「起業」をしたいという言葉を、安直に語ってはいけない

世の中の働いている人全員が、「起業」をしたい訳ではない。

むしろ、日本では「起業」は一般的なことではなく、「起業」をしたいという人の方が、マイノリティーだ。

国際的に見ても、日本の起業率は低い(下図)。 起業率

岡田悟:我が国における起業活動の現状と政策対応,レファレンス,2013

日本の起業率が少ないのは様々な原因が指摘されている。

出る杭は叩く文化
滅私奉公の社風

金儲けが悪という風潮
お金に関する教育が乏しい

正社員の既得権益が強い
などが、日本における起業率が低い原因とされ、日本は「起業」がしにくい国あることは明白だろう。

それでも、起業をしたい人は何が何でも起業をする。

起業家の「起業に対するモチベーション」はどこから生まれるのだろうか?

エドガー・シャインが定めたキャリア・アンカーの一つである「起業家的独創性」が起業に対する大きなモチベーションである。

キャリア・アンカーとは、「仕事をする上でどうしても譲ることができない価値観」である。

起業家的創造性
このタイプの人は、独立、起業することを好み、何か新しいこと(事業や作品など)を生み出すことに価値を置いている。

単に自立・自律の精神で仕事をするだけでなく、新サービスや商品の発明や普及に大きな関心を抱いているタイプと言える。

つまり、 お金儲けをしたい 目立ちたい 今の会社が不満だ などの理由で起業をしても、起業に対するモチベーションが継続させるのは難しい。

昨今、業務内容や給料の不満から「起業」という言葉を安易に使う理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も多い。

しかし、起業家的独創性のキャリア・アンカーを持ち合わせていなければ、起業への思いは一過性となり、起業そのものが成功しにくい。

そもそも、日本は起業に対する視線が厳しい国である。

そのうえで、起業をするのなら起業に対する動機は、安直なものであってはならない。

起業を考えている人は、「起業でなければ自分の価値観は満たされないのか?」という質問を自問自答してほしい。

そのうえで、起業の決断を行うことをお勧めする。

執筆者
高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術)(経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

仕事を辞めるか、続けるかの判断基準

誰しも仕事を辞めたいと思うことがある。

しかし、辞めたいと思うことと実際に辞めることは、まったく異なる次元の問題である。

仕事を辞めたいと思ったときに、やめるか、やめないかをどのように判断するかについての明確な論理的枠組みを持っている人は少ない。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士でも、仕事を辞めたいと思っているが、具体的な行動を起こせずに、ずるずると、不満や不安を抱えたまま仕事をしている人は多い。

そういう人は、周囲にも自分にも「働きたくないが働いています」という嘘をついている。

仕事をやめるか、やめないか?ということについて、明確な判断材料を持たずに過ごしていると、有限である人生の時間を無駄に過ごすことになりかねない。

多くの人は仕事を辞めることが正しいのか?正しくないのか?という予言者しかわからないようなことに悩んでいる。

しかし、悩んでも状況が打開されることはない。

仕事を続けるか?続けないか?の二択を、どのような視点をもって考えるべきか?

それは、仕事を続けること、辞めることのどちらが今の自分を肯定的に捉えることができるか?という視点である。

仕事を辞めることで自己嫌悪に陥ったり、自己否定をするならば、その退職は人生においてネガティブな出来事になってしまう。

しかし、仕事を辞めても自分を肯定的に捉えることができて、活き活きと次の仕事に取り組めるならその退職はポジティブな出来事だったと言える。

人は自分の価値観を自分の人生で満たすことができた時に、自分が自分の人生の主人公であることを実感できる。 e233fe3c3e536416799be83af4055c7e_s 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士という資格は同じであっても、有資格者の数だけ人生の価値観は存在する。

人生の価値観をどのように仕事において満たしていくか?を強く意識することによって、仕事を続ける、続けないかの判断を円滑に行うことができるだろう。

自分自身の価値観を否定していては、どのような場所で働いても精神的に疲れてくる。

つまり、働く場所が問題ではなく、自分自身の価値観が仕事においては重要であると言える。

自分の価値観を追及していれば、仕事を続ける、辞めるということは実はたいした問題ではない。

仕事を辞めても、自分の価値観を大切にして生きていれば、仕事を辞めたことに負い目を感じることなく、むしろ辞めた自分を誇りに思うことができる。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は病院のタイプや業務内容で就職先を決める傾向が強い。

そのような内容で、働く先を決めていると早晩辞めるか、辞めないかの悩みに襲われる。

自分の価値観を大切にする働き方をもう一度考えてみてはいかがだろうか?

