なんちゃって医療・介護事業所は本気で淘汰される

地域医療構想が2015年度より本格的に検討される。

地域医療構想とは地域ごとの医療需要に的確に応えるため、病院や有床診療所に対して病床機能の現状(高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4区分)を都道府県に報告させ、その後に報告された医療機能が満たされているかどうかを判断し、医療機能が満たされていない場合は、病床の変更や返上を国より命ずる制度である。

公的病院は都道府県知事の命令により強制的にこの指示に従わなければならない。

都道府県知事の命令により民間病院が病床の変更や返上に応じなかった場合は、医療機関名が公表されるというペナルティーが課せられる。

現在、厚労省では各医療機能の医療資源に費やした費用の標準化を図っており、標準化された費用に満たない医療機関は「各下げ」を命令されるスキームが検討されている。

介護報酬改定でも、通所リハビリテーション、小規模デイサービス、特別養護老人ホームの淘汰が本格的に始まった。

2015年度介護報酬改定では、基本報酬を下げ、加算部分で評価するという手法が全面的に導入された。

今まで、地域連携、重症利用者、リハビリテーションに対して質の低いサービスで対応していた事業所は、一気に経営が悪化する状況となった。

診療所や訪問看護ステーションも安心できない。

地域包括診療料や機能強化型訪問看護ステーションなど明らかに専門職スタッフの人員増を促進する施策が導入されている。

国はやる気のない「なんちゃって急性期」「なんちゃって回復期」「なんちゃってリハビリ特化型通所介護」「なんちゃって通所リハビリテーション」を本気で潰そうとしている。

このことに気づいてない経営者は経営者としての資質はないし、危機感を感じていない医師、看護師、セラピスト、介護士等も明るい未来はない。

自分が勤めているところが「なんちゃって・・・」ではないか、今一度、確認をして欲しい。

2015年 介護報酬改定 リハビリテーションマネジメント加算Ⅱとリハビリテーション会議という厚労省のトラップに気づいているか?

2015年介護報酬改訂にて「リハビリテーション会議」という言葉が出現した。

この会議は、通所リハビリテーションやリハビリテーション事業所における加算項目であるリハビリテーションマネジメント加算Ⅱの要件として設置が求められているものである。

リハビリテーションマネジメント加算Ⅱの説明文は次のとおりである。

(1)リハビリテーション会議を開催し、利用者の状況等に関する情報を、会議の構成員である医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、居宅介護支援専門員、居宅サービス計画に位置づけられた指定居宅サービス等の担当者、その他関係者と共有し、当該リハビリテーション会議の内容を記載すること。

(2)通所リハビリテーション計画について、医師が利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得ること。

従来から行われていた情報交換を主体としたミーティングやサービス担当者会議ではなく、リハビリテーションに特化した会議を、医師を含めた専門職にて開催することが求められている。

また、項目の(4)には以下のように記載されている。

(4) 指定通所リハビリテーション事業所の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、介護支援専門員に対し、利用者の有する能力、自立のために必要な支援方法及び日常生活上の留意点に関する情報提供を行うこと

つまり、リハビリテーションマネジメント加算Ⅱは、自立支援に向けた取り組みを本格的に行うために、医師を含めた専門職による会議を行うことが求められていると解釈できる。

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今回の介護報酬改定でこのような加算要件が設定されたことは、厚労省より「今までは、自立支援に向けて医師を含めた専門職の取り組みは不十分でしたよね?」とダメ出しをされたに等しい意味を持つ。

現在、著者のところにリハビリテーションマネジメント加算Ⅱとリハビリテーション会議の運営方法に関して多くの相談がきている。

その内容は「医師が協力してくれない」「医師は会議に出るが、リハビリテーションなんかわからないと言っている」「理学療法士や作業療法士が他職種に助言することが苦手」「自立支援に向けたシステムが整ってない」などである。

これこそまさに、厚生労働省が望んだ「カオス」である。

この「カオス」から、抜け出した事業所が真の生活期リハビリテーションを行う資格を与えられる。

通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの目的が、「利益のみ」であったところは、今回の介護報酬改定で間違いなく内部崩壊を起こす。

