設備投資や人材投資は命を懸けるほど慎重かつ大胆に行う これが経営者・起業家・フリーランスの必要素養

成功している経営者には以下のような特徴がある。

設備投資の効率を考え設備の購入は慎重にすること
無価値な資産は抱えないこと
人件費などの固定の増加を警戒する
人間関係において仲の良さは求めない

などである。

筆者自身も会社経営を通じて、これらの大切さと難しさを実感している。

新しく抱えた物件や採用した人材がどれぐらいの売上を計上してくれるのかについては、経営者としては明確な判断は難しい。

しかし、自身の物件購入や人材採用という判断を「正しかったもの」にするための、日々の努力を怠らないことが重要である。

世間には、新たな資産を購入する、人材を採用するなどをすれば、勝手に売上が上がっていくと考えている経営者や管理者の方がいる。

特に医療・介護業界では、医療機器購入や看護師の採用を行えば、自動的に経営がうまくいくと考えている人が多い。

資産や人材はしっかりとした売上が計上できるようになってこそ、初めて意味を成すものである。

資産や人材を自身の人生や仕事に活かすという投資感覚のない人は決して経営者になってはいけない。

したがって、経営者は資産をお金に換えることや経営力の強化に役立てることを慎重かつ大胆に行う素養を持たねばならない。

訪問看護ステーション、デイサービス、小規模多機能型居宅介護などで起業する医療介護従事者やフリーランスとして活動するセラピストなどにもこの原理は当てはまる。

無用な資産
無用な人間関係
無用なしがらみ
で人生やビジネスはつぶされる。

人生やビジネスをつぶされないようにするためには、日々、資産・人間関係・しがらみをハンドリングできる環境を創ることが極めて大切である。

漫然と過ごしていると、あなたの人生は他者に占領され、無用なものだけがあなたの周りを取り囲む。

あなたは資産を100%活用した生き方・働き方ができているか?

「仕事の依頼を待ってます」とアピールする人は、自らの実力不足をアピールしている

最近は、自称フリーランス、自称起業家、自称パラレルキャリアを謳っているセラピストが多い。

しかし、実態は偽フリーランス・偽起業家・偽パラレルキャリアであり、決して、本物の実力者ではないことが多い。

Facebook、ブログ、Twitter、セミナーなどの情報発信ツールを用いて、「仕事の依頼を待っています」とか、「次もセミナーに呼んでください」とか、「自分は今この曜日が空いているので仕事を受けることが出来ますよ」などをアピールしているが、これは「自分は自分で仕事を発生させる実力がないので世間の皆様から仕事のおこぼれをもらう程度の人間です」と言っているようなものである。

フリーランス・起業家・パラレルキャリア実践者に「暇」は絶対に存在しない。

仕事を創り出すためのマーケティングやブランディングを実践するのが本物の独立事業家である。

「暇なんで仕事くださーい」と言っている時点で、もはや、アントレプレナーシップの気概が1グラムもないヘタレ事業家である。

仕事はもらうものでなく、創るものである。

創るという作業を忘れている人間は、口が裂けてもフリーランス・起業家などと言ってはいけない。

仕事を自ら創造し、それを他者に評価してもらってこそ仕事の依頼は入ってくる。

「仕事をください」と言えば言うほど、仕事が評価されていないのが丸出しである。

本気でフリーランス・起業家・パラレルキャリアを求めるなら、自らの仕事のイノベーションを実現する知識と経験を積まなくてはならない。

マネジメント、ファイナンス、マーケティング、ブランディング、アントレプレナーに関する勉強を誠心誠意するものだけが、仕事を創造できる。

その覚悟がないなら、独立なんかしない方が良い。

 

急成長したユニコーン型リハビリテーション部門は、早晩、崩壊へ向かう

ユニコーン企業とは、急速に事業が拡大し、従業員の増大とともに売上高が急増している企業のことを言う。

日本ではDDM.com、メルカリ、ツタヤ、楽天などが代表例である。

急成長企業であることから、イノベーティブな会社として認識されることが一般的で、素晴らしい企業であるとの印象が強い。

しかし、ユニコーン企業の大企業は早晩厳しい局面が待っている。

なぜならば、大企業は最大30年程度しか寿命がないことがわかっている(図1)。

中小企業白書 2011 p187

つまりユニコーン企業のように急成長し、従業員をたくさん抱える大企業になれば、いつしか企業としての寿命を迎えることになる。

リハビリテーション部門にもユニコーン型の発展を遂げたところも多い。

セラピストが50人以上所属するリハビリテーション部門は今や珍しくない。

そのようなリハビリテーション部門は、業務内容の硬直化、人材が育たない、環境変化についていけない、マニュアル重視で発想が乏しい、働く目的を失った従業員が多いなどの問題を抱えていることが多い。

なぜ、このようなことになるのだろうか?

