あかんもんは、あかん。というマネジメントが最後は勝つ。

限りなくブラックに近いマネジメント手法が、全国津々浦々には存在する。

筆者のもとには、全国から様々な質問が寄せられる。

医療保険で疾患別リハビリテーションの上限日数が超えたので、疾患の付け替えをしていますが、それはだめでしょうか?

通所リハビリテーションで利用者にマッサージを提供していますが、それではリハビリテーションにならないでしょうか?

服薬指導において、意思疎通が取れない患者に対して、元気ですか?と声かけだけで加算をとるのはだめでしょうか?

回復期リハビリテーション病棟の医師が患者の回診をほとんどしないのが常態化していますが、やっぱりまずいですよね?

1時間の訪問看護で毎回、半分以上は看護に関係のないおしゃべりをして、1時間の算定をしてますが、これってばれないですよね?

これらの質問は本当にあったものである。

全部、「あかんにきまってるやん!」(大阪弁)です。

005bc446aa5138424da405e3bc61b645_s

このような質問をしてくる人は、心のどこかに「自分たちはとんでもないことしている。だから、誰に駄目だと言ってほしい」という心理が働いている。

私から、「そのようなはすべていけないことだ」と諭すように話をすると、「自分たちのしていることが、だめだと感じている。しかし、経営幹部からのプレッシャーがあり、やってはいけないことを容認している。どうしたものか・・・」という気持ちを打ち明けてくる。

しかし、あえて言う。

経営幹部からのプレッシャーだろうが、なんだろうが、「あかんものは、あかん」である。

こういったモラルハザードを容認する組織は、遅かれ早かれ必ず崩壊する。

経営幹部と喧嘩しろと言っているのではない。

モラルのある事業所運営を行うことも、医療・介護の国家資格を持つ専門職の職責である。

政府や保険者は様々な手法を通じて、医療・介護事業所で行われているモラルハザードを把握している。

そのモラルハザードに加担している専門職に対しては、診療報酬改定や介護報酬改定を通じて手痛い打撃を与えてくる。

「あかんもんは、あかん!!ちゃんとした事業所運営をしよう!」という気持ちを強く持つことから、事業所改革は始まる。

事業所改革の強い気持ちを持つことができないことを、経営幹部からのプレシャーという言い訳をして、責任転嫁をしてはいけない。

管理職を今こそ、立ち上がれ。

「ルールは平等ではないことを知っているセラピスト」が、社会では登りつめる

ルールには様々な種類がある。

日本に住んでいれば、法令、憲法、法律、政令、省令、条例、条約などが思いつく。

また、職場では、就業規則や業界のルールなどが存在する。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も様々なルールの下で働いている。

一見、「ルールは平等なもの」に見えるがそれは全くのウソである。

ルールというのは、「ルールを作った人や組織が自らが有利になるように作られる」ものである。

国のルールは官僚が作っており、官僚には不利にならないように作られている例がわかりやすい。

キャリアデザインでもビジネスでも、ルールを作った側の方が圧倒的に有利である。

ルールなんてどうやったら作れるの?
雇われの身分なんだからルールなんか作れないよ!
という声が聞こえてきそうである。

しかし、「ルールは不平等である」という現実の直視が、キャリアデザインやビジネスには重要であることには変わらない。

雇われているサラリーマンは、どんな理不尽なルールや規則であっても従わなければならない。

従わないのであれば、解雇を覚悟しなければならない

そして、解雇されずにルールを変えようとするのではあれば、
経営者になるか
買収するか
最上級幹部になるか
しかない。

しかし、それらは現実的な方法ではない。

bbb439482afccce150aa525c2e34c10e_s

では、どうすればよいのか?

