多くのPT・OT・STが罹患している「努力すれば報われる症候群」

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はまじめな人が多い。

患者さんのためにストイックに勉強する。

毎月、様々な参考書を購入する。

学会発表に熱心に取り組む。

もちろん、20万人近くいる理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の中には、何の危機意識もなく、何の努力もせずにテキトーに仕事をしている人も多い。

しかし、一方でかなりまじめな人も多く、「本当によく頑張っているなぁ」と感心するセラピストも多い。

だが、努力しているセラピストほど、罹患している陥りやすい症候群がある。

それは、「努力すれば報われる症候群」である。

努力していれば、いつか給料が上がる
努力していれば、いつか上司に認められる
努力していれば、いつか良い職場に行くことができる
努力していれば、なんとかなる

という思考に陥っているセラピストが多い。

しかし、努力すれば成功するという法則はない。

もし、努力すれば成功するのであれば日本人は成功者に溢れている。

成功するためには、「努力」と「運」が必要である。

「運」がなければ、どれほど努力しても、努力したという充実感だけが残り、実利は何も得られない。

では、「運」とは何か?

「運」とは、自分を成功に導いてくれる可能性のある出来事や人物との遭遇である。

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努力をして自分のスペックを高いレベルに仕上げた者が、自分を成功のステージに導いてくれる機会を得た時に、初めて成功の可能性をつかむのである。

成功の可能性は、自分を成功のステージに導いてくれる機会の数に正比例して高くなっていく。

すなわち、自分一人で地道に努力をしていても成功はしない。

成功のための言動や方法論は、決して誰も教えてくれない。

成功している理学療法士・作業療法士・言語聴覚士ですら教えてくれない。

なぜかというと、社会や会社はあなたに成功をしてほしくないからである。

社会や会社は、本当に大切なことは教えてくれない。

一生懸命に努力をしても報われていないセラピストは、今すぐに自分を成功に導いてくれる可能性のある出来事や人物との出会いの頻度を高めることをお勧めする。

 

マニュアル本に記載さている知識を軽視しているセラピストは療法もどきしか展開できない

臨床において最も重要な能力は「想像力」である。

なぜ、こんな現象が起きているのだろうか?
このような事をしたら、どうなるのだろうか?
この現象の原因はここではないだろうか?

常に仮説を立てて、その仮説が正しいかどうかの検証を繰り返す能力が臨床では求められる。

そして、「想像力」の源泉は、「基礎的な能力」である。

さらに、基礎的な能力は 「知識」×「経験」 により開発される。

言い換えれば、いくら経験があっても知識がなければ基礎的な能力は開発されない。

教科書や参考書に記載されている知識というのは、全くの素人を短時間で一定レベルの専門家にする代物である。

知識というのは、知っているか、知っていないかという両極端な性質を持つ。

したがって、知識がなければ、いくら想像したところで仮説は生まれてこない。

その知識を臨床の中で試行錯誤しながら用いることで、様々な仮説検証を展開できる。

よって、いくら経験があっても、知識がなければ仮説検証ができず、「理学療法もどき」「作業療法もどき」「言語聴覚療法もどき」しか展開できないことになる。

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今の時代、マニュアル教育が軽視されている。

マニュアルを知っていても、実践では使えないと平気で言う管理職さえもいる。

しかし、マニュアルに書かれていることさえも理解できずにどうやって臨床を展開できるだろうか?

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって、解剖学、病理学、運動学、生理学などのテキストは重要なマニュアルである。

マニュアルさえも理解できずに、難しい手技や理論を他者から教授されても全く持って理解できない。

むしろ、多くの患者はマニュアルに書かれていることだけで多くのことが解決できる。

エビデンスに基づく医療が叫ばれて久しいが、エビデンスとは最新の理論や論文に記載されていることだけではない。

すでに証明されて、教科書やマニュアルに載っていることを使いこなすこともエビデンスに基づく医療である。

マニュアルを軽視しては、いけない。

やりたいことがあるセラピストはマイノリティーである

キャリアデザイン研修やリハビリテーション部門のコンサルティングをしていると以下のような質問をよく受ける。

「やりたいことが見つからないので困っています、どうしたらいいのでしょうか?」
「うちの職員は将来の目標がなく、漫然と臨床をしています。どのように教育したら良いのでしょうか?」
「目標管理における目標設定が低くて困っています」

つまり、目標設定とか、やりたいこと・・・これらを明確にした上で、仕事をしてほしいと管理職は切望している。

しかし、今のご時世、やりたいことや人生の目標があるセラピストはマイノリティーである。

そもそも、日本は世界最強の先進国であり、物質的には十分に満たされている。

その上、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は国家資格であり、職場を選ばなければ就職率100%である。

しかも、セラピストとしての能力が低くても就職できるという公務員以上に、市場の競争から守られている特殊な仕事である。

そんな世界で生きているセラピストにやりたいことや目標があるほうが珍しいと考える方が賢明である。

そんなセラピストをどのように導いでいけばよいのだろうか?

