単独型訪問リハビリは必要か?制度化をめぐる現状と展望

訪問リハビリステーションの創設は、現場の療法士や一部の業界関係者から期待されているテーマのひとつである。

しかし、2027年度の介護保険改定においても大きな議題には上がっておらず、国政レベルでの具体的な動きは見られていないのが現状だ。

過去に、復興特区や一部地域で単独型訪問リハビリテーション事業所の運営が行われているものの、全国的な制度化が実現するかどうかは全く未知数である。

現状では、訪問リハビリテーションは訪問看護ステーションに併設される形で提供されることが一般的である。

訪問看護師、療法士、ケアマネージャーが日常的に情報共有し、迅速な意思疎通を図ることができるため、地域包括ケアシステムのなかで有機的な連携が取りやすい構造となっている。

療法士が単独で開業できる仕組みは、職能を守り、より専門的なサービスを追求できる可能性を秘めている。

しかし、独立事業所として訪問リハビリステーションを設置した場合、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所との連携は事業所間の関係となり、縦割り組織の弊害が生まれやすい懸念もある。

むしろ、同一事業所内に看護師・療法士・介護職が在籍している環境のほうが、ケアマネージャー等の外部関係者との調整もスムーズであり、現場レベルでの問題解決が迅速に行えるメリットがある。

どの制度にも必ず利点と欠点は存在する。

しかし、重要なのは個別最適や業界都合にとらわれず、地域全体・利用者全体にとって最適となる視点を常に忘れないことである。

制度議論はその視点で進められるべきだろう。

療法士の専門性発揮と職域拡大は重要である一方で、医療・介護の現場では多職種連携が不可欠である。

訪問リハビリステーションが制度化される場合、個別事業所としての独立性と、地域包括ケアにおける統合性のバランスが課題となるだろう。

制度設計は現場の声を反映しつつ、縦割りを生まない柔軟な連携体制をどう構築できるかが鍵となる。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です