それは偏に大企業病にかかっているからである。

セラピストの数が多くなり、組織が分化し、管理しなければならない範囲が増加すると沢山のルールが生まれてくる。

つまり、ルールを重視する「官僚主義」が拡大することになる。

組織の人数が増えてくると、リーダーの思い通りの運営は難しくなってくる。

コミュケーションも難しくなり、採用数が増えるので能力の低い人も組織に入ってくる。

そのような、状況では「ルール」を用いて人や組織を管理することが効率的である。

仕事の進め方
報告の仕方
インシデントへの対応
などのルールが設定される。

このようなルールは、強制的に人や組織を動かすことには有効であるが、働く人の創造性ややる気を阻害することにもなる。

これが大企業病を発祥させる原因である。

さらに、リハビリテーション部門の難しい課題は、従業員が職人気質のセラピストであるということである。

職人気質はルールを嫌い、ルールを無視する傾向がある。

そのため、官僚主義を入れても、それに従わない人も一定数いるため、官僚主義も通じにくい。

大企業病と職人気質が入り混じると言ったカオスがユニコーン型リハビリテーション部門には蔓延っている。

ユニコーン型リハビリテーション部門の方は、組織寿命を保つためにマネジメントへの一層の努力が必要とされる。

 

通所リハ・訪問リハで「医師の詳細な指示があればADLは上がる」は本当か?

2018年度介護報酬改定では通所リハビリ・訪問リハビリの運用面での改定が多く行われる。

急性期・回復期後の利用者が今後急増することを踏まえて通所リハビリ・訪問リハビリの機能強化は必須となっている。

しかし、通所リハビリ・訪問リハビリの質の強化は、急性期や回復期と比較してスローペースだったこともあり、通所リハビリ・訪問リハビリにおける運用面の厳格化は遅れている。

そのため、2018年度の改定では運用面の改定が多く行われる予定である。

その一つに、「医師の詳細な指示」を評価するというものがある。

これは、医師が毎回のリハビリテーションに対して、中止基準、リハビリテーション中の留意事項、運動負荷などの詳細な指示を出すことを報酬上、評価するというものだ。

根拠は、「医師が詳細な指示を出すと利用者のADLが向上すること」である(下図 介護給付費分科会 第150回(H29.11.8))。
しかし、これは本当か?

医師が詳細な指示を出すだけで、ADLが変化するのか?

ADLの変化には様々な交絡要因があることが知られている。

利用者のモチベーション
セラピストの技術
運動継続の支援
利用者の生活環境
利用者の症状の安定
など・・・・これらの要因の総合的な影響がADLの変化として現れてくる。

もし、医師が詳細な指示を出せば、利用者のADLが変化します!という論文投稿しても、リジェクトされるのが関の山である。

厚生労働省はしばしば、このように短絡的なデータを用いて政策を進めようとする。

では、なぜ、この資料では医師の詳細な指示を出した方がADLが変化したのであろうか?

「医師が詳細な指示を出す」ことの背景を考えるとこの答えは出てくる。

リハビリテーションに対する事業所の取り組み姿勢
医師やセラピストの倫理観
リハビリテーションサービスの質へのマネジメント
などが長けていれば、自ずと、医師のリハビリテーションへの関与は増えてくる。

つまり、組織としてリハビリテーションのマネジメントが出来ていないのに、「医師の詳細な指示」さえ、出していれば利用者のADLが上がることは到底あり得ないと考える。

この本質を理解できなければ、「医師の詳細な指示」という書類のチェック欄を作成し、そこに「テキトー」にチェックをいれる行為が横行するだろう。

診療報酬・介護報酬改定はその本質を捉えることに意味がある。

施設基準や加算要件の表面的な理解は、組織運営を悪化させていくだけである。

ベッド半径50㎝セラピストになるか、ベッド半径5kmセラピストになるか?

地域包括ケアシステムの構築が謳われて久しい。

「住み慣れた地域で最後まで」と言う美しい言葉が先行しているが、その実態は「低福祉化」である。

もう少しわかりやすく言うと、「低予算で最大の効果」を求めるシステムと言える。

要支援者の日常生活支援総合事業への移行
通所リハビリテーションの早期リハ・卒業の推進
通所介護の心身機能改善評価
訪問リハビリテーションのマネジメント
早期入院・早期退院を進める入退院支援の推進
在院日数の短縮
など、低予算で医療や介護サービスを成立させる仕組みである。

この低福祉政策は今から30年~40年は続くだろう。

このような時代において必要される人材はどのようなものであろうか?

先述した様々な事例を実現させるためには、様々な場所に足を運び、様々な人と協議をしなければならない。

そして、自身の専門的見地から、建設的な意見を述べていく必要がある。

つまり、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士はベッド半径50cmで仕事をするのではなく、ベッド半径5kmで仕事できる人材になることができなければ、これからの時代では「使い勝手が悪い人材」になる可能性が高い。

残念なことに、今の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は学生時代にベッド半径50㎝で仕事をすることしか、教えてもらっていない。

したがって、地域包括ケアシステムが求めることに対して、潜在的な拒絶感がある。

しかし、ピンチはチャンスである。

このようなピンチの状況でベッド半径5kmで働く能力を身に付けることが出来れば、確実にこれから「食っていけるセラピスト」になることが出来るだろう。

無論、ベッド半径5kmで働くセラピストにも、高い理学療法、作業療法、言語聴覚技術が必要である。

基本スキルが高ければ高いほど、その専門性を活かした活動が可能になるからである。

あなたは50cmか5kmか?

あなたの職場には5km用の教育プログラムはあるか?

今一度考えてほしい。