2022年度診療報酬改定 かかりつけの医療機関の定義が明確化された機能強化加算の新要件

かかりつけ医機能を評価するために、2018年度の前回診療報酬改定で新設された
機能強化加算の要件変更が2022年度診療報酬改定にて行われた。

現在の機能強化加算の内容は次の通りである。

目的
かかりつけ医機能を持つ診療所を評価する

点数
初診料の算定時に80点の加算が可能である

対象患者
初診料を算定する患者

届出要件
次のいずれかの届出を行っていること
① 地域包括診療加算
② 地域包括診療料
③ 小児かかりつけ診療料
④ 在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所に限る)
⑤ 施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所に限る)

このように加算や管理料を届けていれば自動的に算定できる加算であるため、「かかりつけ機能の強化」という実効性がない加算であると業界内では批判されていた。

そのため、2022年度診療報酬改定では機能強化加算の要件が次のように強化された(下図)。

 

これらの詳細な内容について自院のホームページに明記することも求められている。

特に、他の医療機関における医薬品の把握や診療時間外の緊急対応については在宅医療を本格的に行っていない診療所にとってはハードルが高いものとなる。

また、上記の要件に加えて
直近1年間で「地域包括診療加算2の算定患者3人以上」「往診料・訪問診療料の算定回数合計が3人以上」のいずれを満たすこととの実績基準や常勤医師による「警察医との協力」「乳幼児健診の実施」「予防接種の実施」「地域ケア会議への出席」も要件化された。

今回の改定では、かかりつけ医として求められる具体的な機能が明記されたと考えられる。

特に、新型コロナの影響により在宅診療や予防接種の実施は重要なテーマとなっているため訪問診療料や予防接種の要件が設けられた。

高齢化が伸展する日本では診療所の役割の強化は必須である。

今回の機能強化加算の要件の厳格化はかかりつけ医としての真価が問われる時代に入ったことを示唆すると言えよう。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

2022年度診療報酬改定に向けて精神疾患患者とリハ抑制の議論が再燃

令和3年8月25日に開催された中央社会保険医療協議会では「訪問看護の利用者の激増」に対する議論が行われた。

一部の委員からは「訪問看護の利用者の激増は、訪問看護サービスに適していない状態の患者が相当数いるのではないか?」という疑念が持たれている。

確かに、訪問看護の利用者は激増している(下図)。

(令和3年8月25日 中央社会保険医療協議会 資料)

特に精神疾患患者の利用者数の増加が著しい。

近年、精神科訪問看護基本療養費を算定する事業所が増えている。

これは訪問看護事業所が増えてきたことにより、利用者の獲得の難易度が上がったため、精神疾患患者の利用者獲得を行う事業所が増えたことや30代から50代の精神疾患が増えており、その在宅での対応のニーズが増えたことが関係している。

ただ、本当に効果的に精神疾患患者に対する訪問看護サービスが適切に行われているか疑念が持たれている。

2020年度診療報酬改定では精神科訪問看護の算定要件となる「GAF尺度」が導入された。

GAF尺度とはGlobal Assessment of Functioningの略で全体的評定尺度と呼ばれるものである。

成人の社会的・職業的・心理的機能を評価するのに用いられている1~100の数値スケールで、数値が大きいほど精神面について健康であると評価される。

2022年度診療報酬改定では、GAF尺度が適切に運用されているかについて議論が行われ、精神疾患患者の訪問看護利用抑制について検討される可能性がある。

また、訪問看護事業所の理学療法士等のリハ職が占める割合の増加も議論の対象である。


(令和3年8月25日 中央社会保険医療協議会 資料)

看護職員数の多い訪問看護ステーションは機能強化型訪問看護管理療養費の届け出を行っている率が高い。

訪問看護は「重度者や終末期」への対応が本来の役割と考えられており、近年は医療保険の機能強化型訪問看護管理療養費、介護保険の看護体制強化加算の算定が推進されている。

したがって、理学療法士等が占める割合が多い訪問看護事業所は訪問看護のあるべき姿として不適切であるという考えが加速している。

2020年度診療報酬改定および2021年度介護報酬改定でも訪問看護は適正化を図る改定内容が相次いだ。

2021年度診療報酬改定では、訪問看護適正化の措置がさらに加速すれば、2024年度診療報酬・介護報酬同時改定にも大きく影響する。

精神疾患患者の利用者を急増させている
リハビリ職種の割合が高い
重症患者が少なく要支援者の利用者多い
重度者対応ができる看護師、リハ職が少ない
等の訪問事業所は近い将来存続の危機が訪れるかもしれない。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