そのようなセラピストには、「ロールモデル」の提示が最も有効である。

今日は、病床削減、地域包括ケア、在宅シフト、EBM思考、ロボット活用・・・などリハビリテーションに関する価値観が多様になっている。

また、インターネット世代の若いセラピストほど、多くの情報に触れており、膨大な選択肢から何かを選択することが苦手である。

よって、リハビリテーション部門や介護事業所は、どのようなセラピストになってほしいかというリアルなロールモデルを提示しなければ、セラピストが自ら目標を想起することは困難である。

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このようなことをこのようなレベルでできるようになる
接遇はこの程度のレベルになる
書類作成はこの程度の水準はできるようになる
歩行介助は○○さんと同じぐらいのレベルになる
リスク管理に関するテストで80点以上を獲得する
カンファレンスでは○○さんのように発言する

など、より具体的に求める人物像を示すことが重要である。

そもそも、やりたいことや目標設定ができる人で組織が構成されていれば、人材教育など不要である。

目標設定を本人に任せていると言えば、聞こえは良いがそれはただの人材教育の丸投げである。

「やりたいことがあるセラピストはマイノリティーである」という認識が人材育成の基本である。

仕事では「いい人」と呼ばれて喜んではいけない

医療・介護コンサルタントして仕事をしているとよくこんな場面に出くわす。

私:〇〇さんは、ルールも守れず、また、自主性もないので管理者としては不適切ですね
クライアント:そうなんですよ。問題だらけです。でも、いい人なんですよ。本当に。

こんな会話は多くないだろうか。

いい人なんですよ。 という言葉は、どういう意味を持つのだろうか。

仕事はできないが、いい人なんでそれほど悪い人ではないと言いたいのだろうか。

仕事場では、いい人はいらない。

仕事場では、仕事ができる人が必要であり、いい人はそれほど必要ではない。

大体、仕事ができる人は、「いい人」ではない。

組織や業績のために言わなければならないことが、たとえ、相手の嫌がることであっても、平然と言ってのける人間が仕事では、結果を出す。

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そして、こういう人間は周囲から「きつい人」「怖い人」と言われ、「いい人」とはかけ離れた印象となる。

確かに、20代では「いい人」は評価されるかもしれない。

周囲と調和して、友達も多く、人間関係上の問題も起こさない。

しかし、仕事の結果やチームビルディングが期待される30代、40代で「いい人」は、周囲との人間関係は良好であっても、周囲との軋轢を回避するため、根本的な仕事上の問題点が解決できず、良い結果を残せないことが多い。

仕事では、いい人であることではなく、仕事で良い結果を残すことが求められる。

仕事ができる人になりたければ、「いい人」を卒業しなければならない。

いい人と呼ばれて喜んでいるようでは、だめだ。

今からの時代は副業はない。すべてが本業である

多くのセラピストがダブルワーク、トリプルワークをしている。

本業だけは、生活が苦しかったり、自己研鑽の費用の捻出が苦しかったりする。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の平均年収は400万円以下であり、今後もそれを超えることはないだろう。

平均年収400万円では、将来の生活に不安がつきまとう。

よって、多くのセラピストは、休日に時給の高い非常勤を行うことが多い。

しかし、もう一段階上の次元での働き方をお勧めする。

その非常勤はあなたにとってどのような投資であるのか?という視点を持つことである。

非常勤で働いている時間は、人生にとって非常に重要な時間を切り売りしている時間でもある。

時間は有限であり、時間をいかに有効活用できるかで将来の収入や充実感が変化すると言っても過言ではない。

そんな貴重な時間を、単なる時給稼ぎのために使用することは避けるべきである。

これからの時代は、本業と副業の区別がない時代であり、すべての経験を本業と捉え、そのキャリアを人生や仕事で活かしていく姿勢が求められる。

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例えば、回復期リハビリテーション病棟に勤務をしているセラピストが、訪問リハビリテーションにて非常勤勤務したとする。

訪問リハビリテーションでは、医療と介護の連携が難しかったり、高いコミュニケーション能力が求められたり、看護師との連携が必要になったりする。

これらの経験は、確実に回復期リハビリテーション病棟での業務に活きるとともに、将来への投資になる。

個別場面で経験したことを、統合し、仕事をする上での価値観として統合していくことがこれからの時代のキャリアデザインでは必要である。

本業と副業はあくまでの収入の大きさだけで判断をした分け方である。

キャリアや経験という意味では、本業と副業という分け方は不適切である。

経験していることがすべて本業である。