リハビリテーション潜在市場

現在、介護保険サービスを利用していない高齢者は高齢者の中でも圧倒的多数を占める。

介護保険制度の仕組みを知らない人や介護保険に対する誤解がある人が多く、身体機能や社会参加が低下していても、要介護認定を申請しない人も多い。

2025年に向けて後期高齢者が爆発的に増加していく過程では、医療保険、介護保険を利用する前の健康的な時期をいかに長くするか?すなわち、健康寿命延伸への取り組みがが重要である。

現在の日本では、病気や介護が必要な状況になれば、医師、看護師、ケアマネージャーなどの支援により、医療・介護サービスを受けるシステムは完全に構築されている。

しかし、徐々に身体機能や社会参加が低下していく時期に対して、具体的な介入を行うサービスは乏しい。

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自発的に健康に留意している高齢者なら、地域の社会活動、フィットネスクラブ、老人クラブなどにも通う。

しかし、健康に対する意識が低い高齢者は、廃用症候群やフレイルの発症を無防備に待っているのが実情である。

2014年度の介護報酬改定にて介護保険から要支援者が外されることが決定しており、2017年度までには地域支援事業として地方公共団体が要支援者へ介護予防サービスを行うことになる。

しかし、要支援認定を受けていない高齢者への政府の対策はあまり見えてこない。

2025年以降、今後も要支援認定を受けていない虚弱老人は、確実に増加していく。

今後、要支援者への介護予防サービス、要支援認定を受けていない人への健康増進が大きな市場になるのは確実である。

理学療法・作業療法・言語聴覚療法の知見は、健康増進に大きく活用できるし、他の分野と組むことでさらにその強みを増す。

転倒予防、認知症予防、活動参加支援、就労支援、栄養改善などの身体機能に関するコンサルテーションなどは異業種と組むもできる分野である。

また、産学官連携を強化すれば、リハビリテーションのエビデンス作りも、加速するだろう。

リハビリテーション潜在市場は希望に満ち溢れていると言える。

「人」なぜ働くのだろうか?

人は何のために働くのか?

医療・介護従事者は専門職である前に、「人」である。

「人」がなぜ働くか?という原理原則を理解することは、人材や組織のマネジメントを行う上で極めて重要である。

今回は「人」が働く理由を考える上で重要な概念である「キャリア・アンカー」を紹介したい。

これはアメリカの心理学者エドガー・シャインによって提唱 された概念である。

キャリア・アンカー
職業、職種、勤務先などを選択する際に判断基準となるものであらゆる人が持っている。

アンカーとは日本語で「碇」を意味し、船を固定させるものである。

言い換えると、自分の人生の中で「優先度が高いもの」「譲れないもの」を示す。

どのような仕事に就こうとも「キャリア・アンカー」という自己概念が仕事の中で顕在化してくる。

キャリアアンカーには8つのものがある。

・専門
企画、販売、人事、エンジニアリングなど特定の分野で能力を発揮することに幸せを感じる

・経営管理
組織をマネジメントし、対人関係の調整や業績の拡大に魅力を感じる

・自立
自分のやり方で自由なスタイルで仕事をすることに魅力を感じる

・安定
労働条件などの福利厚生の安定を求める

・企業家的創造性
新しいものを創り出し、困難を乗り越えることに幸せを感じる

・社会への貢献
社会という公共なものへ貢献したいという気持ちが強い

・チャレンジ
大きなリスクや障害を乗り越え、不可能と思える事柄に挑戦することが楽しい

・全体性と調和
プライベートと仕事の調和を図ることが最も重要と考える

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これらの8つのいずれかのキャリア・アンカーを持つ人が組織内に存在している。

比較的多いのは「全体性と調和」のキャリア・アンカーである。

仕事とプライベート(家庭)が大切であるという現代の世相を示していると言えるだろう。

しかし、中には「企業家的創造性」や「専門」などのキャリア・アンカーを有する人もいる。

その場合、「企業家的創造性」の人には新規施設の開設や経営改善の仕事、「専門」の人には医療技術指導者や研修責任者が適性のある業務であると言える。

キャリア・アンカーの評価なくして組織マネジメントは難しい。

理学療法士だからこのような価値観を持ちなさい
作業療法士だからこんな風に働きなさい
看護師はこうあるべきだ
というアドバイスは、「キャリア・アンカー」を前提にしておらず、非常に乱暴なものである。

皆さんは部下や同僚のキャリア・アンカーを把握しているだろうか?