コロナ禍において整形外科クリニックが果たす役割は大きい

新型コロナウイルスの感染拡大により、国民生活は甚大な被害を受けている。

その中でも、高齢者の外出自粛は大きな問題となっている。

新型コロナウイルスの感染対策のため、買い物やデイサービスなどの外出を控える高齢者が増えている。

筆者の住む町の商店街においても高齢者が歩く姿はめっきり少なくなっている。

また、全国的に軽度者向けのデイサービスはキャンセルが増加しており、デイサービスの経営も苦境に立たされている。

このような高齢者の自粛は高齢者の感染を防ぐという意味は大きいが、一方で「廃用症候群の伸展」というリスクは高まっている。

実際、筆者がコンサルティングをしている整形外科クリニックでは体力が低下した、膝が痛くなった、転倒することが増えたなどの訴えで受診する高齢者の人が増えている。

このような患者は
運動器不安定症
変形性膝関節症に伴う歩行障害
などの疾患名で運動器リハビリを開始することが多い。

また、体力を低下した患者など対して、体操や筋力トレーニングなどの自主トレーニングを指導を行う整形外科クリニックも存在している。

さらに、Youtubeなどで体操などを動画配信を行う整形外科クリニックもある。

整形外科クリニックは医療機関であり、スタッフは医療専門職が占めている。

そのため、感染対策に関しては、一定の効果が期待できる。

また、整形外科クリニックは運動指導が長けた理学療法士、作業療法士が多いことから、廃用症候群の予防についても適切なアドバイスが可能である。

このような活動は長い目で見ると、「医療機関のマーケティング」にも寄与することから経営的な効果も高い。

コロナ禍で、どの医療機関の大きなダメージを受けているが、コロナ禍だからこそできる整形外科クリニックの役割がある。

今こそ、整形外科クリニックは自分たちが何をするべきかを考える時期である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
茂澤メディカルクリニック
たでいけ至福の園
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学 客員准教授

2020年度診療報酬改定を受けてリハビリテーション部門はどのような運営を心掛けるべきか?その1 マーケティング

2020年度診療報酬改定の最終答申が出た。

今回も疾患別リハビリテーション料の単価は増加することなく据え置きとなった。

リハビリテーションでは、リハビリテーション実施計画書の作成タイミング、外来リハビリテーション料、専従者の複数業務可能など働き方改革に関する部分の改定が目立った。

一方で、急性期、回復期、地域包括ケア病棟は再編を促す内容が大きく盛り込まれた。

急性期は重症度・医療看護必要度の強化
地域包括ケア病棟は、400床以上の病院に対する新設不可、自前急性期転棟が6割未満
回復期リハビリ病棟はFIM利得向上
などが設定された。

このような設定は明らかに病棟機能が低い医療機関に対する警鐘であり、これらの要件を満たせない場合は、他の医療機能への転換やベッド数の返上を促すものである。

このような背景の中で、リハビリテーション部門はどのような運営を心掛けていけば良いのだろうか?

まず、リハビリテーション部門は患者を集めるためのマーケティングをしなければならない。

マーケティングについては過去にも投稿してるので下記の内容を参照にしてほしい。リハビリテーションの機能をアピールしたいなら理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が主体となったマーケティング活動をしましょう

マーケティングを一言で言うと、「自社の価値を顧客に届けてサービスを購入してもらうこと」になる。

先述したように、疾患別リハビリテーション料の単価の増加は今後も期待できない。

したがって、今後は病棟稼働率、外来利用者数を増やして、疾患別リハビリテーション料を確実に算定できる状況を作り続けることが重要となる。

病棟稼働率や外来利用者数を増やすには診療報酬改定で定めらたアウトカムは満たすことは当然である。

その上で、リハビリテーション部門のサービス提供価値を地域の医療機関や住民に理解してもらわないといけない。

リハビリテーション部門のサービス提供価値は単にリハビリテーションの医療行為だけでなく、連携に対する取り組み、退院後のフォロー、入院中の教育的指導、接遇、家族不安への取り組みなど多岐に渡る。

いくら素晴らしいリハビリテーションやサービスを提供していても、それが地域の医療機関や住民に理解されていなければ、患者紹介や利用につながる可能性は低い。

つまり、これからの時代は「情報発信」が極めて重要と言える。

リハビリテーション部門は、病院経営を経営者や幹部職員に任せるだけでなく、主体性をもってリハビリテーション部門の情報発信に努めなければ患者が減り自分たちの部門の存在意義もなくなってしまう。

診療報酬改定で単価が上がることを期待するよりも、「情報発信」を通じて患者を増やしていく方が得策である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
茂澤メディカルクリニック
たでいけ至福の園
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学 客員准教授

2020年度診療報酬改定 地域包括ケア病棟の新モデルが提示された

2020年度診療報酬改定の内容が明らかになった。

今回は、地域包括ケア病棟について解説をしたい。

2014年度診療報酬改定により新設された地域包括ケア病棟は、新設後、爆発的に増加し日本の中核をなす病床に変化しつつある。

重症患者や医師等のスタッフの数を確保できない急性期病棟や稼働率の低い回復期リハビリテーション病棟などが地域包括ケア病棟に移行したケースが多い。

また、公的病棟も地域包括ケア病棟に参入したことが病棟増加に影響している。

このように急激に増えた地域包括ケア病棟であるが課題も多かった。

最大の課題は、住み慣れた地域に住み続けるという理念を実現するための病棟であるにもかからず、地域からの入院してくる患者の数が少なく、急性期病院からの入院が多いというものだ。

以前の診療報酬改定より、この課題について議論されていたが2020年度診療報酬改定においても、地域包括ケア病棟の新しい形が提示された(図)。

 

2018年度診療報酬改定にて設定された項目の全てが厳格化されている。

一言で言えば、地域から入院の受け入れ、地域医療や介護サービスの展開をより一層求めるというものである。

地域包括ケア病棟は文字通り地域との関係性を重視した運用が重視される内容になっている。

地域包括ケア病棟は急性期に依存した病棟運営から脱却し、地域との関係性を深めていくことが重要である。

地域との関係性を深めるためには、地域のニーズと自社の経営資源のマッチングを考える必要がある。

地域包括ケア病棟は
緩和ケア
リハビリテーション
レスパイト
慢性疾患治療
整形外科手術
など幅の広い活用ができる。

自社の経営資源で、どのサービスを重点的に展開するべきかを今一度考えるべきである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
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認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
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修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授