リハビリテーション部門はそろそろ、意味のない社内研修会はやめましょう

PT・OT・STの有資格者は、2016年時点で25万人に届こうとしている。

業界の平均年齢も若く、20代から30代のセラピストが突出して多い業界である。

したがって、現場経験の少ないセラピストが働いている医療機関や介護事業所も多い。

よって、社内研修会を通じて、若手セラピストをいち早く一人前のセラピストにすることが組織運営において極めて重要であり、日々、全国津々浦々のリハビリテーション部門では、様々な研修が行われている。

おそらく、どの部門より研修を行っているのではないだろうか。

一方、医療保険・介護保険の双方においてリハビリテーションの効果判定がシビアに求められるようになっている。

アウトカムを出すことができなければ、医療保険や介護保険収入が減少し、組織運営が存続の危機に直面する時代である。

厚生労働省は、地域包括ケアシステムの推進や要介護度を軽減させるためにリハビリテーションが必要と考えており、今後はより急性期、回復期、生活期においてアウトカム評価を導入していく。

筆者がリハビリテーション部門コンサルティングをしている中で、よく遭遇する現象がある。

それは、「社内研修が行われているが、求められているリハビリテーションのアウトカムの改善に寄与する研修や取り組みが行われている医療機関や介護事業所は稀有である」ということである。

1)整形外科中心の回復期リハビリテーション病院なのに、脳卒中の研修会が圧倒的多数を占める
2)在宅復帰を強化している療養病院や老人保健施設なのに、家屋評価、基本動作の評価や治療の研修会が少なく、痛みを取る○○テクニックや○○手技などの汎用性の低い内容の研修会が多い
などの状況に陥っている医療機関や介護事業所は多い。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は学ぶことに貪欲な人が多い。

しかし、学ぶべき内容を間違えてしまうと、勤め先の業績改善に寄与する力を持つことはできない。

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特に、研修会の開催が目的化している医療機関や介護事業所は要注意である。

研修会は手段であり、目的ではない。

良好なリハビリテーションのアウトカム達成が目的であり、研修会はその手段の一つである。

セラピスト自身の興味だけで行う研修やなんの意図もない研修会は、開催しないほうがマシである。

ましてや、勤め先から給与が発生している業務時間中に開催されている研修会は、医療機関や介護事業所の発展に寄与する内容でなければ、道義的に大きな問題である。

みなさんの職場には意味のない研修会はないだろうか?

 

自分の私利私欲を、従業員に強要する経営者にろくな人間はいない

レベルの低い経営者は本音を言いません。

レベルの低い経営者は「儲けろ・売上を上げろ・病床稼働率を上げろ・利用者を増やせ」と言う本音を、医療機関・介護事業所の「理念」「使命感」「志」という言葉で包み隠して、従業員に伝えてきます。

もっとレベルの低い経営者は、「儲けろ」という本音が包み隠さず出てしまいます。

これはもう、悲惨なレベルの経営者です。

こういった人間は、「自分の私利私欲を満たすために、他人をこき使う」という意図を持っています。

いわゆる、ろくでもない人間です。

なぜならば、従業員は「収益性」「売上」「理念」「使命感」「志」だけでなく、職場の人間関係、やりがい、面白さ、成長できる見込み、評価の仕組み、風通しの良さを働くうえで重視するからです。

そういった要素を全く無視して、「私の私利私欲を満たせ」という要求を強要する人間は、経営者としての資質はゼロです。

人は生まれた時から、自由です。

よって、他人の人生や夢のわき役、奴隷になる必要はありません。

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人生は有限です。

他人の人生に振り回されている時間はありません。

人生の主人公は自分自身です。

経営者は、そういった人間心理を理解したうえで、理念や夢を語り、職場の風土改善を行わなければなりません。

そして、従業員はろくな人間ではない経営者を、ちゃんと見極める必要があります。

 

