なぜ、セラピストのキャリアデザインが必要なのか?

セラピストを取り巻く環境は、近年非常に厳しいものとなっている。

かつての、比較的安定した雇用に変化が表れている。

時給の低下、生産性向上への期待、在宅医療へのシフト、非正規雇用の増加などの環境変化により、多くのセラピストが今後の仕事に対して不安を感じている。

日本全体の労働力の1/3が非正規雇用であることを考えると、医療・介護に関しても非正規雇用が増えることは致し方ありない。

さらに、理学療法士は年間1万人、作業療法士は年間5千人増加し、過剰供給による「資格の価値」の低下も懸念される状況である。

このような背景から、現代に働く理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の多くは、5年後の自分の生活を想像することすら難しくなっている。

安定した一つの組織でキャリアを発展させることができるセラピストは減少し、多くの人が何度も職場や仕事内容を変えることになる時代が到来している。

2050年に向けて労働環境は益々、流動的となり、キャリアの主体は組織から個人へシフトしていく。

2050年に向けて働くセラピストは、「環境変化が著しい仕事人生をいかに乗り越えるか」という技術が必要である。

まさに、自分の人生をデザインする力がこれからのセラピストには求められている。 20150416230254592 大病院や正規雇用のセラピストでさえ、自分の将来に向けてのキャリアの道筋を明確に定めることが難しい現状である。

キャリアデザインの意識なしに仕事をするのは、地図や羅針盤を持たずに砂漠を歩くのと同じである。

自分の人生をどのようにデザインするか? 真剣に考えなければならない時代が到来している。

 

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

PT・OT・STのキャリアデザインを考える サニー・ハンセンの「統合的人生設計」

従来のキャリア理論は、個人の興味・関心・価値観を最重要視しており、個人の特性が最もキャリアデザインでは重要であると説明している。

しかし、社会環境の激しい変化や価値観の多様性が進む現代社会においては、個人の特性のみを考えたキャリアデザインでは、困難な状況に陥る可能性がある。

そのような背景を踏まえて、1997年にサニー・ハンセンは、「統合的人生設計」という概念を提唱した。

「統合的人生設計」とは、個人・その家族・地域社会・世界のニーズを包括的に考え、キャリアデザインを行っていく考え方である。

統合的人生設計には以下の6つポイントがある。

1)グローバルな視点から仕事を探す
興味・関心・能力・価値観だけでなく、地球規模で必要とされている事柄や課題に興味を示し、それらの解決をどのようにすればできるかについて考えることが重要である。
そのうえで、自身の仕事について考える。

2)自分の人生を「有意義な全体」として位置づける
職業選択では、人生の複数の役割と職業をどのように組み合わせるかについて考えるべきである。
興味や満足だけでなく、人生における様々な要素と組み合わせることが重要である。

3)家族と仕事を結びつける
伝統的な男女の役割は大きく変化しており、今後も女性の社会進出や男性の仕事に対する考え方の多様化は進んでいく。
育児・家事・介護なども夫婦や家族における重要な役割であり、これらのことも考慮したキャリアデザインが重要である。

4)多様性と包括性を重んじる
人種・民族・社会階級・宗教・年齢・性別・身体能力・性的嗜好など自分とは異なる人々で社会は構成されてい。
よって、多様性を重んじる姿勢でキャリアデザインを行っていくことが重要である。

5)内面的な意義や人生の目的を探る
仕事を通じて得られる内面的な意義を見出すことが重要である。
職業選択においては、内面的な意義を感じられるかに焦点を当てる必要がある。

6)個人の転機と組織の改革に対処する
社会環境の激しい変化や終身雇用制の崩壊により、各個人が自身の人生の変化に対処する技術が必要となっている。
キャリア形成においては、自身の人生の変化にも対処できる技術を身に着ける必要がある。 090750 例えば、セラピストが興味を持った事柄について取り組もうとした時に、その事が社会に貢献しないことだったり、家族に迷惑をかける可能性があることがわかったとする。

その場合、社会貢献や家族との調和の視点から、改めて自分のしたいことは本当に必要なことであるかを考えることが重要となる。

興味・関心・価値観だけで、キャリアデザインを行うのではなく、社会や身近な人との融和や貢献について考えることが、これからのキャリアデザインには必要であるとサニー・ハンセンは提唱している。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
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修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

資格取得戦略1 基本スペックを上げる資格取得が最優先

世の中は数多くの資格が存在する。

多くの資格を取得することや、合格のハードルが高い資格を取得することが重要だと考えているセラピストは多い。

しかし、実は、多くの資格や難易度の高い資格を取得することは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のキャリアの発展には直結しない。

資格取得の目的は、「資格取得により自分の価値観を満たしていくための働き方を実現する」ことである。

どのようにすれば、自分の価値観を満たしていくことができるだろうか?

