急性期病院からの直接の自宅復帰が評価される時代に突入した

近年の入院医療に関する診療報酬改定では、在宅復帰を評価する流れが進んでいる。

在宅復帰というと、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟が注目されがちであるが、実は、急性期病棟と療養病棟の在宅復帰の評価が急速に進んでいる。

平成26年度のデータでは、7:1病棟の退院患者の76%が、どこの病棟も経由せずに直接、自宅に戻っている。

急性期と在宅の連携

医療費削減の観点から考えると、患者が急性期病院から病院や施設も経由せずに直接自宅に帰ることは、非常に望ましいことである。

回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、老人保健施設を経由すると、医療費や介護給付費が生じ、社会保障費の増大につながるからだ。

したがって、急性期病院から直接自宅に復帰することは、政府としては是非とも進めたいことである。

急性期病院から直接自宅に復帰する政策として、様々なものが導入されている。

回復期リハビリテーション病棟には、従来より入院できる疾患の条件、在宅復帰率、重症患者率などの要件が設定されている。

これらの要件に加え、2016年度診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟は「効果的なFIMの獲得」ができなければ、7単位以上のリハビリテーション料の請求ができなくなり、入院料に包括化されることになった。

また、効果判定に活用するFIMを用いた計算式から以下の者が毎月3割まで除外できると規定されている。

1. FIM運動項目が著しく高い(76点以上)・低い(20点以下)の者
2. FIM認知項目が低い(25未満)の者
3. 年齢が80歳以上の者

これらの1から3に該当する患者像は、「大きなADLの回復が難しい者」であると言える。

つまり、これらの患者の入院が増え、入院比率が3割以上となればFIMの計算式に入れなければならず、FIM改善率が低下する可能性が高い。

以上のことをまとめると、回復期リハビリテーション病棟には、入院できる疾患が縛られている上に、ADLの大きな回復が見込める患者であり、かつ、在宅復帰が期待される患者しか入院できない制度設計が進行していると言える。

1123
また、2016年度診療報酬改定では、急性期病院と療養病院に、退院支援加算が新設された。

退院支援加算の目的はずばり「在宅復帰困難者の在宅復帰支援を円滑に行うために、地域の介護事業者等との連携を図る」ことである。

この加算の対象者は、退院困難な要因を有する入院中の患者であって、在宅での療養を希望するものである。

一般病床と療養病床で算定ができる加算であるが、一般病床が600点、療養病棟が1,200点と非常に高い点数が設定されている。

加算の要件は厳しいものの、国が急性期病院と療養病院の自宅への直接復帰を推奨したい狙いが見え見えである。

20か所以上の連携する医療機関や介護事業所の職員と年に三回以上の定期的な面会を実施することが求められ、かつ、介護支援連携指導料の実績も求められていることから、早期への自宅への復帰を支援するための連携が標準化されつつあると言える。

これからは急性期病院と療養病院からの在宅復帰が大きな社会課題となってくる。

そのためには、地域におけるあらゆる社会資源を持つ組織や人材を有効に生かす必要がある。

セラピストを含め、医療従事者はこのようなトレンドを十分に知ったうえで働く必要があるだろう。

退院支援加算