PT・OT・STと看護師の連携は共通言語の理解が第一歩

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が看護師と連携をしなければならないシチュエーションは増えている。

特に、重症度の高い利用者や終末期対応が必要な利用者においては看護師との連携・協働は欠かせない。

しかし、連携・協働のハードルは高い。

当たり前であるが、看護師と理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は共通の教育を受けておらず、それぞれの分野で使用する言語が異なる(下図)。

また、各職種で取得している知識や技術も異なる。

そのため、連携・協働の実現には看護師と理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の双方の努力が必要である。

(無断転載禁止)

地域包括ケアシステムが伸展する社会では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はスペシャリストとして専門的な分野を追求するだけでなく、ジェネラリストとして他分野の知見を学んでいく必要がある。

ジェネラリストとして自己研鑽を積んでいなければ、イラストの事例のように看護師との実質的な連携が不可能になる局面が必ず現れる。

看護師との連携が出来ないことで最も不利益を被るのは利用者である。

地域包括ケアシステムは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の従来の在り方を大いに変節させている。

これからは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が社内研修などでも看護師や介護職などの他分野の学習をする機会を設け、看護師との共通言語を一つでも多く増やすべきである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 助教

イラスト提供
福山真樹

理学療法士×イラストレーター
医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
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目先の診療報酬改定だけでは見えない将来のリハビリテーションの課題を考えることの大切さ

目先の診療報酬改定に対応することは重要である。

なぜならば、診療報酬改定は改定後の数年間の医療機関の経営に大きな影響を与えるからだ。

リハビリテーション部門や経営陣にとって、施設基準や算定項目を精査し、組織の持つ能力の範囲で最大限の診療報酬上の収入を得られるよう努力することは責務である。

しかし、目先の診療報酬改定以上に取り組まなければならいことがある。

それは、将来的に必要とされるリハビリテーションサービスを予測し、そのサービスを開発・運用することである。

将来的に必要とされるリハビリテーションサービスに取り組むことで、他医療機関のサービスと差別化することができ、質の高いリハビリテーションを行うこと ができる。

さらに将来的に診療報酬改定で評価されれば、経済的なメリットを得られるなど医療機関にとって経営上の大きなアドバンテージが手に入る。 915220ac84494934e00fca68a8790899_s では、どのようにすれば、将来的に必要とされるリハビリテーションサービスを予測できるだろうか?

まず、どの医療機関でも出来ることは、自院のリハビリテーションサービスにおける問題点を探り出し、その解決のためのソリューションを検討することであ る。

しかし、これを行うためには、洞察力の高い理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が必要であるため、人材の能力が大きく影響する。

もう一つの方法は各種団体が国に要望している内容を精査することである。

各種団体は各職能集団や医療機能集団で構成されており、各分野における課題を常に集約している。

その集約した内容を国に評価してもらうために、定期的に要望書を提出している。 その内容を確認すれば、将来的に評価される可能性高いリハビリテーションサービスが予想できる。

例えば、各種団体は以下のような項目を国に要望している。

呼吸リハビリテーションや心大血管リハビリテーションで言語聴覚士によるサービスを評価して欲しい

摂食機能療法の適応疾患の拡大を行って欲しい 病棟セラピストの配置をより評価して欲しい

看護師と理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が連携して総合的な訓練を行うことを評価して欲しい

認知症に対応するために、認知症チームケアという概念を確立し、そのサービス提供を評価して欲しい

など、その他多くの要望内容が各団体より提言されている。

これらの内容を精査し、自院にとって意味のあるものに取り組むことは、先述したようなメリットがあり、大変意味のあることである。

目先の診療報酬改定は大切 しかし、その先にある診療報酬改定はもっと大切

こういった意識を理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は持たなければならない時代であることを自覚しなければならない。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 助教

求められるセラピストの技能は時代とともに変化し、今後は低ADL者対応スキルが必須となる

地域包括ケアシステムは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の社会的な役割を大きく変容させている。

地域包括ケアシステムでは、医療や介護の分業制が徹底されており、経済的効率の高いシステムの構築が進んでいる。

病院、施設より在宅で医療や介護を提供する方が経済的効率が良いため、在宅復帰支援と在宅療養支援は医療介護政策の柱である。

在宅生活を継続するといずれ人間は、低ADLになる。

しかし、低ADLな人であっても介護保険制度の様々なサービスにより、長期間に渡り、在宅生活が可能となっている。

そのため、訪問リハビリ、訪問看護、通所リハビリ、通所介護に勤める理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、低ADL向けのサービスコンテンツが必要となっている。

しかし、低ADL向けのサービスコンテンツが乏しい理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は非常に多い。

下図のように車椅子シーティングの知識や技術が乏しければ、的外れなリハビリテーションの提供を行うことになる。


(無断転載禁止)

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、養成校や実習を通じてADLの予後が良い症例を前提に知識や技術を学んでいる。