「自立支援と利益」を追求していた健全な事業所は、2015年度介護報酬改定は追い風となる。

2018年の介護報酬改定では、リハビリテーションマネジメント加算Ⅱは包括化される噂もある。

そうなると多くの通所リハビリテーションは存在意義を失い、収益も低下するだろう。

診療報酬改定や介護報酬改定は、制度変更を通じて、「人の働き方」「組織のあり方」の変化、つまり、働き方の変化、つまり、ワークシフトを求めている。

今まさに、ワークシフトの概念で組織をマネジメントすることが必要な時代になったと言える。

2015年度 介護報酬改定 通所系サービスのフルモデルチェンジ

2015年度介護報酬改定における目玉項目として通所リハビリテーションにおける「生活行為向上リハビリテーション実施加算」と「社会参加支援加算」が挙げられる。

生活行為向上リハビリテーション実施加算
1.利用開始日から起算して3月以内の期間に行われた場合 2,000単位/月
2.利用開始日から起算して3月超6月以内の期間に行われた場合 1,000単位/月

算定要件
1.指定通所リハビリテーション事業所が、生活行為の内容の充実を図るための目標及び当該目標を踏まえたリハビリテーションの実施内容等をリハビリテーション実施計画にあらかじめ定めて、利用者に対してリハビリテーションを計画的に行い、指定通所リハビリテーションの利用者の有する能力の向上を支援した場合には加算する。

次に揚げる基準のいずれにも適合すること。
(1)生活行為の内容の充実を図るための専門的な知識若しくは経験を有する作業療法士又は生活行為の内容の充実を図るための研修を修了した理学療法士若しくは言語聴覚士が配置されていること。
(2)生活行為の内容の充実を図るための目標及び当該目標を踏まえたリハビリテーションの実施頻度、実施場所及び実施時間等が記載されたリハビリテーション実施計画をあらかじめ定めて、リハビリテーションを提供すること。
(3)当該計画で定めた指定通所介護リハビリテーションの実施期間中に指定通所リハビリテーションの提供を終了した日前1月以内に、リハビリテーション会議を開催し、リハビリテーションの目標の達成状況及び実施結果を報告すること。
(4)通所リハビリテーション費におけるリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)を算定していること。
ただし、短期集中個別リハビリテーション実施加算又は認知症短期集中リハビリテーション実施加算を算定している場合は、算定しない。

1.生活行為向上リハビリテーション実施加算の実施後に継続利用する場合の減算
生活行為向上リハビリテーション実施加算の実施後の翌月から6月間に限り1日につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数から減算する。

社会参加支援加算
社会参加を維持できるサービス等へ移行する体制の評価
社会参加支援加算(新規) 12単位/日

算定要件
指定通所リハビリテーション事業所において、評価対象期間の満了日に属する年度の次の年度内に限り1日につき12単位を所定の単位数に加算する。
次に揚げる基準のいずれにも適合すること。
(1)評価対象期間において指定通所リハビリテーションの提供を終了した者(生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定した者を除く。)のうち、指定通所介護、指定認知症対応型通所介護、通所事業その他社会参加に資する取組を実施した者の占める割合が100分の5を超えていること。

(2)評価対象期間中に指定通所リハビリテーションの提供を終了した日から起算して14日以降44日以内に、指定通所リハビリテーション事業所の従業者が、通所リハビリテーションの提供を終了した者に対して、その居宅を訪問すること又は介護支援専門員から居宅サービス計画に関する情報提供を受けることにより、指定通所介護、指定認知症対応型通所介護、通所事業その他社会参加に資する取組の実施状況が、居宅訪問等をした日から起算して、3月以上継続する見込みであることを確認し、記録していること。

○ 12月を当該指定通所リハビリテーション事業所の利用者の平均利用月数で除して得た数が100分の25以上であること。

この二つの加算の意味するところは何か?
生活行為向上リハビリテーション実施加算は「生活行為を向上させた上で通所リハビリテーションの利用を終了することが目的」である。

よって当該加算終了においても、通所リハビリテーションを利用している場合は、6ヶ月間に渡り、15%の減算となる。

また、社会参加支援加算の要件に「指定通所リハビリテーションの提供を終了した者(生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定した者を除く。)のうち、指定通所介護やその他社会参加に資する取組を実施した者の占める割合が100分の5を超えていること。」と記載されている。

