カリスマ的セラピストが支えているリハビリ部門は短命である

カリスマ的リーダーとは
超人的な能力でフォロアーから絶大な信頼を得て、フォロアーの信念や行動に大きな変化をもたらすようなリーダーのことである。

能力に長け、優秀なカリスマ的リーダーがリハビリ部門を管理していることは珍しいことではない。

そのような組織では、そのリーダーから様々なことを学びたいとの思いで全国各地からセラピストが就職をしてくる。

カリスマ的リーダーは
ビジョンを提示し
従業員の行動を示し
自ら先頭に立ってリスクを取る
という魅力的な要素を持つことから多くの従業員から支持される。

しかし、カリスマ的リーダーの組織は、一点大きな欠点を持つ。

それは、「組織運営に関してリーダーへの依存度が高い」ということである。

つまり「属人化」が組織内で生じてしまうと言える。

「属人化」とは、「特定の業務に関してある人しかやり方がわからないという状況」のことである。

属人化には以下のようなデメリットがある。

担当者が不在では業務が止まってしまう。
担当者の仕事の質を周囲の人が評価できない。
担当者が退職すると、その業務を引き継げる人がいない。

つまり、属人化は組織力を低下させると言える。

カリスマ的リーダーがいるリハビリ部門は要注意である。

リーダーが何らかの形で不在になると、業務は止まり、従業員の退職が相次ぐ可能性がある。

優秀なカリスマ的リーダーほど、外部からのスカウトが多い。

そのため、カリスマ的リーダーが管理している組織は短命であることが多い。

このような危機を回避するためには、業務を標準化し、マルチプレイヤーを組織内に育成していくことが重要である。

 

 

 

 

医療機関や介護事業所の財務分析では固定資産回転率と売上高人件費率を見よう!

医療機関や介護事業所の経営環境はますます厳しくなってる。

自社の取り組みが利益に還元できているか?という視点は極めて重要であり、医療・介護従事者にも財務分析の視点が必要な時代となっている

筆者は医療機関や介護事業所の財務分析において、次の二つの項目が重要と考えている。

固定資産が有効活用されているかどうかを判断する指標である固定資産回転率【売上高÷固定資産(当期・前期末平均)】を利用することで、新設した高齢者向け住宅や在宅医療センターなどの固定資産の売上への貢献や有効活用の度合いについて検討することが出来る。

医療施設の運営責任者は、施設の資産価値を全く理解していないため、資産価値に見合った売上に関しての意識は極めて低いと推測される。

そのため、固定資産回転率を用いた経営管理は、各施設の管理者の売上向上に対する意識付けには有効であると考えられる。

また、会社の売上に対する人件費の割合のことを示す売上高人件費率も経営改善活動のための有効な指標になると考える。

医療・介護業界は労働集約型産業であり、経営資源としての人材への依存度の高い産業構造になっている。

そのため、人材の生産性は極めて重要な経営管理項目である。

例えば、医局、看護部、リハビリテーション部、検査部の売上高人件費率などを算出し、各部門の経営への貢献を明示し、貢献度の高い組織に対して賞与を支給するなどのインセンティブは有効な経営の手法になると考えられる。

医療の専門職は、「患者を助ける・救う」という理念を振りかざし、経営的な観点を軽視する傾向がある。

そのため、売上高人件費率などの指標を用いて、医療機関の経営に対する倫理観を醸成するが重要であると考える。

訪問介護サービスの大改革は介護保険リハビリテーションの在り方を変えていく

2017年11月3日の日本経済新聞に「訪問介護使いすぎ是正」という衝撃な見出しの記事が掲載された。

要約すると、
サービス付き高齢者向け住宅に住む人は、通常よりも1割程度低い料金で訪問介護サービスを利用することが出来ることから、利用の必要性に関わらず最大回数まで利用している。次回、2018年度改定では1割の減額の計算を廃止し、利用回数を低減化させる。
と言うものである。

前回の2015年度介護報酬改定でも、訪問介護の生活支援の単位数は大幅に低減化しており、生活支援の利用抑制策が矢継ぎ早に導入されている。

生活支援サービスに関しては、従来より次のような問題が議論されてきた。

生活支援サービスを行うことにより、利用者の自立を阻害している事例がある

生活支援サービスは民間企業での行っていることから、介護保険を使用した同様のサービスは民業圧迫ではないか

利用者ごとで生活状況が違うことから、これらのことは必ずしもすべての事例には当てはまらないが、財務省はこれらの理由から生活支援の単価の低減化を主張してきた。

2017年11月3日 日本経済新聞

訪問介護サービスの生活支援は、リハビリテーションにおける活動と参加と大きく重なる概念でもある。

リハビリテーションの観点より、生活支援をすることが徹底されていれば、生活支援が自立を阻害しているという事例は最小化できていたかもしれない。

2018年度介護報酬改定では、生活支援の対象の厳格化、自立支援に対する加算、リハビリテーションの介護職の連携がより図られる可能性が高い。

今後、生活支援サービスの課題をリハビリテーション職種がどのように捉え、介護職の方とどのように協業できるか?という視点が大いにリハビリテーション職に求められ、働き方も大きく変わる可能性が高い。