ルールが作れる業界や分野で自分のリーダーとして積極的にルール作りに参画できる状況を作っていくことが重要である。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が有利に働くためには、
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が有利に働ける診療報酬改定や介護報酬改定のルールを作る
地域連携における理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が必要とされるルールを作る
社内で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が有利となる人事考課制度を作る
リハビリテーション業界で強い力を発揮する経験や資格を取得し、ルール上有利になる
などの方法がある。

また、
リハビリテーションの技術分野や地域リハビリテーションのオピニオンリーダーになる
まったく開拓されていない分野のパイオニアになる
組織を立ち上げて、ビジネスを行う
の方法では、より理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に有利な状況を作ることができるだろう。

ルールは平等ではない。

ルールは作る側になる。

キャリアデザインやビジネスにおいては、極めて重要な視点である。

通所リハビリテーションへの移行を妨げている理由が、本当の理由ではない件

2016年4月27日に開催された中央社会保険医療協議会にて、「平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成27年度調査)の 本報告案について」が報告された。

その中で、「通所リハビリテーションを開設する意向がない理由」に関して報告がなされた。

ddd2016年4月27日 中央社会保険医療協議会 資料

人員を確保することができない
場所の確保が必要である
送迎体制を整えるのが困難
など・・・・たくさんの理由が列挙されている。

しかし、これらの理由は本当に「理由」であるか?

ここに記載されいている内容はすべて、通所リハビリを開設するために必要な手段である。

手段は目的を達成するために必要なものであり、多くの手段はマネジメントの手法により解決できる。

人員を確保できなければ、人材獲得のマーケティングを行えば良いし、
場所を確保できなければ、必死で不動産に関する情報を集めればよい。

病院や診療所の院長、経営幹部と話をしていると、そもそも通所リハビリがどのようなものであるかを理解していないことが圧倒的に多い。

通所リハビリは儲かる→だったら、やってみよう→え、開設するのは意外に大変じゃん→しかも、運営には結構手間と費用が掛かるんだね→通所リハビリの開設はやめておこう

という展開に陥る病院や診療所が非常に多い。

通所リハビリの運営がうまくいっているところは、通所リハビリの社会的意義や地域リハビリテーションへの情熱や理念が明確にしている。

理念を実現するために必要な手段には、全力を尽くすことができる組織だからこそ、様々な問題を解決することができる。

097559

誤解を恐れずに言うと、通所リハビリ、通所介護、訪問リハビリは、あくまで外来診療、入院診療の本体事業とは別の副業事業として考えている医療機関が多いのではないだろうか?

「外来医師の負担が大きくなる」という理由が挙げられているが、この理由は理由になっていない。

通所リハビリを開設する理念があるなら、人材の問題は解決しなければならない。

副業の感覚で捉えているから、人材を増やさずに儲けたいという気持ちが芽生えるのだ。

副業感覚で通所リハビリをとらえている以上
通所リハビリが開設できない
通所リハビリの運営がうまくいっていない
という状況は打開できない。

 

必要なリハビリテーション技術は医療機関・介護事業所ごとに違うのに、リハビリテーション技術に偏向的なセラピストが多い件

筋力強化練習・関節可動域練習・基本動作練習・応用的動作練習・感覚入力練習・物理療法などの標準的なリハビリテーション技術は、どのような分野でも求められる。

よって、セラピストはこれらの標準的なリハビリテーション技術を優先的に学び、技術取得を行わなければならない。

しかし、近年のリハビリテーション提供体制の変革により、リハビリテーション機能が分化しており、分化された分野では、求められるリハビリテーション技術がそれぞれ異なる。

それぞれの分野では先述した標準的なリハビリテーション技術に加え、下記のようなリハビリテーション技術が求められている。

急性期:早期離床・リスク管理・早期歩行・早期摂食嚥下
回復期:在宅復帰等の環境適応・住宅改修・装具療法・摂食嚥下・患者教育
生活期:(軽症):介護予防・引きこもり防止・活動と参加の促進
生活期(重症):トランスファー・認知症・終末期・褥瘡・栄養・呼吸

しかし、筆者が多くの医療機関や介護事業所をコンサルティングをしていると、勤めている医療機関や介護事業所の機能とは親和性の低いリハビリテーション技術を学んでいるセラピストが多いことに驚く。