簡単に言うとADLが低下した人を前提とした知識や技術が極端に乏しいと言える。

しかし、在宅療養をしている人は将来必ず低ADLになる。

その時に、何も提供できないと信頼を一気に失うだろう。

医療や介護の環境変化に合わせて知識や技術を帰ることができるセラピストしか市場は評価してくれない。

地域包括ケアシステムの中で、生き残るためには知識や技術の幅を増やすことが大切である。

投稿者
高木綾一

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理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が業務独占ではないことはデメリットではない

名称独占資格
資格がなくてもその業務に従事する事はできる。

しかし、資格取得者だけが資格名称を名乗ることができる。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はすべて業務独占資格ではなく、名称独占資格である。

つまり、他職種が理学療法・作業療法・言語聴覚療法を行うことは法律で禁止されていない。

看護師が関節可動域練習 
介護福祉士が食事練習 
医師が歩行練習 
看護助手が摂食嚥下練習 
家族が筋力トレーニング

を行うことは違法ではない。

もちろん、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に認められた 診療報酬や介護報酬上の所定点数は算定できないが、業務を行うこと自体は問題ない。

一般的に業務独占ではない状況は、他職種からの代替サービスが可能となることから「ネガティブなこと」と捉えられている。

医師や看護師は名称独占・業務独占資格であり、医師や看護師以外の他職種が手術をしたり、注射をしたりすることはできない。

したがって、医師や看護師の業務には厳然たる参入障壁があるため、医師や看護師の職業的パワーは強いと言える。

はたして、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が業務独占をしていないことは、デメリットなのだろうか? 117903 現在、地域包括ケアシステムが推進され、入院医療から在宅医療、病院から地域へのシフトが進んでいる。

地域包括ケアシステムでは、介護保険を利用して、ほぼ在宅で過ごし、必要に応じて病院や施設に入院、入所するという仕組みの構築が進められている。

在宅では、病院や施設のように理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による個別リハビリテーションを多く提供することはできない。

したがって、各専門職や関係者によるリハビリテーションアプローチも重要となってくる。

現実的には、訪問リハビリテーションを週1回しか提供できない利用者は多い。

そのような場合、関節可動域練習や歩行練習の実行を看護師や家族にしてもらう このようなことを通じて、効果的なリハビリテーションを実現する必要がある。

もし、関節可動域練習や歩行練習が理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の業務独占であれば、看護師や家族にそれらの実行をお願いすることはできなくなってしまう。

現に、在宅において理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に注射や創傷処置の依頼がされることはないし、行うこともない。

もしこれらができることになれば、看護業務の質も向上する可能性があるが、法律的な壁があり行うことはできない。 160403

つまり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が業務独占ではないことは、地域包括ケアが推進される時代において、患者や利用者にとって大きなメリットであると考えられる。

リハビリテーション分野と看護・介護分野がオーバーラップする部分も多い。

ポジショニング
呼吸や循環器のリハビリテーション

車椅子のシーティング
骨盤底筋群の機能不全
テーピングなどの固定技術
トランスファー
口腔ケア
住宅改修 など・・・
沢山の領域でリハビリテーション分野が看護・介護分野に貢献することができる。

このように業務独占をしていないことによる患者や利用者、看護、介護分野のメリットはあるが、一部の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとってはデメリットである。

他職種に対してリハビリテーションに関する必要性、知識、技術を伝授できないセラピストは、業務独占ではないことのメリットを活かすことができない。

そのようなセラピストは個別リハビリテーションでは、能力を発揮することができるかもしれないが、地域包括ケアシステムの中で生き残ることは難しくなっていく。

業務独占ではないことのメリットを活かせるセラピストがこれからの時代では、求められている。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 助教

リハビリテーションの対象は利用者だけでなく、家族・介護者・関係者も含む件

病気や障害を持つ高齢者が在宅生活を継続することが当たり前の世の中になった。

そのため、在宅系リハビリテーションのサービスの普及は著しく、近い将来、セラピストの主戦場は在宅になることは間違いない。

病院や施設と在宅におけるリハビリテーションの目標は異なることが多い。

在宅リハビリテーションの目標に一つに、「在宅生活の継続」が挙げられる。

在宅生活の継続が困難になる理由は様々あるが、その一つが「家族や介護者の介護疲れ」がある。

時に、「介護疲れ」は著しい精神的ストレスを家族や介護者に与え、最悪なケースとして「介護殺人」などの事例も生じている。

そのため、「介護疲れ」の緩和は重要である。

リハビリテーション専門職はADLやIADLの専門職であることから、家族や介護者への専門的な提案や助言が期待されている。

しかし、実際は下図のように家族や介護者に適切な提案や助言が出来ないセラピストも多い。


(無断転載禁止)

家族や介護者に適切な提案や助言をするためには、生活関連動作やトランスファーに関する幅広い知識が必要である。

しかし、養成校や卒後教育ではこのような領域を学ぶ機会は少ない。

したがって、在宅に関わるセラピストは主体的に家族・介護者支援を学ぶ必要がある。

在宅分野を主戦場とするセラピストは、家族・介護者の目線を常に意識してほしい。

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高木綾一

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関西学院大学大学院 経営戦略研究科

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