要支援高齢者の孤独死が増える!?

孤独死が日本の大きな社会問題となっている。

総務省の統計では、日本国内の独居老人の数は漸増している(図1)。

図1 総務省 報道資料 統計トピックスNo.84(平成26年9月)

独居生活が可能であるということは、日常生活動作レベルは著しく低下していないことを示唆し、元気高齢者か要支援の方が殆どを占めている。

一般的に孤独死は都会に多いとされる(図2)。

図2 平成28年版高齢社会白書より抜粋

なぜか?

それは、都会では人間関係が希薄であり、地域の見守り機能が低下しているため、個人の変調を把握することが困難であるからである。

また、介護保険制度において要支援の方へのサービスは限定的なものとなる。

要支援の方が使えるサービスの回数は、要介護の方と比べて少ない。

そのため、要支援の方の身体状況の変化をサービス提供事業所が把握することは要介護の方より難しい状況と言える。

したがって、都会に住んでいる要支援の方の孤独死リスクは高いと言える。

特に男性は地域コミュニティとの関係構築が苦手な方が多く、互助の恩恵を受けにくい。

政府は、地域包括ケアシステムにおける自助・互助を推進している。

一般的に都会では互助は難しく、自助の機能が適していると言われている。

よって、都会では自助による孤独死を防止する仕組みが必要である。

見守りサービス
見守り家電
趣味や仕事のコミュニティ
訪問看護や訪問リハビリ
の活用が今後ますます孤独死防止に寄与すると考えられる。

要支援だから大丈夫と考えるのではなく、その人を取り巻く環境を考えることが孤独死防止には最も重要である。

 

 

 

 

 

診療報酬・介護報酬改定をいくら勉強しても実践しなければ何の意味もない

2018年度診療報酬・介護報酬改定が近づいている。

私自身も様々な団体にお声がけを頂き、全国各地で次期同時改定に関しての講演を行う機会が増えている。

診療報酬・介護報酬改定のセミナーは非常に人気があり、大変多くの方が参加され、また、非常に熱心に受講している。

診療報酬・介護報酬改定セミナーへの参加理由は、経営や運営の改善、事業所の売上向上、自部門の経営方針の検討のため等である。

つまり、目的は「診療報酬・介護報酬改定という情報を知ること」ではなく、「経営や運営における具体的な変革や改善」であると言える。

しかし、私の経験上、「診療報酬・介護報酬改定の情報を得ても、具体的な組織改革の行動を起こす人は非常に少ない」と感じている。

経営や運営を安定させるためには、「正しい情報の収集」と「適切な組織管理」のバランスが重要である(図1)。

図1 経営や運営のバランス機能

 

中国の格言に「知行合一」と言う言葉がある。

この言葉は
「知っているだけで実行しないのはまだ本当の知とはいえない。実践のうえで知と行とが一致することが重要であり、実践重視・体験重視の考え」
を意味するものである。

つまり、診療報酬・介護報酬改定の内容を知っただけで、実践に移さなければ、それは何も知らないことと同じである。

知行合一は、経営者や管理者にとって大きな示唆である。

医療機関や介護事業所の一流と二流の差は何か?

それは、決して医療職や介護職のマインドや技術の差ではない。

経営や運営の意思決定プロセスに全力を尽くせるか?否か?

これが一流と二流の差である。

二流経営者や管理者は
年次計画書、部門運営計画、行動目標、朝礼でのスローガンなどを重視し、計画や目標を実践するためのプロセスには力を入れない。

簡単に言うと「計画好きの実践嫌い」では二流に陥ると言える。

「診療報酬・介護報酬改定の内容を知る」だけでは、組織になんのインパクトを与えることはできない。

大きな制度変更が行われる2018年度同時改定が近づいている。

知識を実践に移せる医療機関・介護事業所だけが生き残る時代が到来している。

 

老人保健施設の在宅復帰機能は標準装備が求められる

2012年度介護報酬改定にて在宅復帰強化型老人保健施設の評価が行われたが、当時、老人保健施設は第二の特別養護老人ホームと言われており、一度入所すると長期間入所することが一般的であった。

そのため、老人保健施設におけるリハビリテーションサービスが重要視されることはなく、老人保健施設に勤める理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も少なかった。

しかし、政府は地域包括ケアシステムの構築の鍵を握る在宅復帰を進めるため、あらゆる医療機関に在宅復帰の要件を設定し、老人保健施設もその対象となった。

2012年当時、在宅復帰を積極的に行っている老人保健施設は皆無であったが、平成28年10月には、在宅復帰に関する加算を算定している施設は老人保健施設全体の42.9%になっている(図1)。

図1 在宅復帰に関する加算を算定している老人保健施設の割合

老人保健施設の在宅復帰への取り組みは、まさにイノベーションである。

在宅復帰を進めるためには、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、相談員などの職員の増加(図2)だけでなく、カンファレンス、入所者のマーケティング、後方連携の強化、介護職のケアの質の向上などに取り組まなければならない。