リハビリテーション職種の在宅サービスの在り方はさらに進化が求められる。

 

セラピストとして働きだすと、どんどん世界は狭くなっていく

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として働きだすと、当初は「新しい知識」や「新しい経験」が得られることにより「世界が広がっていく」感じがする。

しかし、5年、10年もセラピストをしていくと世界は広がるどころか、逆に狭くなってくる。

なぜか?

付き合う人が固定化されること
行動する範囲も限定されてくること
リスクを取る勇気が減少していくこと
などにより、日々、同じような世界をみることになる。

同じような世界に身を置いていることにより、生じる恐ろしい副作用は「物事への視野が狭くなる」ことである。

視野が狭くなれば、様々なアイデアや意見を出すことができなくなり、その結果、様々なトラブルに巻き込まれる可能性が高い。

また、トラブルに巻き込まれたくないから、同じ価値観を持つ人とだけの人間関係を大切にする。

同じ価値観を持つ人とだけの付き合いに固執すると自分が人間社会においてどのような人間であるか、自分自身が何者なのかを見失ってしまうことになる。

自分のいる世界より、自分がいない世界の方が圧倒的に広い。

自分の知らない世界では、様々な価値観や意見がある。

その中には、自分の人生や仕事の問題を解決することが出来る「種」が沢山ある。

それでは、どのようにしたら「世界を広げる」ことができるか?

それは、今の会社、組織、肩書とは全く無縁の世界に身を置いてみることである。

そうすれば、自分の真の実力や視野の広さを即座に感じることが出来るだろう。

特に30代になれば、どんどん「世界を広げる」ことにチャレンジするべきである。

もし、40代で「世界を広げる」ことなく、生きていればその後の人生はどんどんピンチになる可能性が高い・・・。

あなたは世界を広げていますか?

 

 

 

「在宅復帰」支援は新次元へ PFM:Paient Flow Mnagemeが導入される2018年度同時改定

現在、全ての入院医療機関や老人保健施設に在宅復帰の要件が課せられている。

病院や施設より在宅で治療やケアを行った方が、ホテルコストや人件費のコストカットが可能あることから、社会保障費の削減には在宅復帰の推進が欠かせない。

日本では、医療機関や施設に依存した治療やケアが長年行われていたが、2025年を前に政府は在宅復帰を急速に進めている。

今まで、在宅復帰に関する施策は以下のようなものが行われてきた。

①7:1病棟・回復リハ病棟・地域包括ケア病棟・療養病棟・老人保健施設の在宅復帰に対するインセンティブ報酬
②退院支援加算・退院前訪問指導・退院時共同指導料などの後方連携を主体とする加算

これらの取り組みは後方連携を強化するものである。

後方連携は退院先での療養やリハビリテーションを円滑に進めるためにも重要であることが様々な調査からわかっている。

しかし、後方連携を強化しても在宅復帰が難しい患者や利用者は多い。

中央社会保険医療協議会は、次のような資料を提示している。

この資料は、入院前からの支援が必要である患者や利用者像を明示している。

このような事例に対応するためには、後方連携のみならず、前方連携が必要であるとの意見が出ている。

この意見を受けて、2018年度診療報酬・介護報酬改定同時改定では、PFMの本格的な導入が予定されている。

PFM(Patient Flow Management)とは

入退院マネジメント強化の手法で、平均在院日数の短縮、病床稼働率の向上、新入院患者数の増加、救急搬送患者の受け入れ数拡大、手術件数増、在宅復帰率の向上などに効果がある。

さまざまな理由で退院の困難な症例に対し「医療ソーシャルワーカー(MSW)による退院先探し」という従来型の退院調整ではなく、病院全体のチーム医療により患者をどうマネジメントか問われている。

入院コーディネート・ベッドコントロール・退院支援/退院調整などの入退院マネジメント強化を通じて収益性を飛躍的に向上する手法「PFM」が次期診療報酬改定で注目されている。

最大の特徴は、入院前から退院後を見据えた支援を行うことで、ソーシャルワーカーだけでなく、看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士などが入院前から関わることである。

「在宅復帰」支援は新次元に突入する。

今後は、入院前からの支援という新しい取り組みが今後着目される。