在宅医療・介護事業におけるリーダーシップやマネジメントは病院や診療所よりはるかに難しい

日本の医療・介護分野の在宅シフトは待ったなしである。病床削減、在宅復帰要件の導入、地域包括ケアシステムの推進、訪問看護ステーションや看護小規模多機能型居宅介護などの在宅インフラの整備は急進的に進んでいる。
一方で、順調に進んでいないものがある。
それは、在宅医療や介護を営む事業所のリーダーシップやマネジメントのレベルアップである。

在宅医療や介護は、外部との連携によりサービスが展開されることが多い。したがって、病院や診療所より、ステークホルダーが多い事業である。そのため、多くのステークホルダーとの利害関係の調整が必要であるため、ハイレベルなリーダーシップやマネジメントが求められる。

また、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、薬剤師、管理栄養士などは、病院や施設で働くことを前提とした教育カリキュラムを受けており、現在の労働者の中で在宅の実習などを経験している人は少数派である。

日本は欧米と異なり、医療機関に勤める医師、看護師、セラピストが多く、在宅分野が医療関係者のキャリアデザインの選択肢にすら入っていない状況が未だに続いている。

そして、在宅医療や介護保険ビジネスは比較的、利益率が高いことに加え、病院や診療所を経営するより、参入障壁が低いことから、理念と利益のバランスを求めない利益至上主義の民間事業者や医療関係者が多く参入しているのが実情である。

在宅医療や介護は
1)利害関係者が多い事業形態
2)従業員のキャリアデザインとして在宅分野が確立されていない
3)理念を無視した利益追求型の経営母体が多い
これらのことから、在宅医療や介護事業所の運営は一筋縄ではいかない。

そのため、国は近年の診療報酬改定や介護報酬改定で、在宅医療や介護の分野に「マネジメント」の概念を導入し、マネジメントの成否が事業所の収入に直結する仕組みを推進している。

通所・訪問リハビリにおける「リハビリテーションマネジメント加算」「リハビリテーション会議」
通所リハビリにおける「生活行為向上リハビリテーション実施加算」「社会参加支援加算」
通所介護における「3ヶ月に一回の在宅訪問」や「個別機能訓練加算Ⅱ」
訪問介護における「生活機能向上連携加算」
訪問看護における「退院時共同指導加算」
これらはすべて、事業所の前方連携・後方連携・水平連携を求めるものであり、リーダーシップやマネジメント能力がなくては、円滑に行うことが困難である。

しかし、発想を変えれば、リーダーシップやマネジメント機能を発揮することができれば、在宅医療や介護事業では、他の事業所より圧倒的な競争優位性を得られる時代になったと言える。

 

 

診療・介護報酬改定から数ヶ月経つと現場の盛り上がりは急激に低下する 

2015年4月に介護報酬改定が行われ、3月、4月、5月において、多くの介護事業所では、様々な議論が社内で行われたのではないだろうか。

特に、介護報酬改定は直接的に収益に影響するため、経営者、院長、事務長、部長クラスは多いに盛り上がり、様々な指示・命令を現場に下したのではないだろうか?

それを受けて、現場も多くの業務変更や書類変更に追われ、新しい加算取得や体制の構築に向けて一生懸命に取り組んでいるのではないだろうか?

しかし、どの事業所でも6月ぐらいから、社内の雰囲気がおかしくなる
当初は、一緒に取り組んでくれていた事務長や上司が「すーーーっと」と業務から消えていく
「権限委譲」「考えられる現場」などのスローガンを振りかざし、業務から遠ざかっていく

6月ぐらいになると実務的な対応が多くなり、現場の業務体制やプロセス作りが忙しくなる
そんな時こそ、現場はともに、悩み、考えてくれる上司を求めている
しかし、実務的なことになると非協力的な経営者や上司は多い

そして、秋ぐらいになると、「○○加算はとれているのか?」と突然、質問をしてくる
その加算が取得できていなければ、「ばかもん!なぜもっと早く相談をしてくれないのか!!」と叱責される。

経営環境が激変する時、経営者や上司は焦り出し急に様々な行動を行う
しかし、環境変化に対して自分が適応できないと悟った時、それを他人に丸投げして、推移を見守る

みなさんの事業所はどうだろうか?
そして、自分自身はどうだろうか?
他人に丸投げしているなら、いち早く、従業員に声をかけて、「出来ることはないか?」と従業員に寄り添っていただきたい

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人材育成に失敗すると「なんちゃって専門特化医療機関・介護事業所」と呼ばれてしまう

医療・介護事業における最大の経営資源は、現場で働く職員である
現場で働く職員の生産性やサービスの質の高さが直結して、経営に影響する

診療・介護報酬改定により医療・介護事業は機能分化が誘導されており、今日においては
医療・介護事業所が担う地域における役割は明確になりつつある

高度急性期では、脳卒中や循環器に特化している病院が増えており
また、在宅医療においてもリハビリテーションや看取りに特化している診療所や訪問看護ステーションも増加している
つまり、同じ病期や時期であっても対象とする顧客を選択している事業所が増加している

専門特化は、マーケティングや事業戦略において必要不可欠であり、適正な事業ポジショニングは今日の医療・介護事業経営では重要である。

しかし、多くの医療・介護事業所は自らが選択した専門領域における人材育成に苦戦している

経営者や運営者はマーケティングの結果、特定領域での事業を決断し、その事業を断行しようとするが、社内的な人材資源が不足しているために事業計画が頓挫するケースが多い

訪問看護ステーションがリハビリテーションに特化する場合でも、理学療法士や作業療法士を単に採用すれば良いという問題ではない

どのようなリハビリテーションに特化するのかという事業領域の定義は明確でなければ、採用も人材育成も曖昧になってしまう

終末期リハビリテーション、脳卒中リハビリテーション、摂食嚥下リハビリテーション・・・・など、どの領域に力を入れていくかによって大きく人材育成戦略は異なる

また、残念ながら多くの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師は自分の技術と経営の融合や最適化など考えていない

