必要なリハビリテーション技術は医療機関・介護事業所ごとに違うのに、リハビリテーション技術に偏向的なセラピストが多い件

筋力強化練習・関節可動域練習・基本動作練習・応用的動作練習・感覚入力練習・物理療法などの標準的なリハビリテーション技術は、どのような分野でも求められる。

よって、セラピストはこれらの標準的なリハビリテーション技術を優先的に学び、技術取得を行わなければならない。

しかし、近年のリハビリテーション提供体制の変革により、リハビリテーション機能が分化しており、分化された分野では、求められるリハビリテーション技術がそれぞれ異なる。

それぞれの分野では先述した標準的なリハビリテーション技術に加え、下記のようなリハビリテーション技術が求められている。

急性期:早期離床・リスク管理・早期歩行・早期摂食嚥下
回復期:在宅復帰等の環境適応・住宅改修・装具療法・摂食嚥下・患者教育
生活期:(軽症):介護予防・引きこもり防止・活動と参加の促進
生活期(重症):トランスファー・認知症・終末期・褥瘡・栄養・呼吸

しかし、筆者が多くの医療機関や介護事業所をコンサルティングをしていると、勤めている医療機関や介護事業所の機能とは親和性の低いリハビリテーション技術を学んでいるセラピストが多いことに驚く。

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もちろん、セラピスト本人にも責任はあるが、組織によるリハビリテーション技術のマネジメントが行われていないことも問題である。

重症患者が多い訪問看護ステーションに勤務しているセラピストが、最新の急性期リハビリテーション技術を学んだとする。

しかし、現場では、摂食・嚥下、呼吸リハビリ、トランスファーなどの技術が求められている。

このような必要とされる技術と実際にセラピストが学んでいる技術のミスマッチは、よく散見される。

本来はマネジメントによりこのようなミスマッチが起こらないようにしなければならない。

また、セラピストは、自分の興味本位ではなく、自分が勤めている分野のマーケット本位で必要とされる技術を学ぶことが、キャリアを構築する上では重要である。

勤め先で必要とされる技術を磨けば、多くの患者や利用者のQOLが向上し、セラピストとしての評価も高まる。

また、事業所としても高いリハビリテーションを提供することができれば、周囲の評判が上がり、事業所の収益増化にも寄与する。

今の時代のセラピストは、リハビリテーション技術を学べる機会は多い。

インターネットを用いた学習やセミナーを受講する機会にかなり恵まれている。

しかし、そこに投資できる時間とお金は有限である。

したがって、冷静に、投資先を考え、学習に見合った効果を考えなければならない。

リハビリテーション技術に偏向的になっているセラピストは、大切な時間とお金を損失している可能性が高い。