最初に必要なことは「社会から必要とされる人材になる」ことである。

まず初めに、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として社会から必要とされる人材となり、社会のニーズを満たすことが重要である。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として社会のニーズを満たすことができなければ、自分の価値観を満たしていく行動に対して、社会は厳しい視線を送る。

つまり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として基本スペックが重要となってくる。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士としての基本スペックが備わっているからこそ、社会はあなたの価値観を認め、それを応援してくれる。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士なのに、治療効果が出せない、リスク管理ができない、専門性がない、リハビリテーションに関して議論できない、チーム医療が実践できないセラピストに対し、社会はそのセラピストの価値観を満たす言動を応援などするはずもない。 369037 基本スペックを上げるためには、 理学療法・作業療法・言語聴覚療法に関する学会や団体が認定している資格の取得 理学療法・作業療法・言語聴覚療法に関する学会発表や論文投稿 などの行動が重要である。

これらの行動を通じて得られる知識や経験は確実に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士としての基本スペックを向上させてくれるだろう。

キャリア・デザインを意識した資格習得戦略では、第一に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士としての基本スペックを上げることを最優先事項として取り組むことが求められる。

 

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

PT・OT・STのキャリアデザイン 過去の経験を未来へ活かそう

キャリアデザインやキャリアアップについて考える場合、「未来のこと」を一生懸命に計画する方が多いのではないかだろうか?

近い将来、〇〇な資格を取りたい。
次の職場は、〇〇ができることに行きたい。
大学院に行って、〇〇について勉強したい。
など未来について考えることがキャリアデザインであると考えている人は多い。

実は、キャリアを考える上で重要となるのは未来のことより、「過去のこと」である。

自分の価値観や自己概念をより反映したキャリアを開発できる人の特徴は 「過去のこと」に対する向き合い方が非常に上手であるということである。

「過去のこと」に向き合うことが上手という方は以下の2つについてしっかりと対応ができる。

1)過去から現在まで、人生や仕事において自分が置かれている状況を明確に把握している
2)過去から現在までの状況に対して、感情だけでなく、その状況に対して意味づけをしている

例えば、 「病院で嫌な仕事を与えられ、仕事を辞めたいと考えている。しかし、年齢も47歳で、今から転職するかどうか悩んでいる」 というキャリア上の悩みをセラピストが持っていたとする。

このような場合に、
1)今の病院で働いてきた中で、獲得してきた知識、経験、技術を整理する 2)嫌な仕事を与えられたことに対してどのような気持ちになっているのかを整理する
3)年齢が47歳が自分にとってどのような意味を持つのかを整理する
4)今から転職することで具体的にどのような不安があるのかを整理する 5)1)~4)の内容を統合した上で、自分は何に悩んでいて、そしてどの様にしたいのかを考える。

これらの一連の思考が、発展的で主体的なキャリア開発には欠かせない。 120889 キャリアを考えるうえで重要なのは 「経験の再現」と「意味の出現」の繰り返し である。

過去の経験をしっかりと振り返り、 それに対して、どのような感情や気持ちを持っているのか。

それを踏まえて、自分は将来どうしていきたいという気持ちを持っているのか?

この繰り返しをすることで、自己概念を反映したキャリアを選択することができるようになる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

仕事は自分自身を表現するツールである

今の仕事がしんどい 今の仕事を辞めたい
今の職場が嫌だ 今の上司が嫌いだ

こんなことをつぶやきながら働き続けている理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は多い。

まるで、奴隷のように働いている。

言い換えれば、やりたくもない仕事に人生を支配されているのだ。

このような状況の人は180度、仕事に対する考え方を変えたほうが良い。

仕事は自分自身を表すツールであり、あくまでも人生を豊かにする道具である。 57f5f454e9aa0cbe2f855994e6a2d530_s

仕事が人生を支配するのではなく、人生が仕事を支配しなければならない。

そのためには、自分らしい人生を歩むことが最重要課題となる。

人生においては自分の興味・能力・価値観を理解することが重要であり、それらを満たす職業や職場にたどり着くことが求められる

・自分はどんな仕事をしたいのか
・自分はどんな仕事ができるのか
・自分は仕事において何を大事にしたいのか

これらのことを大切に日々の人生を歩まなければ、不満に満ち溢れた仕事をやり続けることになる。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士という資格は人生のツールでしかない。

自分自身がどのような人生を歩みたいかを決め、これらの資格を用いて人生をデザインすることが重要だ。

市場の労働環境や社会情勢の変化が激しい現代において、自分自身の人生を深く考えなければ、環境の奴隷となることは間違いない。

自分自身の気持ちや考えを抑えつけて、ひたすら働く。

こんな働き方はいつまでも続くものではない。

あなたの仕事はあなた自身の思いや考えを表現できていますか?

今一度考えてほしい。

執筆者
高木綾一 セミナー講師 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
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関西医療大学保健医療学部 客員准教授