’j«ŠÅŒìŽt_‘厸”s

もちろん、セラピスト本人にも責任はあるが、組織によるリハビリテーション技術のマネジメントが行われていないことも問題である。

重症患者が多い訪問看護ステーションに勤務しているセラピストが、最新の急性期リハビリテーション技術を学んだとする。

しかし、現場では、摂食・嚥下、呼吸リハビリ、トランスファーなどの技術が求められている。

このような必要とされる技術と実際にセラピストが学んでいる技術のミスマッチは、よく散見される。

本来はマネジメントによりこのようなミスマッチが起こらないようにしなければならない。

また、セラピストは、自分の興味本位ではなく、自分が勤めている分野のマーケット本位で必要とされる技術を学ぶことが、キャリアを構築する上では重要である。

勤め先で必要とされる技術を磨けば、多くの患者や利用者のQOLが向上し、セラピストとしての評価も高まる。

また、事業所としても高いリハビリテーションを提供することができれば、周囲の評判が上がり、事業所の収益増化にも寄与する。

今の時代のセラピストは、リハビリテーション技術を学べる機会は多い。

インターネットを用いた学習やセミナーを受講する機会にかなり恵まれている。

しかし、そこに投資できる時間とお金は有限である。

したがって、冷静に、投資先を考え、学習に見合った効果を考えなければならない。

リハビリテーション技術に偏向的になっているセラピストは、大切な時間とお金を損失している可能性が高い。

整形外科クリニックが院内でリハビリテーションだけを提供していればよい時代は終わった

整形外科クリニックの勝ち組と負け組の二極化が止まらない。

2000年前後から2010年ぐらいまでは、リハビリテーションの施設基準を取得し、理学療法士によるリハビリテーションを提供することが整形外科クリニックの差別化戦略として有効であった。

しかし、このブログを作成している2016年では、リハビリテーションを提供している整形外科クリニックは山とあり、リハビリテーションの提供の有無が整形外科クリニックの差別化に繋がらない状況である。

筆者がコンサルティングをしていると、「どこもかしこもリハビリテーションをしているから、これからの時代はなかなか患者が集まらなくなった」とか、「これからの整形外科クリニックはじり貧ですね」などの声が、院長、経営幹部から聞こえてくる。

果たしてそうだろうか?

今の時代においても、患者が沢山集まり、収益が増加している整形外科クリニックは沢山存在する。

結局のところ、勝ち組の整形外科クリニックが存在する以上、「時代の流れ」は全く関係がない。

整形外科クリニックは時代の流れに身を任せるのではなく、新しい市場やニーズに対してマーケティングができなければ、経営の再構築は難しい。

Print

整形外科クリニックを取り囲む状況は急速に変化している。

環境変化の事例としては
1)医療の在宅シフトが急速に進んでおり、在宅患者のフォローが求められている
2)デイサービスが急増し、運動器疾患を持つ方のリハビリテーションサービスが行われている
3)整骨院が急増し、運動器疾患の初診患者が整骨院に流れている
4)予防に対する意識が高まっており、医療と運動を組み合わせた民間サービスが増えている
5)維持期患者の介護保険リハビリテーションへの移行が進んでいる
などが上げられる。

これらの環境変化に対して、なんらかの行動を起こさなければ間違いなく「ジリ貧」になっていく。

また、当然、整形外科クリニックの専門性も重要である。

画像診断、日帰り手術、病院との連携など医療の本質の部分の強化を忘れてはならない。

さらに、見込み患者や既存患者へのマーケティング活動も怠ってはならない。

地域へのアピール
Webを通じた情報発信
新規患者の導線確保
などのマーケティング活動が安定的な患者増加には欠かせない。

院内で理学療法士によるリハビリテーションだけを提供していれば、整形外科クリニックとして安定的な経営ができる時代は終焉した。

リハビリテーションを活用した新たな価値の提供が、これからの整形外科クリニックには必須である。