酬改定は、「地域包括ケアシステム」を強く推進しており、リハビリテーションの概念を医療・介護に文化的なレベルまで浸透させようとしているものである。

疾病構造や社会保障システムの変化は、医療・介護機関のリハビリテーションの実践を要求するようになった。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が経営や運営にかかわる意味はここにある。

経営や運営にリハビリテーションの視点を導入していくことが、診療報酬、介護報酬上の恩恵を受けることができ、さらに利用者・患者満足度も高い状況を作り出すことができる。

今こそ、経営・運営に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がかかわるタイミングである。