医療機関や介護事業所は戦略的な企業倫理を実践せよ

企業の存在目的は利潤の最大化を通じて社会に貢献することである。

利潤の最大化には短期的な手法と長期的な手法があり、真の社会に必要とされる企業になるためには、長期的な手法を用いることが重要である。

短期的に会社の利潤を最大化しようとすると、経費を削減するいわゆるリストラクチャリングを中心とした手法が有効である。

リストラクチャリングには利益の確保や株主などへの説明責任などのメリットもある一方で、雇用や取引先への悪影響が大きいというデメリットを伴う。

リストラクチャリングでは雇用や取引先との関係を破壊することから、結果的に社会や地域にとって必要とされない企業となる可能性が高まる。

社会や地域から愛され必要とされる企業となるためには長期的な手法を用いて企業経営を行って行くことが重要である。

長期的な手法で大切なことは社会や地域から信頼を得ることができる「企業倫理」の実践を通じた経営が必要である。

つまり、「企業倫理」とは企業が成長していくための戦略と言える。

企業倫理を企業成長の武器として使うことが長期的な利潤の最大化に繋がる。

医療機関や介護事業所が短期的利益のために、サービスの品質を無視し、事業を運営すれば地域の利用者や介護支援専門員から反感を買う。

悪い評判はその医療機関や介護事業所を利用するインセンティブを消失させる。

一度生まれた悪い評判を打ち消すのはほぼ不可能に近い。

「企業倫理」を戦略的に実践することで、利用者や介護支援専門員との良好な関係を維持することができ、その結果、事業運営も発展する可能性が高い。

 

執筆者
高木綾一
セミナー講師
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

 

 

 

リハビリテーション技術はマネジメントの対象である

リハビリテーション業界には多くの技術が氾濫している。

養成校の講義
卒後の教育
県士会の研修
民間のセミナー
実習指導者の指導
から多くのセラピストは技術を学ぶ。

しかし、学ぶ技術の標準偏差は大きく、何がスタンダードな技術であるか全くわからない状態である。

しかも、多くのリハビリテーション部門は技術を管理していない。

なぜ、技術を管理しないのか?と管理者に問うと以下のような回答が返ってくる。

どんな技術でも患者が治ればいい
セラピスト個人の考えを尊重している
幅広い視点を取り入れている

これらは実に便利な言葉である。

表面的には、いかにも「利用者やセラピストのことを考えている」ように聞こえる。


しかし、現実的には「技術を野放し」にしているだけである。

本当に良いリハビリテーション技術であるかどうか?を測定するためには、一定の基準を設け、その基準をもとにリハビリテーションの効果測定をしなければならない。

様々な技術が管理されていない状況で導入されると、たとえ改善に至ったとしてもその機序やプロセスを説明するのは至難である。

サービス業の観点から、「セラピスト個人の考えを尊重する」ということ自体が狂っている発想である。

マクドナルドの店員
有名ホテルの従業員
東京ディズニーランドのクルー
などの個人の考えが尊重されているか?

それは否である。

個人の考えが尊重されたらサービス業なんて成立しない。

提供するサービスが標準化されているからこそ、顧客がそのサービスを求めるようになる。

リハビリテーション技術のマネジメントを放棄している管理者が多い今の現状は非常にまずいと言える。

 

執筆者
高木綾一
セミナー講師
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

 

 

上司と部下の板挟みになっている中間管理職は管理職ではなくメッセンジャー

上からは数字の達成を要求され
下からはノルマ目標への反発をされ
どうしてよいかわからない・・・

このようなことで悩む中間管理職の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は多い。

この「上と下の板挟み現象」はなぜ起こるのだろうか?

