地域包括ケア病棟と地域包括医療病棟の違いと今後の役割 〜リハビリ現場で求められる対応とは?

2014年度の診療報酬改定により、地域包括ケア病棟が新設された。

当時、この病棟は急性期治療後の患者や在宅からの直接受け入れを想定し、一定の在宅復帰率を満たす厳格な要件が設定されていた。

その結果、医師、看護師、リハビリ専門職、ソーシャルワーカーなど、多職種が連携し、短期間で在宅復帰を目指す体制を構築することが求められた。

リハビリテーション医療も出来高から包括評価へと移行し、部分最適ではなく全体最適の観点でチーム医療を行うことが重視されるようになった。

限られた単位数の中で最大限の効果を発揮するため、精度の高いアセスメントと単位配分の最適化が求められたのである。

地域包括ケア病棟の設立により、急性期病棟、回復期リハビリ病棟、療養病棟との棲み分けも進み、患者の状態や回復段階に応じて適切な医療提供が行われる体制が整備された。

この結果、医療資源の効率的な活用と患者の早期在宅復帰が促進された。

一部の地域包括ケア病棟においては、回復期リハビリテーション病棟を超えるアウトカムが報告され、これが制度全体の包括化をさらに促進する兆しとなった。

包括化が進めば、医療保険領域におけるセラピスト需要は減少し、余剰人材が介護保険領域へ流れるという見通しも当時から指摘されていた。

これらの動きは、病院組織内のマネジメントや人材戦略、さらにはセラピストのキャリア形成にも大きな影響を及ぼしたのである。

そして2024年度、地域包括医療病棟が新設された。

この病棟は、急性期を終えた高齢者や救急患者を受け入れ、短期的に治療継続および医療的調整を行うことに特化した病棟である。

生活再建支援を軸とする地域包括ケア病棟とは異なり、地域包括医療病棟は「治療継続型」として、より医療ニーズの高い患者を支える役割を担う。

今後、両者の棲み分けは一層明確となり、「生活再建型」の地域包括ケア病棟と「医療継続型」の地域包括医療病棟をいかに活用するかが、医療機関経営の大きな鍵となる。

今後は、地域全体の医療・介護資源をいかに有効活用できるかが重要であり、病棟単位での成果のみならず、地域連携や在宅支援体制の強化が課題となる。

特に、地域包括医療病棟の運用開始に伴い、病院は自院の役割を見直し、患者層に応じた受け入れ方針やチーム体制の再構築が求められる。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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