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この二つの加算の意味を考えると以下のように考えられる。

1.通所リハビリテーションは生活期リハビリテーションにおいては、通過型のリハビリテーションインフラであると定義している

2.通所リハビリテーション終了後は、通所介護や地域の支援事業等を利用する

3.通所介護が社会参加インフラとしての位置づけが明確になった

通所リハビリテーションは医療モデルリハビリテーションとICFモデルリハビリテーションモデル/通所介護は完全ICFリハビリテーションモデルの様相を呈してきた

まるで、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟のような棲み分けのようである。

通所リハビリテーションは医療モデルの要素を取り入れながらも、社会参加に資する生活を念頭にリハビリテーションを展開する

通所介護はその社会参加を継続的に支援する

こういった取り組みは、新しい介護保険における新しいリハビリテーションモデルとして推進されていく。

この社会参加に関しては、まだまだ定義も曖昧であり、実例も少ない。

社会参加のインフラもサービスも不十分な領域である。

今後、通所リハビリテーションと通所介護は最大級に注目される分野に変革したと言える。

2015年 介護報酬改定 要介護度3の意味

2015年介護報酬改定において、特別養護老人ホームへの入所者は介護の必要性の高い「要介護3」以上に限定された。

厳格化の対象は新規の入所者になるため、現在、入所している要介護1~2の方は入所の継続は可能である。

幾分の除外条件(精神病や認知症等)はあるものの、特別養護老人ホームは、原則要介護3以上の方が入所する施設になった。

また、通所介護にて、中重度者ケア体制加算(45単位/日)が新設された。

算定条件は看護職員1名以上の配置で、要介護3以上の利用者の占める割合が100分の30以上である。

これらのことから、介護保険領域における重症者は要介護3以上であると定義されたと言える。

すなわち、軽症者と重症者の分水嶺は要介護2と要介護3の間に存在すると言える。

要介護2と要介護3の状況の違いは次の通りとなる。

要介護2
中程度の介護が必要な状態 一人で立ち上がったり歩けないことが多い。
排泄や入浴などに一部または全介助が必要。

要介護3
重度な介護が必要な状態 一人で立ち上がったり歩いたりできない。
排泄や入浴、着替えなどに全介助が必要。

立ち上がり、歩行ができるか、否か?
排泄や入浴ができるか、否か?

この間でリハビリテーションやケアの方針は大きく変わることは、医療介護従事者なら想像がつくだろう。

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2014年度診療報酬改定にて、地域包括ケア病棟が新設され、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟の役割の違いが明示された。

国からは明確に明示されていないが、筆者は前者は医療モデルリハビリテーション、後者はICFモデルリハビリテーションの推進が意図されていると考えている。

今回の介護報酬改定でも要介護2と3の間で、リハビリテーションのあり方に関して、モデルチェンジが必要な状況になったと考える。

要介護2以下は、歩行獲得等のADL動作獲得に加え、社会参加を促し、要介護3以上はADL動作の獲得にも配慮しながらも、摂食嚥下機能、精神機能、感染予防等のリハビリテーションの関わりを通じてQOLの向上が求められた言える。

当然、プロのセラピストとして、ADLやIADLの獲得や維持には全力で関わらなければならない。

しかし、要介護2と3では異なった視点から、より統合的なリハビリテーションを提供しなければならない。

医療・介護情勢は選択と集中の政策が加速している。

事業者やセラピスト、看護師、介護士も自らの仕事のフィールドを明確にして選択と集中を行っていかなければならない。

今回の介護報酬改定には、今後の未来のヒントが多く隠されている。

診療・介護報酬改定前後だけ、盛り上がる経営者はあきまへん!

2015年介護報酬改定がいよいよ行われる。

年明けから多くの情報が一気に公開され、いよいよ改定に熱を帯びてきた。

この時期になると診療報酬や介護報酬改定前後だけ熱くなる経営者や管理職がいる。

次々と出てくる改定情報に一喜一憂し、不安になり、管理職との面談が急に増える。

管理職の方はこの時期に経営者に呼び出されることが増えているのではないだろうか?

しかし、普段、コミュニケーションを取っていないものだから、経営者から急に熱い話をされても、理解が難しい。

常日頃、経営者と管理職が意思疎通をとっていれば、共通の課題を背景にして、協議ができるが、急に熱く話をされても、逆に冷めるだけである。

そもそも、診療・介護報酬改定の準備は、改定年の4月に行うものではない。

常日頃から、2年後、3年後の改訂を見越して、組織のダーバーシティーを高めておくことが重要である。

日頃から、愚直に経営や現場の運営に力を入れることが、診療・介護報酬改定を乗り切る基本である。

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医療・介護報酬改定前後だけ、急に話し合いの数が増えるのはマネジメントレベルが低いとしか言わざる得ない。

ドラッガーは「既に起こっている未来」を探すことが重要であると述べている。

未来は既に起こっている。

今の現実をしっかりと見定めることで、未来は見えてくる。

改定前だけ騒ぐレベルでは、今後の地域包括ケアシステムは乗り切れない