しかし、雇われている以上、その組織が求める技術を最優先で高めていくことは従業員の責務である

例えば、整形外科クリニックのリハビリテーション科で上位から3つのリハビリテーションの処方箋が出る疾患は、肩関節周囲炎、腰痛症、変形性膝関節症である
もし、その整形外科クリニックに勤務するセラピストが脳卒中や足関節疾患などの技術を高めていたとすれば、それは院長や事務長から指導されるべきことである

リハビリテーション技術などの医療・介護技術をどのように経営や運営に活かしていくのか?という視点を持たない医療・介護職は市場では重宝されない

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診療所(クリニック)の根深い問題

診療所の存続が危うい
近年、診療所の数は9000から9500の間で増減を繰り返しており
市場開拓における頭打ちの状態になっている

現在、診療所は様々な問題を抱えている
もっとも、深刻なのは承継問題である
現在の診療所の院長は、団塊の世代であり2025年に後期高齢者になる人が多い
朝から晩の外来だけでなく、緊急の往診、経営的な活動が年齢的に難しくなる
また、診療所を取り巻く経営環境も10年前と比較すると、劇的に変わっており
環境変化に対する対応には相当な労力が必要とされる

このような状況においては、診療所の存続は容易ではない
息子、娘、親戚縁者に継がせるにせよ、血縁関係のない第三者に継がせるにせよ
経営的な問題が付随してくる
経営に対して積極的な姿勢を持つ医師でなければ、後継者にはなりえない

そのような経営に
積極的な後継者を確保できない場合は
廃業をしなければならない
診療所はそもそも最小限の人数で運営をしている所が多いため
院長先生の引退は即、閉院につながりやすい側面がある

診療所は、訪問看護ステーションとならんで
地域包括ケアにおける中核の存在である
近年の診療報酬改定、介護報酬改定は
明らかに診療所のかかりつけ医師の機能を強化している

しかし、先述したように、承継問題により
診療所の経営者である院長先生は
あと10年で引退をする可能性が高い

よって、新しいことに取り組むことに対する
エネルギーが残されていない
このような状況では、2025年に向けて、
廃業を前提とした緊縮運営が行われやすい
そのことにより、
働く看護師、セラピスト、介護福祉士等のキャリアの発展は厳しい状態になる

将来にわたって永続に事業を継続する予定の診療所
近い将来に事業を停止する予定の診療所

あなたが勤務する診療所はどちらですか?

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理学療法士・作業療法士は歯科医師のワークシフトを学べ

近い将来、理学療法士・作業療法士は過剰供給になるのか?ならないのか?
そういった議論が、業界内で渦巻いている
現状のペースで新規資格取得者が増加すれば、2025年には理学療法士、作業療法士が30万人近くになる可能性もある。

劇的な経済発展が望めないことや社会保障費の圧縮などにより、医療・介護分野へのお金の流れは低調になる。また、理学療法士や作業療法士の有資格者も増加し、人件費の自然増もさけられない。
したがって、理学療法士や作業療法士の給料が今後、劇的に増加していく見込みはない。
年3,000円の昇給をしたとしても、10年間で月30,000円の増加である。

今後は国や外部環境に強く依存しない「働き方」が必要とされる時代になったと言える。
「働き方」を考える上で、必要な軸としては「個のブランディング」である。
すなわち、個人としての実力を磨き、世の中から信頼を得ることである。

このような「働き方」が、顕在化している医療職が既に存在している。それは、歯科医師である。

現在、歯科診療所はコンビニエンスストアの数より多い。
歯科医師の数も近年では、10万人を超えており、過当競争となっている。
そのような環境では、自ずと市場原理が作用し、歯科医師の個の力の差が顕在化する。

現在、歯科医師でワークシフトをしている事例には以下のものがある。

・往診専門に特化する
・摂食嚥下リハビリテーションを行う
・STを採用し、訪問リハビリテーションを行う
・審美歯科を行う
・介護事業所やサービス付き高齢者向け住宅を運営する
・他院と連携して、術後感染予防のために、術前患者への治療を行う
などである。

外来で、ひたすら治療するという「働き方」から、脱却している歯科医師が自分の専門性を新しい市場で提供している。他の歯科医院とは差別化することで、業界や地域で新しいポジショニングを得ているのだ。

では、理学療法士や作業療法士はワークシフトを行うことが可能なのか?
確かに、理学療法士や作業療法士には開業権がないので、開業という視点ではワークシフトは困難である。
しかし、理学療法士や作業療法士の専門性を活かせる市場は山とある。
社内を見渡しても、リハビリテーションの教育や他職種との連携、新しいリハビリテーション技術の開発やその治験、介護士や看護師への教育やカンファレンスのファシリテーター・・・・など多くの活躍できる分野があるのではないか?
社外においては、在宅生活を支えるサービスや異業種へのアドバイス、物販やインターネットを活用したサービスなど・・・・非常に多くの可能性を秘めている。

資格という国家が与えてくれたパワーで働くのではなく、その資格の専門性を活かして社内外に貢献できる新たな分野で個の力を発揮していく。
これが、今後、理学療法士や作業療法士に求められるものではないか。

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