 

医療・介護事業における異業種参入の失敗率を高めるもの

医療・介護業界の再編、地域包括ケアによる地域の支え合い、介護保険事業の参入促進などの影響から、医療・介護事業に異業種が参入する事例が増加している。

居住系施設、訪問看護、訪問介護、デイサービスの経営母体が医療法人以外の民間企業であることはもはや珍しくなく、2025年に向けた高齢者市場の成長に合わせて民間企業の参入が著しい。

民間企業が医療・介護事業に参入することは、社会課題解決のためのイノベーションが生じる可能性と医療・介護事業への安易な参入によるコンプライアンス違反、経営不振、医療介護過誤が生じる可能性の両方を有している。

医療・介護事業は公的保険という一定のルールで行われること
医師、看護師、介護士、セラピストという専門職を雇用する
という特殊な業界である。

したがって、様々な規制や専門性が高い人を総合的にマネジメントをしていくマインドがなければ、民間企業参入しても成功する可能性は極めて低い。

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規制について勉強はもちろんのこと、専門性の高い人材への教育やコミュニケーションを欠かしてはならない。

多くの失敗事例に共通しているのは、「採用段階における企業理念のすり合わせ不足」である。

事業所開設を急ぐあまり、看護師、介護士、理学療法士などの採用を性急に進めてしまい、企業理念とは一致しない職員が入職した場合に最悪の事態を招くことが多い。

理念が一致してないことが起因で生じる言動は計り知れないほど経営や運営に悪影響を与える。

それがコンプライアンス違反や、経営不振につながる。

専門職と理念をすり合わせるコミュニケーションを怠らない異業種しか、医療介護事業では成功しないと断言してもよい。

急性期7:1病棟削減から読み取る医療・介護事業の本質

平成26年度診療報酬改定では7:1病床の削減を目的として、重症度・医療・看護必要度の厳格化、在宅復帰等患者割合の新設が行われた。

7:1病床は現在、35万床となっており、医療費を増加させる要因とされている。

今後、国は急性期医療を高度急性期と一般急性期に機能分化させたいと考え、高度急性期を、「総合入院体制加算1」の基準を満たす病院とイメージしている。

※総合入院体制加算1とは
1.一般病棟入院基本料を算定する病棟を有する保険医療機関であること
2.内科、精神科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科及び産科又は産婦人科を標榜し、当該診療科に係る入院医療を提供している保険医療機関であること
3.全身麻酔による手術件数が年800件以上であること
等が要件である。

では、一般急性期はどのような機能が今後は求められていくのだろうか?

一般急性期は高度急性期のように診療密度が高くはないが急性期の患者に診療を提供する病棟であると国は定めている。

すなわち、肺炎、骨折、内科系疾患等で軽度から中等度の重症の患者が入院する病棟である。

そのような疾患の患者は、2030年まで増加していく。

このような状況で病棟を削減していく国の考えには矛盾している点がある。

それは今後推進される在院日数短縮と病床削減の目的と7:1病床削減の目的が二律背反することである。

在院日数が短縮し、病床が削減されれば、相当数の患者が毎日入院してくる。

そうなると看護師の現場対応はより繁忙となりマンパワーが確保が重要となる。

すなわち在院日数が減らす以上、マンパワーとの確保が重要である。

国がこの点に気づいていないことはありえない。

知っていて言わないという可能性が高い。

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国はかならず、何か仕組みを作り、軽度から中等度の重症患者の対応が可能な社会システムをつくるはずである。

そこで考えられるのが「地域包括ケア病棟」、「地域包括診療料」、「訪問看護」の推進である。

これらの仕組みは慢性期機能でありながら、ある程度の急性的な医療的処置が可能である点である。

このようなフレキシブルな機能をより強化していくことで、急性期病棟に対する負荷を減らしていく可能性が高い。

しかし、最大の問題はそれらの機能の質の担保である。

回復期リハビリテーション病棟も当初かなり診療報酬上のインセンティブが導入され多くの医療機関が参入したが、その診療の質に対して国は懐疑的であり、毎回の診療報酬改定で厳しい要件が設定されている。

今後も「地域包括ケア病棟」、「地域包括診療料」、「訪問看護」の質の向上が求められていく。

医療・介護というのは公的保険で賄うサービスである以上、マーケットの拡大とサービの質の担保という相反することを成立させなければならない。

今後の医療・介護事業の成否は質の担保にあることを忘れてはならない。

 

 

 

 

「判断と決断は違う」というシンプルなことを理解できれば、仕事はおもしろい

「判断」はある物事について自分の考えをこうだときめること
「決断」はきっぱりときめること

判断をするが、その決断を他者に任せる、経営陣に任せる、あるいは決断を先延ばしにする。

こんな場面はよく散見するのではないだろうか?

連携がどうだ、看護部門がどうか、リハ部門がどうだ、オーナーがどうだ、現場がどうだ?と判断する。

しかし、「あなたはそれらの問題に関して何を決断するの?」と質問すると「え、決断するようなことは特にないです。今の状況に不満です。」と返答が返ってくる。

こういう人は
出世しないし
収入は上がらないし
会社の永遠的奴隷
の可能性が高い。

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筆者のコンサルティングの経験上、今の医療・介護現場は圧倒的に決断者が不足している。

特に、経営者、医師、部長、課長クラスの決断力不足が目立つ。

チーム医療・介護を勘違いしている。

連携を勘違いしている。

判断したことを話し合うのがチームワークではない。

決断に向けての意思決定のプロセスに参加するのがチーム医療・介護である。

意思決定プロセスである以上、決断をぶつけて議論をするべきである。

判断だけが得意なチームには何の価値もない。

決断だけが、物事動かす。

判断と決断を混同しているうちは、仕事は面白くない

決断すれば、目の前の景色は変わる。