中間管理職は、上と下の間に位置する管理職である。

それゆえ、経営と現場の橋渡しが要求される。

ここで勘違いが起こる。

中間管理職は「メッセンジャー」であると。

「上の指示命令を下に伝える」・・これが仕事なんだ。という勘違いである。

メッセンジャーという仕事には工夫や創造入らない。

ただ、メッセージを伝えるだけである。

この場合、「調整役」の機能が発揮されないため、上司や現場で不平不満や混乱が生じた場合、その事態を収束させることはできない。

しかし、中間管理職は上と下に位置することから、上と下をコントロールできる立場でもある。

上と下とコントロールできれば板挟みと言う現象は起こらない。

現場が混乱しないように指示と理念の整合性を調整した上で上司の指示を伝える。

また、現場の不満や混乱を組織管理上の課題として的確に上司に伝える。

この二つをうまく使いこなすことができれば、組織を思いのままにコントロールできる。

その特権を与えられているのが中間管理職である。

 

執筆者
高木綾一
セミナー講師
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

 

 

「筋肉質」の経営を目指す意味

様々な経営者の著書では、経営は「筋肉質」でなければならないと述べられている。

「筋肉質」の経営とは設備投資の効率を考え設備の購入は慎重にすること、無価値な資産は抱えないこと、人件費などの固定の増加を警戒するなど説明されている。

しかし、新しく抱えた物件や採用した人材がどれぐらいの売上を計上してくれるのかについては、経営者としては明確な判断は難しい。

そこで、経営者として大切なことは、「自身の物件購入や人材採用という判断」を「正しかったもの」にするための、日々の努力を怠らないことが重要である。

世間には、新たな資産を購入する、人材を採用するなどをすれば、勝手に売上が上がっていくと考えている経営者や管理者の方がいる。

特に医療・介護業界では、医療機器購入や看護師の採用を行えば、自動的に経営がうまくいくと考えている人が多いのが実情である。

資産や人材はしっかりとした売上が計上できるようになってこそ、初めて意味を成すものだ。

そのためには、経営者の不断の努力が必要であることは言うまでもない。

ヒトやモノを揃えても売り上げは増えない。

売上を上げるシステムを作るのが経営者である。

「筋肉質」の経営は、人を雇わない、機材を買わないなどの資産を持たないという意味ではない。

今持っている資産を現金化できているのか?という視点を追求した先に「筋肉質」の経営があると言える。

執筆者
高木綾一
セミナー講師
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

 

 

パラレルキャリアシンドロームがもたらす薄っぺらいキャリア

理学療法士、作業療法士の労働市場の熾烈化や上がらない給与を背景に、「パラレルキャリアの重要性」を叫ぶ人が増えてきた。

そのおかげで、パラレルキャリアシンドロームを発症する理学療法士、作業療法士が急増中だ。

パラレルキャリアとは
本業を持ちながら、第二のキャリアを築くこと
である。

主な目的は、金銭的報酬だけではなく、自分のスキルアップや夢の実現、社会貢献活動の推進していくこととされている。

全国各地で、パラレルキャリアに感化されている理学療法士、作業療法士が増えている。

しかし、ここで注意が必要である。

パラレルキャリアの定義にある通り、本業があっての第二のキャリアである。

多くの理学療法士、作業療法士は、その本業すらおろそかになっている。

筆者が様々な経営者や管理職から聞くのは、
「組織内の仕事を一生懸命にしないのに、組織外の仕事を頑張っている職員が増えている」
「地域包括ケアだ!!と言って、外部のコミュニティに参加するのは一生懸命だが、施設内包括ケアには全く取り組んでくれない」
という声である。

つまり、組織に対する求心力より社外への遠心力が作用しているセラピストが増えているということである。

本業を疎かにして、他のキャリアに向き合うと言う「無法者セラピスト」に限って、「私、パラレルキャリアをがんばっています」と周囲に自慢する傾向も強い。

パラレルキャリアは本業があってこそ。

組織内で活躍できない人間が、組織外で活躍しても誰も評価しない。

せいぜい、ただの転職準備活動である。

本当のパラレルキャリアは本業と第二のキャリアがお互いに作用し、新しい価値を組織と社外に与えるものである。

組織に何の貢献もしないパラレルキャリアは、ただの「オナニーキャリア」だろう。

 

執筆者
高木綾一
セミナー講師
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科