三流リハビリ部門・看護部門・介護部門によくある人事と切り離された教育は戯言である

教育と人事のプロセスは一つのことを成し遂げるために、存在している。

それは、「法人の理念を実行できる人材を輩出する」ことである。

教育というのは、様々な分野に関しての知識と経験を教授し、一人の専門職として医療や介護の現場で、理念に沿って自立して行動できるように働きかけるものである。

教育は、医療・介護事業において最も重要な資源である人材をより有効な資源に変化させるための最強のツールである。

しかし、その最強のツールが最弱のツールに変化することがある。

それは、教育と人事が切り離されている場合で生じる。

人事は、企業や組織における採用活動、昇進、出向、人事制度運用、報酬・福利厚生、労務を行う業務である。

採用は、理念や組織の方針に共感した人材を採用する最大のチャンスである。

採用機能が弱い事業所では、理念や方針に共感していない人が沢山入社している。

理念や方針に共感していない人をいくら濃厚に教育したところで、法人の理念を実行する人材にはならない。

どんな人でも採用してから、教育すれば何とかなるではないの?と多くの方から声が聞こえてくるが、それは戯言である。

お金儲けが目的の事業所
離職率が高い事業所
理念の本質が理解できない経営者が運営している事業所

このような事業所では、採用機能が脆弱になっており、組織の理念も方針が完全に形骸化し、理念に適合しないどうしようもない人材が多く事業所内で働いていることが多い。

昇進は、理念を実現するために適材適所に有能な人材を配置することである。

しかし、昇進をくだらない判断で行っている事業所も多い。

前任者が辞めたから、この人を昇進させよう
数字責任を負わせたいから、役職者を設けよう
指示命令系統を明確にしたいので誰でもよいから役職者にしよう

このような事業所では、管理職は使い捨てであり、会社の歯車としてだけ動くことが要求される。

三流組織

世の中の三流医療・介護事業所では、人事と教育は切り離されて運用されている。

どれだけ教育を充実させても、人事機能が乏しければ教育の効果は表れない。

しかし、人事と教育が切り離されている三流医療・介護事業所は、人が育たないのは現場の教育が悪いからだと現場に責任を問う。

人事と教育は、統合されたものでなければならない。

一体的な採用・教育・昇進の取り組みが機能する医療・介護事業所は、二流、一流の組織になることができる。

ぜひ、リハビリテーション部門、看護部門、介護部門は教育だけでなく、どうか採用と昇進に関する人事権も掌握していただきたい。

採用と昇進の人事権を移譲してくれない法人や会社であるならば、もう、それ以上の発展はなく、永遠に三流の医療・介護事業所になることを覚悟しなければならない。

そもそも、通所リハビリテーションは理学療法・作業療法を提供する施設であると定義づけられている

2015年度介護報酬改定では、通所リハビリテーションにおける心身機能・活動・参加のアプローチが注目された。

また、2016年度診療報酬改定では、要介護保険被保険者の維持期リハビリテーションの通所リハビリテーションへの強い誘導策が導入された。

2018年度診療報酬・介護報酬のダブル改定では、通所リハビリテーションと通所介護の役割や機能が明確化され、通所リハビリテーションの在り方は大きく変化が求められる。

しかし、介護保険法により「通所リハビリテーション」とは、居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、介護老人保健施設、病院、診療所その他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、当該施設において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うこと、と定められている。

通所リハビリテーションは、理学療法、作業療法を提供する施設であると明確に定義されているのである。

理学療法は基本的動作能力の改善
作業療法は応用的動作能力の改善
を医学的・科学的に行うものである。

よって、介護保険法により、通所リハビリテーションは、基本的動作能力や応用的動作能力を医学的・科学的に改善する施設であると定義されていると言える。

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しかし、実際の通所リハビリテーションでは
1)セラピストの数が足りず十分な個別リハビリテーションが提供できない
2)動作分析に基づかない運動療法が漫然と繰り返されている
3)アルバイトのセラピストを中心に個別リハビリテーションや自主トレーニングの指導を行っているため、施設としての理念や方向性を共有できない
4)通所リハビリテーションを副業的な立ち位置で経営している医療機関が多く、打算的な経営をしている
などの問題が横行している。

よって、介護保険法が定義する通所リハビリテーションの姿には到底なっていない。

通所リハビリテーションは、今後、急増していく要介護被保険者に対する本格的なリハビリテーション施設としての役割が期待される。

したがって、今後の通所リハビリテーションでは、介護保険法の定義に原点回帰が必要であり、基本動作が診れる理学療法士、応用的動作が診れる作業療法士が活躍が重要である。

なんとなく、活動を促す
なんとなく、参加を促す
のではなく
機能をあげて活動と参加を改善させる
活動と参加を通じて機能を改善させる

こんな視点をもつ理学療法士・作業療法士がいる通所リハビリテーションは国が求める心身機能・活動・参加にバランスよく働きかけることができる施設になるだろう。

マニュアル本に記載さている知識を軽視しているセラピストは療法もどきしか展開できない

臨床において最も重要な能力は「想像力」である。

なぜ、こんな現象が起きているのだろうか?
このような事をしたら、どうなるのだろうか?
この現象の原因はここではないだろうか?

常に仮説を立てて、その仮説が正しいかどうかの検証を繰り返す能力が臨床では求められる。

そして、「想像力」の源泉は、「基礎的な能力」である。

さらに、基礎的な能力は 「知識」×「経験」 により開発される。

言い換えれば、いくら経験があっても知識がなければ基礎的な能力は開発されない。

教科書や参考書に記載されている知識というのは、全くの素人を短時間で一定レベルの専門家にする代物である。

知識というのは、知っているか、知っていないかという両極端な性質を持つ。

したがって、知識がなければ、いくら想像したところで仮説は生まれてこない。

その知識を臨床の中で試行錯誤しながら用いることで、様々な仮説検証を展開できる。

よって、いくら経験があっても、知識がなければ仮説検証ができず、「理学療法もどき」「作業療法もどき」「言語聴覚療法もどき」しか展開できないことになる。

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今の時代、マニュアル教育が軽視されている。

マニュアルを知っていても、実践では使えないと平気で言う管理職さえもいる。

しかし、マニュアルに書かれていることさえも理解できずにどうやって臨床を展開できるだろうか?

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって、解剖学、病理学、運動学、生理学などのテキストは重要なマニュアルである。

マニュアルさえも理解できずに、難しい手技や理論を他者から教授されても全く持って理解できない。

むしろ、多くの患者はマニュアルに書かれていることだけで多くのことが解決できる。

エビデンスに基づく医療が叫ばれて久しいが、エビデンスとは最新の理論や論文に記載されていることだけではない。

すでに証明されて、教科書やマニュアルに載っていることを使いこなすこともエビデンスに基づく医療である。

マニュアルを軽視しては、いけない。