執筆者
高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術)(経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

起業という働き方 どういう事業をおこすか どう決める?

起業をする場合、まず悩むのはどのような事業を起こすのか?ということである。

事業内容を考える場合に、まず、最初に考えるべきことは「事業ドメイン」である。

日本語では、「事業の範囲」となる。

事業ドメインでは次の3つの内容について検討しなければならない。

提供をしたい人=顧客軸

何を提供したいか=機能軸

どうやって提供するか=製品・技術軸

簡単に言えば、誰に何をどうやって?

例えば、健康増進サービスにおける事業ドメインは次のようなものになる。

提供をしたい人=虚弱高齢者あるいは健康増進志向のある高齢者

何を提供したいか=運動、食事、ライフスタイルなどの指導や地域コミュニティーの紹介や仲介

どうやって提供するか=ご自宅に健康増進分野に長けたセラピストが訪問することやSNSを利用して提供する 事業ドメイン事業ドメインの概念図

事業ドメインを明確に定めることで、経営資源の非効率化や事業に関係の薄い分野への進出の抑止が可能となる。

事業ドメインが明確に定めることができなければ、本業が曖昧になる。

自社の経営資源や経営者の意識を本業に傾注させるために事業ドメインを定めることが重要である。

執筆者
高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術)(経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

起業という働き方 圧倒的な強みーコアコンピタンスに拘れ

成功している起業家は、コアコンピタンスを持っていることが多い。

コアコンピタンスは他者をしのぐ圧倒的な強みのことである。

コアコンピタンスは次の条件を満たすものである。

模倣可能性
技術や特性が他者に簡単に真似できるものであるか?
模倣可能性が低いほうが、ライバルを少なくすることができるため大きな競争優位性を得ることができる。

移動可能性
一つの分野だけではなく、多くの分野に応用ができ、幅広く活用できるものか?
移動可能性が高いほど、汎用性があるになり市場が広がる。

代替可能性
その強みが簡単に他の方法で置き換える事の出来ない唯一無二の存在であるか?
代替可能性が高いほど、独占的なシェアを獲得することができる。

希少性
その技術や特性が珍しいものであり、希少価値が存在するか?
希少性が高ければ市場において圧倒的な競争優位性を持つことが可能である。

耐久性
その強みが長期に渡って競争優位性を維持する事が出来るかどうか?
耐久度が高いほど、長期間にわたり競争優位性を担保できる。 550543 例えば、リハビリテーションの分野では次のようなコアコンピタンスが考えられる。
動作分析と家屋評価に長けた理学療法士
糖尿病や心不全などの内科疾患とフットケアに長けた理学療法士

シーティングと嚥下に長けた言語聴覚士
ADL評価と福祉用具に長けた作業療法士

これらはコアコンピタンスのいくつかの要件を満たしている。

少なくとも
一日18単位がんばれます!
訪問リハビリ6件回ります!
整形外科が好きです!
などは、コアコンピタンスにはなりえない。

起業をする場合は、ぜひとも、コアコンピタンスに意識を向けてほしい。

執筆者
高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
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修士(学術)(経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

不完全さと不確実性を喜んで受け入れることでキャリアは前進する

自分のキャリアや生き方の選択を決定できない人は多い。

できるだけ正しい決定を行いたい
リスクの低い道を進みたい
できるだけ多くの情報を得て決定したい
などを理由に、キャリアの選択を躊躇している人は多い。

しかし、この世の中には完全に合理的な意思決定などは存在しない。

世の中の全ての情報を集めることはできない。

また、集めた情報の客観性の担保も完全ではない。

さらに、情報自体も時間の経過とともに変質していく。

したがって、完全に合理的な意思決定などはこの世に存在しないし、意思決定とは一定に不完全さを含んでしまうものである。

だからこそ、不完全や不確実さを過剰に恐れるのではなく、むしろ、それを楽しむぐらいの気持ちが必要である。

もし、決定した事柄が、悪い方向に進んでいくのであれば、その決定を覆しても別に構わない。

すべての決定を完全な最終決定にする必要もない。

そもそも、人間は成功より失敗から学ぶことの方が多い。

成功の連続を望むと言うのは不可能である。

失敗をするから、成功があるのだ。

したがって、失敗をすることを喜ばなければならない。

キャリアの決断を先延ばしにすれば、失敗する権利も失うことになる。

失敗をしないのだから、成長するチャンスも失う。

キャリアの選択においては、完璧主義者にならない方が良いのは確実である。

執筆者 高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術)(経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授