図2 リハビリテーション専門職の数と在宅復帰率の関係

 筆者は老人保健施設の改革が難しい理由は、「多くの医療機関にとって、長年老人保健施設はおいしいセカンドビジネスであったため、経営者の経営努力が乏しくなる」ことが一因と考えている。

今まではセカンドビジネス感覚でもそれなりの報酬が得られたが、もはや老人保健施設の経営は一筋縄ではいかない状況である。

在宅復帰は当然のこと、今後は看取り、認知症、中重度者への対応も求められていく。

40%を超える老人保健施設が在宅復帰型へ移行していることを考えると、残り60%の老人保健施設の未来は決して明るくない。

2018年度介護報酬改定はすぐそこである。

あなたの勤める老人保健施設は今後どうしますか?

地域連携室や相談員は組織の技術力・対応力を知っていますか?

急性期病院の在院日数短縮
回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟の地域連携の強化
在宅療養が対象の中重度者の増加
により、医療や介護の現場に求められる対応力は以前より増している。

認知症
がん
呼吸・循環障害
栄養障害
低ADL
糖尿病
などへの対応が必要な患者・利用者は急激に増加している。

多くの医療機関や介護事業所では、入院やサービス利用の窓口を相談員や地域連携室のスタッフが担当している。

しかし、相談員や地域連携室のスタッフが、自社の技術力や対応力を知らない場合、大きなラトラブルに発展することが多い。

例えば、急性期後の脳卒中患者で、合併症として呼吸器疾患を持っている患者の入院相談があった場合、呼吸器疾患への対応が看護部門やリハビリテーション部門で十分にできない場合は受け入れは難しいだろう。

しかし、入院の受け入れ相談を担当した相談員が、看護部門やリハビリテーション部門の技術力や対応力を知らなければ、安易に入院を受け入れてしまう可能性が高い。

その結果、十分な呼吸ケアが受けられずに不利益を被るのは患者である。

また、入院期間が延長することにより医療費も消費することになる。

相談員や地域連携室のスタッフは、医療や介護の具体的な中身について知らない人も多い。

この場合、対応できない患者・利用者を受け入れてしまうことが度々散見される。

また、看護部門やリハビリテーション部門も自部門がどのような患者や利用者なら対応できるか、否かを組織のあらゆる部門に明示する必要があるだろう。

家電量販店に行って、売り場担当の人が、売り込みをしてきたが、商品の性能には詳しくなかったら、皆さんはどう思うだろうか?

このような事例は皆さんの事業所では行っていないだろうか?

 

 

「やってみないとわからない」がキャリア開発の基本である

筆者は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の人から多くのキャリアに関する相談を受ける。

今の時代に働くセラピストは自身の将来に大きな不安を抱えており、キャリア開発への焦りを持っている人は多い。

しかし、相談者は二つに分類される。

それは、「失敗したらどうしよう」タイプと「やってみないとわからない」タイプである。

概ね、前者が8割、後者が2割である。

そして、筆者より色々助言をしても「失敗したらどうしよう」タイプの人が、キャリア開発のために具体的な行動を起こすことは少ない。

しかし残念ながら、そもそも、失敗のないキャリア開発など存在しない。

キャリアと言うのは、失敗を積み重ねる中で自分の価値観や技術が研ぎ澄まされていく過程で明確になっていくものである。

優秀なセラピストほど、「失敗したらどうしよう」タイプが多い。

非常に優れた技術や学術的知識を持っている人ほど、失敗を恐れる。

彼が口々に、「自分の技術を最高に高めてから外に飛び出してみます」とか「もっと学術的な検証を十分にしてから現場に伝えていきます」とかの類の話である。

しかしこれだけは、断言できる。

ビジネス的な思考で考えると
最高な技術
検証を十分にした学術
など永遠に訪れない

むしろ、未熟な知識や技術を市場に投入して、エンドユーザーからの反応や市場の普及具合を材料に技術や知識の研鑽をしていくことでより、「Better」なものになっていく。

そう、「やってみないとわからない」のだ。

そもそも、リハビリテーションの現場では、患者や利用者には「やってみないとわからない」精神でサービスを提供することが多い。

歩けるかどうかはやってみないとわからない
立てるかどうかはやってみないとわからない
買い物に行けるかどうはやってみないとわからない

やってみて、初めて課題が浮き彫りになり、そこに新たな介入を行っていく。

このようなことを生業にしているセラピストが「失敗したらどうしよう」と言うのは本末転倒である。

キャリア開発には様々な手法はあるが、最も重要な原理原則は「やってみること」である。

ぜひ、自分のキャリアに不安を持っているセラピストはこの原理原則を実践してほしい。