介護保険施設/有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅の経営のキーポイント 入居者の入院率の抑制

老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住は全国的に整備されつつあり、近年では稼働率が低下し入居者の確保が厳しい施設が増えている。

人口密集地では競合する施設が多く、人口過疎地では高齢者人口の減少が生じている。

そのため、施設系事業所の入居者確保はより厳しさを増すことは必至である。

入居者確保がより難しくなるため、施設はいかに稼働率を落とさないかの取り組みが必要となる。

その一つが「入居者の入院率の抑制」である。

入居者が入院をしてしまうと空床となる。

たとえ、入院後に施設に戻ってくることがわかっていても、入院の期間中は介護報酬や入居費用を請求することはできない。

それでは、施設の入居者が入院する理由はどのようなものがあるのだろうか?

主に以下のようなものが入院の理由である。

・誤嚥性肺炎
・多剤性の副作用
・脱水
・尿路感染症
・転倒・転落による外傷

これらの予防には医師、看護師、セラピスト、栄養士、看護職の連携が必要となる。

例えば、誤嚥性肺炎の予防においては各職種に次のような役割が求められる。

医師:疾患による誤嚥のリスクや薬剤性の誤嚥の評価
看護師:口腔ケアや誤嚥の評価や支援
栄養士:栄養状態の評価や食事形態の改善
介護職:ポジショニングや食事介助の支援
セラピスト:嚥下機能や呼吸機能の維持・向上

つまり、各職種が利用者支援において共通した目的を達成するためにケアやリハビリテーションを提供することが誤嚥性肺炎等を予防し、その結果、入院を防ぐことになる。

また、各職種が目的をもってケアやリハビリテーションに取り組むことは、従業員のモチベーションアップや施設のブランディングにも好影響を与える。

また、2021年度介護報酬改定では科学的介護推進体制加算が新設され、介護保険のサービスにもアウトカム報酬制度が導入された。

ケアやリハビリテーションの質を高めることは介護報酬でも高く評価される方向にある。

つまり、入院の抑制を図るためのケアやリハビリテーションの取り組みは、稼働率の低下だけでなく、介護報酬としても評価される時代になったのである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授